モデルカーズ

これぞバックシャン!ジョーハン製プラモで「AMCマーリン」の独自の世界に浸る【モデルカーズ】

4人が余裕で座れる大きなファストバック

アメリカの非ビッグスリー、いわゆるインディペンデントの中でも最後まで残ったメーカーが、AMCである。そのAMCが1960年代に市場へ送り出して注目を集めたのが、AMCマーリンであった。2ドアのファストバック・クーペであるマーリンだが、マスタングなどのような2+2ではなく後席の居住性も確保されており、AMCでは「ファミリーサイズ・スポーツ・ファストバック」と称していた。

【画像18枚】真っ赤なマカジキ(マーリン)の細部までを見る

AMC(アメリカン・モータース・コーポレーション)は、1954年にナッシュとハドソンが合併してできたメーカーだ。同社では、元々ナッシュが使用していたランブラー・ブランドの元に、クラシックというインターミディエイトのセダンを1961年型からラインナップしていたが、AMCマーリンはこのクラシックのボディをベースとし、ファストバックのグリーンハウスを載せ、ラグジュアリーかつスポーティに仕立てたモデルであった。

マーリンの車体前半はほぼクラシックのままで、顔つきなども細かい点が異なるだけだが、ファストバックのキャビンが後ろすぼまりな形となり、サイドウィンドウが楕円形状となっている点が非常に特徴的である。こうした後ろすぼまりなグリーンハウスは、例えばC2コルベットなどにも見られるものだが、マーリンが狙いとしたのは1940年代後半~1950年代初頭のナッシュなどの、なだらかなリアスタイルを想起させることだったようである。その点で、マスタングやバラクーダのファストバック・スタイルとは意味あいがすこし違っていたようだ。

この基本デザインは、1964年に”ターポン”の名で発表されたショーカーから多くを受け継いだものである。ただしターポンは、コンパクトカーであるランブラー・アメリカンをベースとしており、そのためボディもマーリンよりはずっと短く、またサイドウィンドウもJ字型を描いていて、マーリンのそれとは異なっていた。アメリカンおよびターポンのホイールベースは106インチ(2692mm)、対してクラシックおよびマーリンはホイールベース112インチ(2845mm)であり、マーリンのスタイルには若干間延びした感があるのも否めない。

マーリンの発売は1965年シーズン途中のことで、この初年型はランブラー・マーリンを名乗ったが、翌年からAMCはランブラーのブランド名を段階的に廃止することを決めたため、マーリンも1966年型ではAMCマーリンとなった。実質的な変化は僅かなもので、グリルの小変更、スウェイ・バーの標準化、ブラック・バイナルトップの設定などが行なわれた。価格の値下げも実施されたが効果は全くなく、前年型では10000台以上を売ったのに対し、1966年型では5000台未満まで販売台数を減らしている。

エンジンは直列6気筒の232-cid(3.8L/145hp)が標準で、オプションでこのエンジンの155hp仕様も存在したほか、V8の287-cid(4.7L/198hp)、327-cid(5.4L/250hpと270hpの2種)も用意されていた。マーリンは翌年型でベースをフルサイズのアンバサダーへと移行。ホイールベースはさらに伸びて118インチ(2997mm)となったが、そのスタイリングはむしろまとまりの良いものとなっている。しかしセールス悪化には歯止めがかからず、マーリンはこの年式を最後に廃止となった。

再販品は初版とは細部が色々異なる
このAMCマーリンは、かつてジョーハンからプラモデル化されていた。ここでお見せしているのは、このジョーハン製1/25スケールのマーリンを組み立てた作品で、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の174号(2010年)に掲載されたものである。そのときの、作者・周東氏による解説を以下お読みいただこう。

「マーリンのモデルキットは、ジョーハンから出ていた1966年型が唯一のものだ。初版は1966年、その後『USA OLDIES』シリーズとして1970年代中ごろに再販されている、後にも同じ箱で数回出ていたようだが、いずれにしても30年以上前のキットだ。しかし時々オークション等にも出回るので入手は可能だろう。

初版(C1900)と再販品(C3666)を比較してみたが、このキット、かなりの部分で異なっている。例えば、ボンネット裏のモールドが違っていたり、ヘッドライトが初版ではクリアレンズになっていたり、といった具合だ。最大の違いはシート座面のパターン、初版は正確なパターン表現となっているが、再販品は何を参考にしたのか分からない、正体不明なパターンに変わっている。

作例は再販のキットをストレートに組み上げたもの。ホイールベースで計算してみたところ1/24.3というスケール値となり、1/25と言うには若干大きめである。ボディは肉厚も適当で形状もGOODだ。リアサイドに少しヒケたようなところがあるが、パテ修正するほどのものではない。注意点としては、リアピラーのパーティングラインの処理を慎重に行うこと、ドアラインの筋彫りを少し深くしてあげること、くらいだろう。

インテリアはシートが前述のような状態であるし、ドアトリムもモールドが曖昧なので修正したいところだが、作業としてはスクラッチになってしまうので、今回は見合わせた。エンジンは形は問題ないのだがバリが多いので丁寧に処理してあげよう。ファンベルトのパーツは折損しやすいので、取り扱いには充分注意したい。

シャシーはフロントサスの組み立てが少々厄介だ。アッパーアームとスプリングはシャシーにフィットするようにし、左右対称になるよう調整、さらにフロントサスとタイロッドを仮組みして、トー角やキャンバー角がおかしくならないようにする。作例では、タイロッド、フロントサスを中央で切断して調整。スピンドルの各ピンは折損しやすいので注意が必要だ。ここは固定してしまった方が強度的には強くなるだろう。

ボディカラーはコード3Aの”ANTIGUA RED”と1Aの”CLASSIC BLACK”。この2色を、マーリンを特徴づけるパターンでペイントしてみた。レッドの方はクレオスのC158スーパーイタリアンレッドにC100マルーンを少量、C2ブラックを微量ブレンド。ブラックの方はC157スーパーブラックを使用している」

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.174より再構成のうえ転載

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