国内試乗

刺激的な純内燃エンジンの4L V8ツインターボはいまや希少!「メルセデスAMG GT」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

スポーツ+モード以上では先代以上に走りが楽しめる!

メルセデスAMGから本格派のスポーツモデルとして華々しくデビューを飾った「GT」が2代目へと進化したと初めて耳にした際、特に驚きもしなければ、大きく期待することもなかった。その理由は、昨今のメルセデスの動向によるものだ。初代GTは、従来のメルセデスとは別格のAMG完全オリジナルとして話題を振りまき、ライバルの名にポルシェ911を掲げていた。その勢いと個性に正直こちらとしては少々ノックアウトされた気分だったが、それが今では懐かしいとすら思えてくる。

メルセデスAMG GTクーペの外観

リアウインドーの傾斜はより強まったことで、一層エレガントなリアビューを実現している。

それから9年の時を経て2代目がデビューするまでの間、先立ってGTには4ドア クーペが加えられたものの、結局はCLS&Eクラスがベースだし、マイバッハに関しても頭文字にメルセデスが与えられてからというもの、普通にメルセデスの高級車グレードという位置づけにしか思えなかったから、今回の2代目GTも事実上SLの姉妹車であることを知ってしまうと、冒頭のような感想を抱かざるをえない。

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メルセデスAMG GTクーペの走り

ロングノーズ&ショートデッキなやや薄れたが、滑らかなルーフラインにより、一層伸びやかになった印象だ。

確かにスペック上でもほぼ同じ数値が並び、技術面でも共通項は多数に及ぶが、オープンボディのSLと、クーペスタイルのGTでは、当然ながら剛性感も違えば、その造りも異なるはず。参考までに初代と比較すると、ねじれ剛性は18%アップ、縦軸方向では40%、横軸剛性は50%も高くなっているとメルセデスは主張。

さらにアルミやマグネシウム、スチールのほか、一部に繊維複合材を組み合わせたことで、ボディシェルは270kgに仕上げたと豪語しているが、これはSLとまったくの同一値。即ち、SLの数値もベースとなっているのは、AMG GT ロードスター比だから当然である。SLがAMG専用となったためだと思われるが、真っ向から新旧SLで比較しないところが何ともすっきりしないのは筆者だけだろうか?

メルセデスAMG GTクーペのインテリア

コクピット周りのデザインは、SLとの共通点も多い。アナログとデジタルを融合させた「ハイパーアナログ」デザインのインテリアは、高品質な素材やクラフトマンシップによって、ラグジュアリーな仕上がりだ。センターディスプレイはドライバー側に6度傾いている。

ともあれ、2代目GTの印象にそろそろ移ろうと思う。なんだかネガティブモードではじめることとなってしまったが、正直、悪くない。むしろ初代のような強烈な個性がない反面、扱いやすいスポーツGTになったと言えよう。特に今作は、AWD。さらに言えば、2+2シートをもつGTの名に相応しい仕上がりで、何も構えずにさらりと乗れてしまうような、ビジネススーツでも気軽に使えるフィーリングだ。このあたりも、さすがにSLと共通ということを意識させるが、その先に違いが出てくる。

メルセデスAMG GTクーペのエンジン

搭載されるAMG製4L V8ツインターボは、最高出力585ps、最大トルク800Nmを発生。前後トルク配分の連続可変が可能なAMG 4マチック+を初搭載している。

特にスポーツ+モード以上では、先代とは大違い。M177型V型8気筒DOHCツインターボエンジンの出力が、585ps&800Nmと極めてパワフルなのは言うに及ばないが、4マチック+と呼ばれるAWDシステムの前後トルク配分が可変式であることと、リヤ アクスルステアリングの装備、さらに電子制御LSDなどとの相乗効果によって得られる旋回性能は、トラクションが効果的に活かされて実に楽しめる。ハンドリングに関してもライントレース性に優れているし、接地感も分かりやすくて、かなりバランス良く仕上がっていると思う。

メルセデスAMG GTクーペの外観

メルセデスモデル最大を誇るフロントグリル開口部は。下部に高速域でせり出すカーボン製アクティブエアロダイナミクスが装備されている。

それに加え、足まわりのAMGアクティブ ライド コントロールも見事な設定だと感心するばかり。1秒間に最大1000回分析してスタビライザーの設定を制御するだけあってレスポンスに優れているだけに、多少荒れたアスファルトを乗り越えても瞬時に収縮させるからメルセデスらしい上質な乗り心地をハードな走行でも維持しているのだから文句なし。正確性にも優れているところをみると、5リンク式サスは相当高いレベルに達していると思われる。

メルセデスAMG GTクーペの外観

リアディフューザーの容量は初代の約2倍に拡大したという。

ただ、全体的に安定志向なのは否めない。無論、それ自体は悪いことではないが、今回のようにワインディングロードを中心とした試乗では、ここまで知るのが限界。本来もつポテンシャルを計るのあれば、自ずとサーキットで――ということにはなるものの、ドライバーがこのGTに乗って、その気になれるのかどうかは別問題。

メルセデスAMG GTクーペの外観

優れた制動力と正確なコントロールを可能にするAMG強化ブレーキシステムを装備。タイヤは前:295/30R21、後:305/30R21サイズのミシュラン・パイロットスポーツS5を履く。

というのも、スポーツカーを熟知している方なら分かるはずだが、このAMG GTは、ポルシェで言うところの911カレラに相当する。つまり、サーキットに行くなら、911シリーズの中でもGTS、恵まれた環境にいるならGT3などが適するように、このAMG GTは公道を主軸とするのを狙ってセッティングされているのは明らかだから、まだ日本未導入ではあるものの、AMG GT63 SEもしくはGT63 PROが上陸するまで待つべきかもしれない。

メルセデスAMG GTクーペの荷室

ラゲッジスペースは通常時で321L、左右一体式のリアシートバックを倒せば、675Lまで拡大することが可能。前後方向に長いので、ゴルフバッグ2個は積載できそうだ。

初代のスリリングな仕上がりと比較してしまうと、些か個性が薄くなってしまったが、これもお家事情があってのことだと察する。刺激的な純内燃エンジンのV8ツインターボが残されているだけでも有り難いと思うべきなのかもしれない。

【SPECIFICATION】メルセデスAMG GT 63 4マチック+クーペ
■車両本体価格(税込)=27,500,000円
■全長×全幅×全高=4730×1985×1355mm
■ホイールベース=2700mm
■トレッド=前:1680、後:1685mm
■車両重量=1940kg
■エンジン形式/種類=177/V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=83.0×92.0mm
■圧縮比=8.6
■総排気量=3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2500-5000rpm
■燃料タンク容量=70L(プレミアム)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:5リンク/コイル、後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:295/30R21、後:305/30R21

フォト:篠原晃一/KShinohara

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

野口優

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