国内試乗

ハイレベルなスポーツ性と快適性で京都・奈良のドライブを満喫!「マクラーレンGTS」

ワインディングロードでの振る舞いはマクラーレンそのもの

スーパーカーは“パフォーマンス”と、それに由来するユニークな“スタイリング”が命。それゆえリアミッドシップが基本のレイアウトとして好まれることとなり、結果的に居住性や積載性といった実用域での評価は概ね下げることが多い。むしろ「そんなのカンケーねぇ」、というわけだ。

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ところが面白いことに、それもほぼ10年に一度くらいの割合で、間隙を縫うようなモデルが現れ斯界に確かな爪痕を残していく。1990年代のホンダNSX、2000年代のアウディR8、2010年代のMP4-12Cといった、パフォーマンスは超一級、されど実用性も高いというある意味贅沢なミッドシップスーパーカーたちで、以降に登場する他ブランド製マシンにも少なからず影響を与えてきた。
なかでも2011年にデビューしたMP4-12Cは、サーキットパフォーマンスと一般道コンフォートネスの両立を高次元で達成し、スーパーカー界に“乗り心地革命”をおこしている。この英国ブランドは未だ2シーターのミッドシップスーパーカーのみを生産するメーカーであり続けており、それゆえパフォーマンス面での進化には凄まじいものがあるわけだけれど、一方で2018年にはGTという実用重視のモデルをリリースするなど、ニッチなリアミッド領域を確実に深掘りしてきた。個人的には控えめなルックスをもつGTこそ、ある意味ではMP4-12Cの正当な後継モデルだという想いもあって、ラインナップのなかではずっと“イチオシ”のモデルでもあった。
今回、京都と奈良のドライブするにあたって選んだGTSというモデルはそんなGTの発展版だ。ルックス的にはフロントとリアのイメージを少し変えてきたが、全体の印象は相変わらず控えめで好ましい。最新のスーパーカーは高性能化が一層進んで、派手なエアロダイナミクスデバイスが再び幅を利かせるようになっている。その反動としてスマートなスタイルも望まれるようになっているような気がしてならない。フェラーリ296シリーズやランボルギーニテメラリオのスタイルもどちらかというと“控えめ”だろう。
秋の観光地。スーパーカーで走るなんて本来なら気が引けるところだけれど、マクラーレンGTの進化版なら大丈夫、などという妙な自信というか安心感をもって向かう。
”GT”と謳ってデビューしたモデルである。グランドツーリングが不得意、なわけはない。空力の改善もあってか高速域での安定感がすこぶるつきで、四肢は路面をビタっと捉えて離さない。それでいて極めてスムースな転がり方をみせ、しかも前輪の自由度が高い。安定しているのに自由に動かせるという感覚は他のスーパーカーではなかなか得難いドライブフィールである。
中間加速が以前よりさらに逞しくなったような気がした。否、以前から速さ的には十分で、今回のエンジンスペックアップなど誤差の範囲だとは正直思っているけれど、2024年の今もって十分に第一級と思うのだから、やはりパワートレインの秀逸さは誉めておくべきだろう。
京都までのドライブは、肉体的にはもちろん、精神的にも疲れの少ないものだった。目的地について、すぐ何かをしたくなる。もっともマクラーレンGTSの場合、それが“ワインディングロードへ向かおう”という誘惑になって“京都で美味しいご飯でも”を上回ってしまうのだから、本質的にはリアルスポーツカーなのだ。
ワインディングロードでの振る舞いは、これはもうマクラーレンそのもので、両腕と前輪、腰と後輪とが常に一体となったようなハンドリングと、レスポンスの優れた加速フィールでまさに水を得た魚のよう。頑張りすぎないようにと冷静さを保つことが時に難しくなってしまう。
旅先でのそんな戯れも嬉しいものだが、GTSの本領はそこだけにとどまらない。観光地をのんびり落ち着いて巡るような走り方でも全く飽きさせないからだ。時に知らない道を、しかもそれなりに細い道を入っていかなければならないことも旅先では多い。そんな時でも躊躇なく入っていけるのは、ドライバーとの一体感に優れ、乗り心地も素晴らしいからであろう。
「あ、あのカフェに寄ってみようよ」。フロントリフターを使わずともノーズ下には余裕がある。それでも念の為使うのがスーパーカー乗りの“流儀”だけれど、その反応も早くなったようだ。助手席からの突然の要望にも気軽に応えることができる。そんな扱いやすさがまたGTSの魅力というものだった。

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