斜め後方からの佇まいはモーリス・ミニ・トラベラー以外の何物でもない。本文でも述べられているように、サルーンに比べ少しずつ大きく重くなったボディに34psの848ccエンジンの組み合わせはいかにも頼りなく、それは38psの998ccになっても基本的には"必要最低限"のパワーだったろう。クーパー系のパワーを知ってしまったミニ・オーナーであれば、なおさら。逆に言えば、当時の人々は必要以上に欲張らず、自分にとって本当に必要なものの優先順位を、潔くつけていったのだろう。羊の革を被ったオオカミというよりは理性的だが、趣味人の理想を具現化した1台は実に魅力的なファスト・トラベラーなのである。
PHOTO:田中秀宣