コラム

マツダが挑む「走るほどCO2が減る」未来。S耐で実証された“カーボンネガティブ”技術とは

マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー
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カーボンニュートラルを超えるカーボンネガティブが実現可能に

マツダが数年前に掲げた、カーボンネガティブの世界が少しずつ見えてきた。「走れば走るほど世の中のCO2が減る」という夢のような話である。理屈は分かるが実現するのはかなり先だと思っていたが、この話はあっという間に“カタチ”になった。

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ラジコンを使った実験で原理を実証

順を追うと、最初は2025年5月の富士24時間耐久レースで、子どもたちがラジコンを使って体験できるアトラクションとして登場。エンジン排気量は、一般的な自動車の1000分の1程度の2ccで、最高回転数は2万rpm。CO2濃度は、大気中が0.04%なのに対して、エンジン排気後は0.16%。それをゼオライトを含むCO2回収装置につなげると0.02%となった。つまり、大気中の2分の1になったわけだ。マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー実車「マツダ3」で挑んだCO2回収

この仕組みを大型化して、スーパー耐久シリーズ2025最終戦の富士スピードウェイに参戦したマツダスピリットレーシング「マツダ3フューチャーコンセプト」に搭載した。具体的には、車両後部の排気管の一部をバイパスさせ、そこにCO2回収装置がある。マツダによれば、装置に含むゼオライトは先にラジコンで使ったものと同じ仕様。ゼオライトにはナノレベルの穴がありそこにCO2が物理吸着される。この他、CO2の吸収方法としては、化学吸収を行うアミンなどがあるが、ゼオライトは商用として特性が公開されていることに加えて、高温でも安定してCO2を吸着できることが特長だ。レーシングカーの排気温度は700度を超える。CO2吸着に適した温度は30〜50度なので、排気バイパスを工夫して空冷した。マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー今回、実車での初採用では、車両側面に取り付けたインジケーターの発光エリアが、CO2回収量に応じて増える仕組み。4時間決勝レース後半にはインジケーター全てが緑色に光り、実験は成功した。目標のCO2回収量である100gに到達。今後は、量産化に向けてさらに研究開発を進める。
2026年度は、CO2吸着に加えてCO2貯蔵にトライし、2027年度以降はこの仕組みを高速で回すことにチャレンジする。その次は、貯蔵した高濃度のCO2を、例えばコンクリートなどのカタチにして安全で安定した状態で取り出せるようにし、それを社会で活用するエコシステムの構築を目指す。マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー

カーボンネガティブ実現へのロードマップ

内燃機関用の燃料でも次世代バイオ燃料を使うことで、走行中のCO2排出量を70~90%削減し、さらにCO2回収装置(マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー)で20~40%回収できれば、理論上はカーボンニュートラルを超えるカーボンネガティブが実現できる。マツダの技術開発の動向を今後も見守っていきたい。
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フォト=桃田健史/K.Momota
桃田健史

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専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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