モデルカーズ

ふたりだけのクーペを自分ひとりだけのモデルカーに!レジンキットで味わう「フロンテクーペ」前編【モデルカーズ】

デザイン原案はジウジアーロ

軽自動車と言えば、今では大分立派なものになったとは言え、「肩身の狭いもの」といったイメージがどうしてもつきまとってきた。そんな軽自動車にも、誰もが「カッコイイ」と言うであろうモデルがかつてあった――スズキのフロンテクーペである。

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フロンテクーペは、ホンダZが開拓した、軽のスペシャリティカーという市場を狙ってデビューした。Zの登場は1970年10月のことだが、それに刺激されるように三菱からはミニカ・スキッパー、ダイハツからはフェローMAXといった車種が発売されており、1971年9月に送り出されたフロンテクーペは、そうした軽のクーペ/ハードトップとしては最後発のものとなる。

その名の通り、ベースとされたのは2ドア・セダンのフロンテである。前年・1970年秋にフロンテはモデルチェンジを行っており、フロンテ71と名乗った。この三代目フロンテ自体、“スティングレイ・ルック”と称するスポーティなスタイリングが特徴である。1971年5月には、エンジンを空冷から水冷に改めたフロンテ71Wというモデルが発売されており、フロンテクーペはこれを直接のベースとしている。

よく言われている通り、フロンテクーペのスタイリッシュなボディは、あのG.ジウジアーロのアイデアから発展したものだ。ただし、発売されたクーペがそのままジウジアーロのデザインを商品化したものであるわけではない。元のジウジアーロのデザインはあくまで2ドア・セダン、いわばシティ・コミューター的なものであった。これを背の低いクーペに改めたのは、スズキの社内デザイナーによる仕事だ。

ボディは2人乗りとして割り切られており、室内後半は荷物置き場となっている。「背の低い」とは印象としての意味ではなく、実際に全高は1200mmという驚くべき低さに抑えられていた。これによって重心も低くなり、よりシャープなハンドリングを実現。当時、完全な2シーターの国産車は数少なく、それゆえフロンテクーペも本格的なスポーツカーとして受け止められたのであった。

エンジンは、水冷2サイクル3気筒356ccに3連キャブレターを装着したLC10Wで、最高出力37psを発揮。このハイチューンユニットに4速MTを組み合わせ、最高速度は120km/hをマークした。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがセミトレーリングアーム。

登場当初のシリーズは、GE/GER/GXの3車種から構成されていた。GXは最高グレードで、室内温度計つきオーバーヘッドコンソールなどを装備する。他の2モデルがカラード・バンパーであるのに対し、GXはメッキ・バンパーとなるのも大きな違いだ。また、フロンテクーペにはロールバーやスポーツ・バケットシートなど、サーキット走行用のオプションパーツが多数用意されていたのも特徴である。

登場翌年の2月には、後席も設けて2+2の4人乗りとしたGXFを追加。同年3月には、エンジンがあまりにピーキーすぎるということで、34psにデチューンされたユニットを搭載するモデルも追加している。さらに6月には、31ps版のエンジンを積むGAFと、最高グレードのGXCF(前輪ディスクブレーキを装備)という、上下それぞれのモデルをラインナップに加えた。

ここからあとはバリエーションの縮小が始まり、1972年10月には、2シーターが廃止され2+2のみとなる。1974年には37psユニットが35psにデチューンされグレードも2種類のみとなり、1976年に生産中止されている。新たな軽自動車規格に合わせてエンジン、ボディともに拡大したセルボとして復活したのは1977年のこと、ボディスタイルにもそのイメージは残されていたものの、もはやその性格はスポーツカーではなかった。

初代セルボからの改造? それも大変だヨ……
そんなフロンテクーペであるが、ミニカーの題材として今なお人気であるものの、プラモデルとしてはまともな製品化は今までなされていない。後継車ともビッグマイナー版とも言うべきセルボは、1/20という大き目スケールながら、エルエスとイマイの2社からキット化されており、特にイマイのセルボは金型を引き継いだアオシマから現在(2023年9月)もリリースされている。このセルボからフロンテクーペへの改造を考えた人も、少なくないのではないだろうか?

ここでお見せしているのは、ガレージキットとしてリリースされた1/24スケールのフロンテクーペを、そのまま完成させた作品である。キットを手掛けたのは、スーパーカーを専門にするSMP24だが、このフロンテクーペを含む軽自動車の一群は、サブ・ブランド「さぶろく模型化計画二四」の名の下に送り出されている。キットは、高品質なレジン製主要パーツ、3D出力パーツに、エッチングを組みわせた非常に贅沢なものだ。このキットを作者・北澤氏がどのように仕上げたかは、前後編ともに、工程の写真と解説でお楽しみいただきたい。

作例制作=北澤志朗/フォト=服部佳洋 modelcars vol.230より再構成のうえ転載

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