アウディの最新モデルであるRS Q8とRS 3の国際試乗会がスペイン・バルセロナで開催された。RSモデルらしく一般道だけなくサーキットでの試乗も叶った。そのファーストインプレッションをお届けする。
SUVの固定概念を覆すダイナミックな走り
ドイツ本国で6月に発表された新型RS Q8と、8月に発表された新型RS 3の国際試乗会が、スペイン・バルセロナで開催された。一般道とサーキットでその走りを体験することが出来た。
アウディQモデルの頂点に位置づけられるRS Q8は、今回の改良で、内外装デザインをリフレッシュしたほか、RS専用チューンのアダプティブエアサスペンションに加えて、後輪が高速時に前輪と逆位相に最大1.5度ステアするオールホイールステアリング、そしてオプションで48V駆動のリア電動アクティブロールスタビライゼーション、RSセラミックブレーキシステムを設定し、運動性能をさらに引き上げている。
今回試乗したRS Q8パフォーマンスは、4LV8ツインターボをさらに磨き上げ、標準モデルの50ps/50Nmアップとなる640psの最高出力と850Nmの最大トルクを実現。さらには標準の22インチアルミホイールに対して、1本あたり約5kg、4本合計で約20kgもの軽量化を果たした23インチ鍛造アルミホイールを設定し、エキゾーストシステムも1kgの軽量化を実現。加えて軽量化と一層のエモーショナルなドライビング体験のために、前後のインシュレーターを減らすという、思い切った改良も加えられている。
その走りは、まさにSUVに対する固定概念を覆すダイナミックなものだった。当日は生憎の雨模様だったのだが、クルマの動きは驚異的に軽快で、ハンドリングも車両重量が2トンを優に超える、全長5m超のSUVとは思えない俊敏さ。ふた回りほどコンパクトな高性能ハッチバックでもドライブしているかのような感覚だった。
バルセロナ郊外の山間にあるパルクモートル・カステリョリは、勾配がキツく、ブラインドコーナーも多いテクニカルなサーキットなのだが、RS Q8パフォーマンスは、ここでもパフォーマンスSUVの名に相応しいキレ味を披露。ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで市販SUVの中では過去最速となる7分36秒698というラップタイムを記録したのも納得できる仕上がりだった。
世にハイパフォーマンスSUVは数多く存在するが、新型RSQ8パフォーマンスほどサーキットを本気で走れるモデルに出会ったのは初めてだ。しかも快適性も素晴らしく高い。これぞオールラウンダーというべき完成度である。
新型RS 3も着実に進化を果たしている。新型は内外装のアップデートのほか、ブレーキトルクベクトリングとリア左右の駆動力を最適配分するトルクスプリッター、電子制御スタビリティコントロール、RSスポーツサスペンションのアダプティブダンパーの統合制御を実現。これにより、コーナリング初期のアンダーステアを抑え、エイペックスにより理想的なアングルで、より車速が乗った状態でアプローチ可能になり、コーナー脱出速度も向上した。
この結果、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで従来モデルを7秒上回る7分33 秒123というラップタイムを記録。クラス最速の座に返り咲いたのだ。
実際にサーキットを走行しても、走りの自由自在感がこれまで以上に増していた。ステアリングを深く切り込めば容易にオーバーステアにも持ち込めるのである。また今回新たに設定されたオプションタイヤ、ピレリPゼロRのウェットグリップの高さにも感心させられた。ドライグリップ性能も従来から設定されているピレリPゼロ・トロフェオRに迫るレベルなので、積極的に選びたいアイテムである。
伝統の5気筒ターボは、現行世代が最後とも言われるなか、しっかりパフォーマンスを磨き上げてきた新型RS 3は、今こそ手に入れる時なのかもしれない。
【AUDI RS 3 SEDAN & SPORTBACK】伝統の5気筒味わうラストチャンス⁉
【SPECIFICATION】アウディRS Q8パフォーマンス
■全長×全幅×全高=5022×2007×1686mm
■ホイールベース=2998mm
■車両重量=2275kg
■エンジン形式/種類=─/V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=86.0×86.0mm
■総排気量=3996cc
■最高出力=640ps(471kW)/6000rpm
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/2300-4500rpm
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:5リンク/エア、後:5リンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:295/40ZR22