MSOが「750Sスパイダー」で描いた“モノクロ”のラスベガス
マクラーレン・オートモーティブは2025年11月13日、ビスポーク部門であるマクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)が手掛けたワンオフモデル「プロジェクトVIVA」を発表した。間もなく開催されるF1ラスベガス・グランプリに先駆けて公開されたこの車両は「750Sスパイダー」をベースとし、マクラーレンとラスベガス市が共有する革新、野心、パフォーマンスの精神を称えるものであり、創造的なインスピレーションを自動車アートへと昇華させるMSOのパーソナライゼーション能力の頂点を示すコミッションである。
【画像22枚】ネオンを宿す新色「ベガス・ナイト」とは? ノリスとピアストリも参加した「プロジェクトVIVA」のディテールを徹底チェック
MSO初採用の「走るスケッチ」と、2種の特別なビスポークペイント
このプロジェクトVIVAの最大の特徴は、「光の街」ラスベガスをあえてモノクロームという予想外のレンズを通して再解釈した点にある。MSOは、街のネオンや色彩を直接的に再現するのではなく、手描きのモノクロームのラインワークを用いて、ラスベガスのリズム、建築、独特の雰囲気を翻訳した。これは、慣習に挑戦するというマクラーレンの哲学を表現するものである。
車両には、MSOの「Sketch in Motion(動きの中のスケッチ)」というコンセプトが初めて採用された。これは、デザイナーのスケッチが持つ自由な発想を、手描きの芸術性を通じて750Sのボディワークに直接描き出す試みである。このリバリーは、ラスベガスの象徴的な看板やスカイラインのランドマーク、音楽やパフォーマンスとの結びつきなど、街の動きと特徴を捉えつつ、マクラーレン自身のレーシングヘリテージをも織り交ぜた、広範な物語を構成している。
プロジェクトVIVAには、MSOによる2種類のビスポークペイントが採用されている。一つは、このコミッションのために専用開発された新色「ベガス・ナイト(Vegas Nights)」である。MSOのカラリストが夜のラスベガスの独特な雰囲気を捉えるために設計したこの色は、深いブラックのベースにシアン、マゼンタ、グリーンの微細なフレークが注入されている。日陰ではモノクロームに見えるが、光が当たると街のネオンの輝きを反映した鮮やかなアンダートーンが現れる。
もう一つは「ムリワイ・ホワイト(Muriwai White)」で、車両のフロント右アーチにある「ムリワイ・トロフィー」モチーフ内に描かれたブルース・マクラーレンの「ムリワイ・ハウス」のシャッターとドアに使用されている。この色は、ブルースが初めてレースへの情熱を見出したニュージーランドのムリワイ・ビーチの海を象徴する、微妙な青い輝きを帯びている。
F1ドライバーも参加、ボディに隠されたマクラーレンとラスベガスの歴史
この特別な一台には、マクラーレンF1チームのドライバー、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリもパーソナルなタッチを加えている。両ドライバーは、リアバンパーにチームの10回目のコンストラクターズ世界選手権タイトル(2025年10月、シンガポールGPにて達成)を記念する星を手作業で追加した。星は9個が白、10個目が銀箔で描かれている。さらに、インテリアのシルには、ミッドナイトティントで描かれた山の風景モチーフと共に、両ドライバーの手仕上げによるメッセージとサインが記されている。
車体には、マクラーレンとラスベガスの歴史や文化に関連する数多くのアイコンや隠されたディテールが散りばめられている。歴史的側面では、ラスベガス市創立の「1905」年とマクラーレン創立の「1963」年を表す一対のサイコロ、10台のチャンピオンシップ獲得マシンのシルエット、ブルース・マクラーレンの初レースナンバー「#58」を伴うムリワイ・トロフィー、ハートモチーフ内に描かれた彼の1970年のレーシングヘリメット、そして伝統のスピーディ・キウイエンブレムなどが含まれる。
ラスベガスの文化とランドマークを反映したディテールも豊富である。手作りのネオンサインへのオマージュである「ネオンアロー」、リアウイングの下に隠された「Fabulous」の文字、ボンネットの「Welcome to Fabulous MSO」グラフィック、750Sのレタリングを形成するトランプモチーフ、街の音楽文化を表す音符、ウェディングチャペルへの言及、ネバダの砂漠の地形を表すラインワーク、ランドマークの建築にインスパイアされたピラミッドの幾何学模様、ストリップの象徴的な噴水を表す抽象的な水の形状などが、モノクロームのラインワークで巧妙に表現されている。
「アイデアをユニークで意味のあるものに変える」MSOの哲学
マクラーレン・スペシャル・オペレーションズのディレクターであるジョナサン・シムズ氏は、「プロジェクトVIVAは、MSOの本質、すなわち慣習を超えて真に個人的なものを生み出すことを捉えています。ビジョンとスキルが融合し、あらゆるインスピレーションがデザインを通じて語られるストーリーになるのです。MSOはアイデアをユニークで意味のあるものに変えるために存在しています」と述べている。
マクラーレン750S「プロジェクトVIVA」は、ラスベガス・グランプリに先立ち、11月13日から20日までの期間、ウィン・ラスベガス・ホテル内のマクラーレン・エクスペリエンス・センターにて展示され、MSOの卓越したデザイン能力を披露することになる。
【画像22枚】ネオンを宿す新色「ベガス・ナイト」とは? ノリスとピアストリも参加した「プロジェクトVIVA」のディテールを徹底チェック
























