国内試乗

「この割り切りこそ、今のBEVに必要だ」ホンダ「N-ONE e:」 試乗で感じた、軽BEVの新たな価値基準

N-ONEをベースとした新たな軽BEV

ホンダの乗用車では2020年に販売されたホンダe以来となるフルBEV「N-ONE e:」が登場。シティコミューターに最適な軽自動車+電動パワートレインの組み合わせは果たしてどのようなマリアージュを見せるのか。公道試乗でのインプレッションをお届けしよう。

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シティコミューターとしての潔い割り切りが高評価

ホンダの軽自動車群であるNシリーズに新顔が加わった。ホンダの乗用車では2020年に登場したホンダe以来のBEVとなる「N-ONE e:」である。厳密には先んじてN-VANにも電動モデルが登場していたが、そちらは商用バンなので、純粋な乗用モデルとしてはこのN-ONE e:が2例目となる。

国内の軽自動車BEVとしては三菱ekクロスEV/日産サクラが先鞭をつけた形になるが、このN-ONE e:も志では負けていない。使用ユーザーのペルソナを40~50代の女性としたN-ONE e:は、使用目的を日々の買い物や通勤などの短距離利用に絞り、徹底した装備の割り切りを図っているのである。

特にエントリーグレードの「G」では、最近のクルマでは当たり前のようにダッシュボード中央に鎮座しているナビゲーションを取り払い、さらには急速充電までもオプション設定にするという、シンプルさを突き詰めたモデルとなっている。

これはコストダウンのために闇雲に装備を削ったのではなく、ホンダ社内で近距離使用時のクルマの使い方の統計を取り、その結果として導き出された結論だという。ホンダ開発陣の方もユーザーから「自家用車は近所の買い物くらいにしか使わないので本当はナビをつけるつもりはなかったのだけど、ディーラーでナビなしを選ぶとダッシュボードにナビ用のスペースだけが残ってしまい、それがイヤで仕方なくナビを付けた」というエピソードをたびたび聞いていたという。

確かに考えてみれば、近所のスーパーに行くためにナビを設定することはないし、職場と自宅の往復程度あれば途中、急速充電が必要になる場面はほぼ皆無なわけで、理にかなっている。

もちろん、ナビや急速充電装備が必要な人には、それらが標準装備となる上位の「L」グレードが用意してあるのでご安心を。とにかく、N-ONE e:はBEVの理想形ともいえるシティコミューターに最適なパッケージングなのだ。

軽自動車らしからぬ、機敏なフットワーク

今回の試乗で驚いたのはその軽自動車らしからぬフットワークだ。BEV化によってもたらされる高トルク+低重心化は、ベースが非力な軽自動車ほどその恩恵が大きい。現行の軽自動車としてはロールーフなパッケージングで、ワンメイクレースも行われるほどのN-ONE、もともと走りがそれなりに楽しめるモデルなだけにその効果はてきめんだ。

まず最大トルク162Nmから繰り出される加速は、とにかく「速い」のひと言。もちろんEVの高性能な加速はこれまで他メーカーでもさんざん体験してきたが、元が660ccの軽自動車な分、その加速は2クラスくらい上になった感覚だ。

それでいてエンジン車のように唸りを上げるエンジン音もなく「あらよっと」といった感じでシグナルダッシュはもちろん、中間加速でも交通の流れを積極的にリードできる。

コーナリングでも床下に搭載されたバッテリーのお陰で腰高感はなく、ビターっと路面に追従する粘り腰を発揮。これはもうちょっとしたホットハッチ的感覚だ。これを通勤の足にできたら、かなり楽しいのではないか?

なお試乗開始時でバッテリー残量が99%でメーター上の残り走行距離が198km。今回の試乗では下道+高速道路を1時間、約15kmを走行して残りが85%ほどだったので概ね計算通り。1日140~150km程度までの利用であればバッテリー残量に関して特にストレスもなく、自宅に充電設備があれば煩わしい給油も不要で、補助金を使えば「G」グレードは200万円代前半から購入可能。使用用途さえハマれば、これ以上の選択肢はないと思える1台だった。

多彩なユーザーニーズに応えるオプションパーツ

N-ONE e:の純正オプションは、多彩なユーザーニーズに応えるものとなっている。特に印象的なのはエクステリアでスポーティな印象を演出するストライプデカール。インテリアでは、男性ユーザーを想定したカーボン調のダッシュボードパネルや、ナビなしモデルにあると嬉しいスマホホルダーなどが用意されている。

また定番の無限パーツも用意される。今回の無限はベースが丸っこくかわいらしいデザインのクルマのため、その雰囲気を生かしたボーイズレーサー風のしつらえとなっている。特にエクステリアに入る「MUGEN」のアルファベットのロゴは、これまでの無限パーツとは趣の異なるデザインで、N-ONE e:の新たな一面を演出してくれるだろう。

【Specification】ホンダN-ONE e: L

■車両本体価格(税込)=3,198,800円
■全長×全幅×全高=3395×1475×1545mm
■ホイールベース=2520mm
■車両重量=1030kg
■モーター種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=64ps(47kW)
■モーター最大トルク=162Nm(16.5kg-m)
■バッテリー容量=29.6kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=295km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:ディスク、後:ドラム
■タイヤ=前/後:155/65R14/155/65R14

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フォト=郡 大二郎/D.Kori

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