コラム

ラリー経験ゼロの日本人が、本場フィンランドでクラス3位の快挙! カメラマン山本佳吾の「フィンランドラリー選手権」第4戦レポート

名ラリードライバーの2世も参戦

皆さんこんにちは。今年はWRC以外のラリーをメインに取材しようと決めたヤマモトです。海外のラリーに行きまくっていた頃はWRCを中心に取材を組み立て、何か面白いネタがありそうなヨーロッパ選手権や各国の国内戦を取材していました。しかし、以前と比べて物価が上がり円も弱りきった今は取材対象も厳選せねばなりません。

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今回リポートするのは、ラリーが国技とも言われるフィンランドの港町トゥルクで開催された、フィンランドラリー選手権第4戦「SM Red Devil Länsirannikon Ralli 2025」です。

トヨタGRのサービスパーク

ラリー人気が高いフィンランド

フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター空港の入国審査は最近やたらと厳しくなっていて、今回も行き先や目的、宿や帰りのチケットは? など、厳しい質問が飛んできます。「トゥルクへラリーの取材に行く」と答えると「マジか! 日本からFRC(フィンランドラリー選手権の略称)の取材かよ」と驚いた表情。こちらとしては「FRC」なんて単語が出てくる方が驚きです。以前も「WRCの取材で来た」っていうと「いいなあ、俺も行きたい」なんて会話をしたことがあり、フィンランドでのラリーの認知度を思い知らされます。

フィンランドラリー選手権第4戦スタートシーン

ヘルシンキから車で約1時間40分くらいの距離にあるトゥルクはこぢんまりとした街でしたが、なんでもフィンランド最古の街で、かつては首都だったこともあるとか。そんなトゥルクの街の中心部にある広大な運動公園がサービスパークとスタート、フィニッシュ会場となりました。
ステージはフィンランドらしい道幅が広くてめちゃくちゃスピードが乗るフラットダートから、少しナローで若干路面の荒れた道まで変化に飛んでいました。また、金曜夜のSS1とSS2はフィンランドでは珍しいターマックステージ。走行後の選手たちのコメントも、面白い! やサイドウェイを楽しんだよ! など、普段とは違った印象を受けました。

参加台数は何と120台!

ヨーロッパの国内戦に来ていつも驚くのが参加台数です。今回は何と約120台! フィンランド選手権に加えて隣国のエストニア選手権やバルト海選手権などが併催されています。クラス分けも細かくて、中にはエンジンスワップが認められているよくわからないクラスや、トラックのクラスもあり、見ていて飽きません。

ホンダのK20ユニットが搭載されたBMW318も参戦

フィンランドといえば昔からラリーが盛んな国で、当然ながらWRCで活躍する選手も多く輩出してきました。今回のラリーには、フォードやプジョーなどで活躍したマーカス・グロンホルムの息子のニクラス・グロンホルム選手や、スバルなどで活躍したミッコ・ヒルボネンの息子のルーペ・ヒルボネン選手が参戦していました。ミッコが息子にアドバイスを送るシーンも見られたりして、オヤジ世代のかつての活躍を知る世代にはなんだか感慨深いシーンでした。

かつての名ドライバーであるマーカス・グロンホルムの姿も

フィンランド選手権には言語が異なるバルト三国からの選手も多く参戦していて、選手向けの書類などには英語が併記されています。この辺りは島国日本で育つと新鮮な感覚です。また、環境が整っていることもあってバルト三国以外の国から参戦する選手も見られます。
今シーズンから参戦しているヴァレンティーノ・レッダ選手はイタリアの18歳! コンビを組む超ベテランコ・ドライバーのダニーロ・ファッパーニ選手とは親子ほどの年の差です。母国イタリアでの参戦経験はなく、全くのノーマークでしたが、18歳とは思えない速さと落ち着いた走りで驚きました。
ボクとは旧知の仲のダンニロ選手に聞くと「彼は速いよ。タイヤの使い方も上手だし。少しでも時間があるとスマホばっかり見ているのはイマドキの若いヤツだけど」と語っていました。
ヴァレンティーノ選手自身もボクに「見てよ、このタイヤの減り方」と自信たっぷりな表情。生意気なヤツやなあと思いつつも、ダンニロへの信頼と感謝の言葉も語るあたりに清々しさも感じて、ひょっとしたら大物になるかもなあと思わせる若者でした。

トヨタWRCチャレンジプログラムでコ・ドライバーのとして参戦している前川富哉は見事優勝!

イタリアの若者だけじゃありません。トヨタの若手育成プログラムである前川富哉選手だけはこのラリーが3戦目。フィンランドのベテラン、ヤルコ・ニッカラ選手とのコンビで前戦では早くも初優勝しました。第4戦も安定した走りを見せて優勝! 前川選手は2012年のデビュー当時から知る選手で、地区戦や全日本で経験を重ね、多くのドライバーとコンビを組んできました。
今年からフィンランドへ居を移してラリー漬けの生活を送っています。「競技に関しては日本にいる時よりもやることは増えたけど、充実しています」と笑顔で語ってくれました。

日本人選手らが大活躍!

一方で尾形莉欧選手と柳杭田貫太選手は海外ラリー初参戦。柳杭田選手は昨年から全日本ラリーに参戦していますが、12歳からドリフトに参戦していただけにクルマをコントロールするセンスは抜群です。ラリー歴は浅いもののチャレンジプログラムに抜擢されました。
コンビを組むコ・ドライバーのヴィッレ・マニセンマキ選手は、フィンランドチャンピオンのテーム・アスンマー選手と組んでWRCなどにも参戦していた、経験豊富な選手です。平均車速が100キロを超えるような、日本とはまるで違う環境ですがクラス4位で完走しました。

もうひとり、尾形莉欧選手はeモータースポーツ出身の24歳。大学時代に自動車部で競技経験はあるものの、なんと今回が人生初ラリーだったのです。コ・ドライバーのミカエル・コルホネン選手選手はフィンランドのみならず、WRCやERCでの経験も豊富。初ラリーの尾形選手をサポートします。

トヨタWRCチャレンジプログラムでラリー初参戦の尾形莉欧は何と3位を獲得

その走りは初ラリーとは思えないものでした。平均速度が高く、ジャンプする場所も多く難易度の高いフィンランドのステージをクラス3位でフィニッシュ! これには周囲の選手や関係者も驚きの表情で、「フィンランドに来てから走ることはもちろん、今まで作ったことがないペースノート作りに関してもたくさんテストを重ねてきました。初めてのラリーにしてはノートも上手く合っていたのですが、最終ステージだけはズレが出てきてリズムを崩したのが残念でした」と、冷静に分析する様子は初ラリーとは思えないものでした。4期生の活動はまだ始まったばかりですが、今後の活躍に期待したいです。

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山本 佳吾

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身長159cm、体重47kgの業界最小フォトグラファー。ラリー取材は内外問わず経験豊富。放浪癖あり、撮り鉄、阪神ファン、プジョー106キチガイ。

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