かつての「タイプ2」をリアルタイムで知る方々の目に、このBEVの姿がどう映るのかは正直わからないが、間違いなくいえるのは、最先端のデザインとテクノロジーを融合した完成度の高いプロダクトだということ。リメイクやレトロスペクティブというなかれ、本当に受け継いでいるのはその精神のみ。素晴らしいぞ、VW!
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電気仕掛けで復活した往年のアイコン、可愛いだけじゃないんです!
世界各国のモーターショーで幾度となくコンセプトカーが姿を現し、その度に量産化が待ち望まれていたモデルがついに欧州デビューを飾った。その名もID.Buzz。オリジナルは、日本へも1950年代から輸入され、ドイツ本国では「ブリー」、ほかにも「タイプ2」や「バス」の愛称で親しまれてきた、フォルクスワーゲン(VW)の言わずと知れた往年のアイコンだ。タイプ1と呼ばれたビートルはフロントにエンジンを搭載して復活、すでに生産を終了したが、タイプ2は完全なBEV=電気自動車としてリバイバルされた。
ID.とは言うまでもなくVWのBEVシリーズの総称で、欧州仕様のID.Buzzは、12個のモジュールで分割された77kWh(総エネルギー容量は82kWh)のリチウム高電圧バッテリーを後席のフロア下に搭載。最高出力150kW(204ps)、最大トルク310Nmを発揮する電気モーターはリアアクスルに組み込まれていて、後輪を駆動するいわばRR。プラットフォームは、VWグループがBEV専用に開発した「MEB(モジュラー エレクトリックマトリックス)」が採用されている。
満充電した際の航続距離は、欧州のWLTPモードで425km。消費電力量は5人乗り・2列シートのMPV仕様で21.7-20.5kWh/100kmという。充電は車両後部の充電ポートを介して行ない、仮に0-100%まで11kWの普通充電器でチャージしたとすると、7時間30分で満充電になる計算だ。なお、急速充電は170kWの受電能力が備わっており、約30分で5-80%程度まで充電できるという。
環境性能の観点から見ると、BEVなので排出ガスはゼロ。そうなると、生産時に発生するCO2はどうなのかも気になる。ID.Buzzが生産されるドイツのハノーバー工場では、生産から納車されるまでの輸送で生じるCO2排出量を相殺しているという。また、世界トップレベルで持続可能なモデルとするため、素材に対するこだわりも随所に見受けられる。インテリアはトリム類にレザーを使用せず、非動物由来の素材を採用。ステアリングは、触れても違和感を覚えることがないクオリティで仕立てられているという。ちなみに、シートやルーフライナーなどに使われるリサイクル繊維の10%には、回収された海洋プラスチックを使用。残りの90%は、使用済みのペットボトルから再生されるという徹底ぶりだ。ID.Buzzはカーボンニュートラルに向けたモビリティとして、これからのVWブランドの在り方を示唆する一台といえるのだ。