Tipo

【Tipo】70’sグランドツーリングカーの夜明け。FWD最速を目指した究極のハイドロ・シトロエン『シトロエンSM』編

スパルタンでストイックなスポーツカーが主役だった1960年代が終わると、高性能でありながら長距離も快適に運転できる、グランドツーリングカーの時代がやってきた。その黎明期を飾った、対照的な2台を紹介。前回のBMW 3.0CSに引き続き、シトロエンSMをピックアップする。

前回BMW 3.0CS編はこちらから

最速FWD車を目指した気概

さてもう一台は、ハイドロ・シトロエンの究極とも言えるSMだ。

戦前から前輪駆動車を作り、DSでハイドロニューマチックを実用化したシトロエンが、その技術力を結集して開発したのがSMだった。目標とされたのは、FWDで時速200km/hを実現すること。そこでシトロエンは、イタリアのマセラティと提携し、エンジン開発を依頼。モデナの名門が用意したエンジンは、ボーラなどで使われた4.5L V8から2気筒を短縮したオールアルミ製V6DOHC 2.7Lだった。これを縦置きし、自製5速ミッションをその前に配置して前輪を駆動した。また、サスペンション、ブレーキ、パワーステアリングはハイドロニューマチック制御とされたが、このうちステアリングは、セルフセンタリング機能を持つ車速感応式だった。

【写真23枚】FWD最速を目指した究極のハイドロ・シトロエン「シトロエンSM」の詳細を写真で見る

全長×全幅が大きく、トレッドは前が広く後ろが狭い、独特のディメンションを持つボディは、極めて前衛的かつ空力的に優れたもので、デザインは社内のロベール・オプロンが担当した。

1970年にデビューしたSMは、当初エンジンがウェーバー3キャブレター付の170PSだったが、1972年に電子制御燃料噴射を採用し178PSに進化。更に北米向けの3L+3キャブレターで180PSも登場。3速ATも選べるようになった。

だが、1973年に起きたオイルショックの影響で、シトロエンはプジョーと合併することになり、マセラティとの提携は解消。1975年でSMの生産は終了したが、その生産台数は僅か1万3000台弱に過ぎなかった。

今回お借りしたSMは1972年6月生産の初期型で、V6DOHC 2670cc+3キャブレター・エンジンは170PSと23.5kg-mを発揮する。またヘッドライトは、ヨーロッパ仕様のカバー付角型6灯を装備していた。

シートはシトロエンとしては座面がかなり硬い革張りだが、座るときちんと腰を支えてくれる絶妙な設計。早速5速MTを操作して走り出す。ギアは3.0CSより節度感があるが、ブレーキは、DSと同様、ボール状のペダルを踏力でコントロールするタイプ。かなり癖があるもののすぐに慣れる。

エンジンは、さすがマセラティ製だけあって、軽く気持ちよく吹け上がる。トルクも低速からあり、1450kgという車重でも力不足は感じなかった。

足周りは、DSに比べれば締まっているが、それでもハイドロらしくソフトな動きで、乗り心地は快適そのもの。問題は低速で軽く、速度を上げると重くなり、更に中立に自動で戻ろうとするパワーステアリングだが、これも暫く運転していたら慣れてしまった。

このSMも長距離を気持ちよく走れるクルマであるのは間違いない。ではBMW3.0CSとの決定的な違いは何かと言えば、それはBMWの方が圧倒的に安心感があるということだ。SMは常にクルマの状態に気を配っている必要がある。だがどちらがクルマ好きの心をくすぐるかと言えば、それはやはりSMの方だろう。クルマがSで、ドライバーがM。そうなる覚悟がある人にこそ挑戦してもらいたい。

【Specifications】シトロエンSM
全長×全幅×全高:4913×1836×1324mm
ホイールベース:2950mm
トレッド(F/R):1526/1326mm
エンジン形式:V型6気筒DOHC+3キャブレター
総排気量:2670cc
最高出力:170PS/5500rpm
最大トルク:23.5kg-m/4000rpm
車両重量:1450㎏
サスペンション(F/R):ツイントレーリングアーム/トレーリングアーム
ブレーキ(F&R):ディスク
タイヤ(F&R):195/70R15

文:中島秀之 撮影:奥村純一 協力:WANNA DRIVE ティーポ366号より転載
Tipo編集部

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING