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【新型プレリュード試乗】タイプRの血統に、“変速する”e:HEV。五感を刺激するホンダの回答がここにある

新世代ハイブリッドスポーツの実力を徹底検証

2025年9月5日に正式発売された6代目となる新型ホンダ「プレリュード」を、クローズドコースで走らせた。“電動化時代の「操る喜び」を体現する”という、気になる走りはどうなのか? 早速インプレッションをお届けしよう。

【画像46枚】鮮やかな赤が映える流麗なクーペフォルム。新型ホンダ「プレリュード」のディテールを隅々まで見る

次世代の「e:HEV」を提案

6代目となるプレリュードの復活。特に50代以上のシニアたちにとって、このフレーズにはとても甘美な響きがあるだろう。

かくいう筆者は先代プレリュードが登場したときまだ免許取り立ての子供で、小粋なクーペスタイルのセクレタリーカーにはまったく興味がなかった。ホンダで言えばシビックSiR2やインテRがヒーローだったし、やっぱりスカイラインGT-Rが、シーンの中心だったからだ。

しかし最新のプレリュードを試乗して、ようやく自分にもその魅力がわかるようになってきた。

新型プレリュードのベースは、ずばりシビックのアーキテクチャだ。そのスリーサイズは全長4515mm×全幅1880mm×全高1355mm、ホイールベースが2605mmと、シビック(全長4560mm×全幅1800mm×全高1415mm、ホイールベース2735mm)に比べてロー&ワイドのショートホイルベース仕様となっている。

ホンダ新型プレリュード:ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」を搭載。2モーターハイブリッドシステムに2L直噴エンジンを融合させ、爽快な走りへと進化。より低燃費で、より楽しい走りは、ハイブリッド車のイメージを一新させる。

パワーユニットも同様に2Lの直列4気筒エンジンをベースとした「e:HEV」で、その出力もエンジンが最高出力141ps/最大トルク182Nm、2つのモーターを内蔵した電気式CVTが184ps/315Nmと、数値的には変わりない。

しかしホンダはここに「S+Shift」と呼ばれるパワーユニット制御を盛り込み、次世代の「e:HEV」を提案してきた。

そして筆者が注目したのは、シビックタイプRのリソースをまるっと受け継いだシャシーワークだ。全幅こそタイプRに比べて10mmナローだが、よりコンパクトかつ重心が低い3ドアのクーペボディに高性能な素材をインストールし、速さではなくしなやかさに振ったセッティングを施したというのである。

五感を刺激するe:HEVの新技術Honda S+Shift

可変ダンパーや電動パワステ、そしてパワーユニットの制御を統合する走行モードは、「コンフォート」「GT」「スポーツ」の3種類。まずはコンフォートモードから走り出すと、プレリュードはシビックとも、シビックタイプRとも違うクールな走りを披露した。

走り出してすぐにわかるのは、ブレのないボディの剛性感。そしてロールしたときの慣性モーメントの少なさと、収まりの良さだ。

とはいえコンフォートモードは乗り心地に特化した設定だから、今回のように路面がきれいなコースだと減衰力の足りなさが目立ってしまう。ということで「GT」モードに転じると、これがまさにプレリュードのスタンダードテイストといえる身のこなしになった。

ステアリングを切り込んだときのリニアな応答性。そこからさらに切り込んで行ったときの、タイヤが路面に追従し続ける手応え。もしこの足周りとタイヤがレーシング・スポーツの領域でまとめられていたら、おそらくシビックタイプRを超える旋回性能を見せただろう。

しかしプレリュードはそのダンパー特性やスプリング/スタビ剛性、アッパーマウントやフロントのロワアームブッシュといったゴム類のコンプライアンスをソフトにとって、心地良い乗り味とハンドリングを優先した。タイプRよりも回頭性に優れるトレッド・ホイールベース比(1:1.6)をもって、これを走りの余裕に使った贅沢な仕立てとしたのだ。

