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フォルクスワーゲンは2025年9月7日、ミュンヘンで8日~14日に開催される「IAAモビリティ2025」に先立ち、ブランドの未来を象徴する新たな一台、電動コンパクトSUVのコンセプトカー「ID. CROSS Concept(ID.クロス・コンセプト」を世界初公開した。これは、同社が推進する電動化戦略において、より手頃な価格帯のセグメントへ本格的に打って出るための重要なモデルとなる。2026年からの市場導入が計画されている4つの新しいスモールEVラインナップの一つであり、既存の内燃機関(ICE)モデルで人気の「T-Cross(Tクロス)」クラスを電動モデルとして強化する役割を担う。
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フォルクスワーゲンブランドのCEOであるトーマス・シェーファー氏は、このコンセプトカーについて「新しいデザイン、これまで上位クラスでしか見られなかった多くの技術、改善された操作性と品質、そしてついに『正しい』名前が与えられました。この新世代フォルクスワーゲンで、私たちは約束を果たしていきます」と述べ、ブランドの新たな時代の幕開けに対する強い自信を示した。
新デザイン言語「Pure Positive」とTクロスとの近似性
ID.クロス・コンセプトは、「Urban Jungle green」と名付けられたボディカラーをまとい、フォルクスワーゲンの新しいデザイン言語「Pure Positive」を体現している。デザイン責任者のアンドレアス・ミント氏によれば、この言語は「安定性」「好感度」「秘伝のスパイス」という3つの柱に基づき、純粋で力強い明快さ、視覚的な安定感、そしてポジティブで好感の持てる個性をすべての新型車に与えるものだという。
その表情は、フロントとリアの3Dライトシグネチャーのグラフィックによって「微笑んでいる」かのように見え、親しみやすさを演出している。さらに、往年の「ゴルフ」や「VWバス」といったブランドのアイコンからインスピレーションを得たカリスマ的なCピラーや、完全にストレートなウィンドウラインが採用されており、ブランドの強力なヘリテージを未来へと継承する意図が込められている。
注目すべきは、そのボディサイズである。全長4161mm×全幅1839mm×全高1588mm、ホイールベース2601mmというディメンションは、現行の内燃機関モデル「Tクロス」に非常に近い。これは、ID.クロスがTクロスの電動版後継車、あるいは電動化時代のカウンターパートとして位置づけられていることを明確に示唆している。
一方で、足元にはグッドイヤーと共同開発した235/40R21サイズの大径タイヤと、専用デザインの21インチアロイホイール「Balboa」が装着され、コンセプトカーならではの力強さを主張している。
コンパクトなボディに広大な空間と先進のインテリア
コンパクトな外寸にもかかわらず、ID.クロス・コンセプトの室内は驚くほど広々としている。5人乗車時でもクラス平均を上回る450Lの荷室容量を確保し、さらにボンネット下には25Lのフロント収納スペース(フランク)も備える。これにより、都市での日常使いから、家族や友人との長距離旅行まで、幅広い用途に対応する万能性を実現している。
インテリアは「フィールグッドオアシス」をテーマに、ラウンジのような快適な空間としてデザインされた。カラーは「Vanilla Chai」と呼ばれる温かみのあるベージュで統一され、ファブリックで覆われたサーフェスなど、触感にもこだわった高品質な素材が随所に用いられている。あらかじめ設定された照明、サウンド、空調のモード「Atmospheres」が、くつろぎの空間を演出する。さらに、ディスプレイ上の植物モチーフや、センターコンソールに本物の植物を配するなど、ユニークな試みも見られる。
シートはVWバスのように完全に折りたたんでリクライニングエリアを作り出すことも可能だ。コックピットには、11インチのデジタルメーターと13インチのセンタータッチディスプレイが視覚的に一列に配置され、直感的なメニュー構造と新設計の多機能ステアリングホイールにより、運転に集中できる環境が整えられている。
進化版プラットフォーム「MEB+」と新開発の前輪駆動システム
技術的な基盤となるのは、モジュラー電動駆動マトリックス「MEB」の次世代進化版である「MEB+」だ。このプラットフォームは前輪駆動を基本とし、エンジン、バッテリー、ソフトウェアなど多岐にわたる改良が加えられている。開発責任者のカイ・グリュニッツ氏によると、来年から導入される新世代ソフトウェアにより、多くのシステムで機能が大幅に向上し、上位セグメントの車両に搭載されている「トラベルアシスト」の進化版なども利用可能になるという。
ID.クロス・コンセプトに搭載される新開発の駆動システムは、フロントアクスルに統合された電気モーターとパワーエレクトロニクス、そして床下にフラットに配置された高電圧バッテリーで構成される。モーターは最高出力155kW(211ps)を発生し、前輪を駆動。航続距離はWLTPサイクルで最大420kmと予測されている。また、最大1200kg(制動時、8%勾配)の牽引能力と、e-bike 2台の積載に十分な75kgのドローバー荷重も確保されており、ライフスタイルの多様なニーズに応える実用性も備えている。
2026年からの電動スモールカー攻勢
このID.クロス・コンセプトは、フォルクスワーゲンが計画する4つの新しい小型電気自動車コンセプトの4番目のモデルである。先行して発表された「ID.2 all」、「ID. GTI Concept」、「ID. EVERY1」と共に、2026年から順次、生産モデルが市場に投入される予定だ。
具体的には、「ID.2 all」の市販モデルである「ID.ポロ」が2026年前半にワールドプレミアされ、その直後に「ID.ポロGTI」が続く。そして、このID.クロスの市販モデルは2026年夏にワールドプレミアが予定されており、2027年には「ID. EVERY1」の市販モデルの登場が控えている。フォルクスワーゲンは、これらのモデル群によって、欧州市場において技術的にも価格的にも魅力的なエントリーレベルの電気自動車を幅広く提供していく構えだ。
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