ホンダ新型プレリュード:モーター駆動でありながら仮想の8段変速で加減速時に緻密にエンジン回転数をコントロールし、あたかも有段変速機があるかのようなダイレクトな駆動レスポンスと鋭いシフトフィールを実現。

ここでお待ちかねの「S+Shift」を選ぶと、まずはメーター内には6000回転からレッドゾーンが始まるタコメーターが現れた。そしてアクセルを踏み込むと、それまで滑らかに回っていたエンジンが、キレのある変速制御を刻んだ。

e:HEVのエンジンは高速巡航時の一定条件以外、発電機として働いている。つまりこの8速AT式ステップ制御は疑似的なものだ。

しかしその制御は慣れ親しんだエンジン時代のパワーユニットの流儀を踏襲しており、筆者にとっては冗長に効率的な制御を続けられるよりも自然だった。

スペシャルティスポーツハイブリッドの走りはいかに?

となれば残るは「SPORT」モードとの組み合わせだ。

果たしてその走りはよりダンパーがロールを抑え、電動パワステが座り、ここに気持ち良くエンジンとモーターがレスポンスした。パドルシフトでマニュアル操作したときの反応もリニアだ。

ちなみにその制御スピードは既存のスーパースポーツたちよりも素早いとのことだったが、せっかくオン/オフ機能があるのだから、もっと派手にやってくれてもよいとすら感じた。スポーツモードからスピーカーで増幅されるというエンジンサウンドをもっと車内に響かせて、モーターの疑似的な断続を強めてもよいと思ったがそこは、ギミックに陥りすぎないことがホンダのポリシーだ。

ホンダ新型プレリュード:低くシャープなフロントノーズ、抑揚のあるなめらかなボディラインに加え、低くワイドなスタンスがダイナミックな走りを想起させるエクステリア。

総じてプレリュードは、その名前に相応しい性能と共に甦ったと言えるだろう。

惜しいのはパワーユニットが、パンチに欠けるところだ。そう思わせてしまうほど、このシャシーは素晴らしい。その証拠にこの後試乗したシビックe:HEVは、そのボディが重たく大きいにもかかわらず、シャシーに対してパワーユニットのキャラクターがとてもよくバランスしていると感じた。

e:HEVの2L直列4気筒は非常に優れたエンジンで、8速ATばりにステップシフトさせても、その高効率領域の中に収まるようになっているという。またモーターとバッテリーもこれに完全バランスさせているため、現状パワーユニットの高出力化は望めない。だからこその「S+Shift」だったわけで、おそらく多くの人々はこの出来映えに十分納得することだろう。

そしてマニアの感想としては正直、「もしこのパッケージングでタイプRを作ったら!」と何度も思ったが、まずホンダはこのクーペボディに「e:HEV」の新たな可能性を詰め込んだのだと理解した。そしてこれを序曲(プレリュード)として、電動化の未来にホンダらしさを盛り込んで行くのだと思う。でもやっぱり、あの直列4気筒ターボが作れるうちに、「クーペR」を作って欲しいけれど。

【Specification】ホンダ・プレリュード

■車両本体価格(税込)=6,179,800円
■全長×全幅×全高=4520×1880×1355mm
■ホイールベース=2605mm
■トレッド=前:1625mm、後:1615mm
■車両重量=1460kg
■エンジン種類=直列4気筒DOHC 16V
■総排気量=1993cc
■最高出力=141ps(104kW)/6000rpm
■最大トルク=182Nm(18.6kg-m)/4500rpm
■モーター種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=184ps(135kW)/5000-6000rpm
■モーター最大トルク=315Nm(32.1kg-m)/0-2000rpm
■燃費(WLTC)=23.6km/L
■トランスミッション形式=電気式無断変速機
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:235/40R19

【画像46枚】鮮やかな赤が映える流麗なクーペフォルム。新型ホンダ「プレリュード」のディテールを隅々まで見る

山田弘樹

AUTHOR

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代からレース活動も始め、ロータスのワンメイクレースやスーパー耐久、フォーミュラスズキ隼やスーパーFJなどに参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして活動しつつ、ドライビングスクールでの講師も行う。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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