夢を具現化する究極のクラフトマンシップ。ポルシェ、ドバイで「パナメーラ・ターボ・ゾンダーヴンシュ」の特別なインテリアを公開
ポルシェは2025年11月、ドバイで開催された「アイコン・オブ・ポルシェ」フェスティバルにおいて、「パナメーラ・ターボ・ゾンダーヴンシュ(Sonderwunsch)」の特別なインテリアを初公開した。これは、顧客一人ひとりの夢やビジョンを、最高の精度と細部へのこだわりで具現化するというポルシェの情熱を体現した一台だ。先に公開されていたエクステリアと同様に、精緻なグラデーションやコントラストカラーが採用され、エレガントなデザインと最高レベルの職人技が融合している。
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エクステリアと呼応する色彩の芸術
この特別なパナメーラのエクステリアにおける最大の特徴は、レブロンバイオレットメタリックからソリッドブラックへと滑らかに変化するツートーン塗装のフェード効果だ。さらに、そのクリアトップコートには金箔が含まれており、塗装面に深みのある効果を生み出している。
今回公開されたインテリアもこのテーマと密接にリンクしており、ブラックからメタリックなサンセットレッドへと流れる微妙な色調のグラデーションが施された。この特別なカラーリングは、シートセンター、パーセルシェルフ、そして車検証フォルダーにおいて見ることができる。
さらに、エクステリアとインテリアを繋ぐ架け橋として機能するのが、このゾンダーヴンシュ(特別注文)・プロジェクトのために開発された「アヴィウムメタリック」というコントラストカラーだ。外装ではピンストライプやホイールの外側面、サイドウィンドウフレームに使用されているこの色は、内装においても多くの要素に取り入れられている。
具体的には、センターコンソールのトリムにある「Sonderwunsch」の文字、そこに配置されたスイッチ類、スポーツクロノディスプレイの縁取りと針などがアヴィウムで仕上げられた。加えて、ドライブモードスイッチのリング、ドアハンドル、ドアパネルのスピーカーグリル、シートのパイピングに至るまで、この色がアクセントとして採用されている。
開発の地への敬意と素材へのこだわり
インテリアの基礎となるダッシュボードとドアパネルはブラックレザーで仕上げられ、バリックレッドのダブルステッチが施されている。ドアパネルには、黒く着色された栗の木(チェスナットウッド)の要素が装飾としてあしらわれた。
特筆すべきハイライトは、フロントシートのバッジである。これらは顧客へのインスピレーションとしても意図されたものであり、パナメーラが開発・生産されたポルシェの拠点へのオマージュが込められている。運転席側にはツッフェンハウゼンの、助手席側にはライプツィヒの地理座標が記されており、シートベルトもバリックレッドで統一されている。
ラグジュアリーを極めたコンセプト装備
ポルシェのゾンダーヴンシュ・プログラムがいかに非凡なリクエストを実現できるかを示す例として、デザインスタジオで作成された二つのコンセプト装備が搭載されている。
一つ目は、センターコンソールの収納スペースに配置されたシガーヒュミドール(葉巻保管箱)だ。
内部には杉の木のインサートと湿度計が備わっており、最適な湿度レベルを維持することができる。ガラスカバー越しに内容物を眺めることができ、取り外し可能なインサートには高品質なアクセサリーも収められている。
二つ目の例は、リアシートに統合された照明付きシャンパンクーラーである。
アームレストには小瓶用のスペースと二つのグラスを収納する場所が確保されており、構成部品はアヴィウムカラーで塗装されている。ボトルホルダー自体はブラックレザー製で「Sonderwunsch」の文字がエンボス加工されており、アームレストにあるポルシェクレストはターボナイト仕上げとなっている。
細部まで行き届いた完全なる個別化
この車両のラグジュアリーな仕立ては、ラゲッジルームにまで及ぶ。荷室は全面的にレザーで覆われており、それだけで贅沢な空間を強調している。荷物による傷を防ぐためのブラックアルマイト処理されたメタルインサートは、アヴィウムカラーで縁取られた。
さらに、積み込み口の保護プレート(ローディングシルプロテクション)は、黒ラッカー塗装された金属製で、本物の金箔を散りばめるという徹底したこだわりによって、極めて精緻な外観を実現している。
インテリアの仕上げとして、ドアシルには「Sonderwunsch」の文字が白く点灯するブラッシュブラックアルミニウムのトリムが採用された。また、アヴィウムのステッチとポルシェクレストが施されたブラックレザーのキーケースや、バリックレッドのステッチが入ったブラックレザーの充電ケーブルバッグなど、アクセサリーに至るまで広範囲な個別化が図られている。
ポルシェの個性化およびクラシック担当副社長であるアレクサンダー・ファビグ氏が語るように、このインテリアはエレガントなデザインと最高レベルのクラフトマンシップを融合させ、顧客の夢を細部まで完璧に現実のものとした一台である。今回はドバイでの発表となったが、こうした緻密でパーソナルな仕上げの可能性は、こだわりを持つ日本のオーナーにとっても、自身の夢を実現するための興味深い示唆を与えてくれるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
パナメーラの本質は「911の魂を宿すサルーン」だが、ゾンダーヴンシュはその定義を「走るオートクチュール」へと昇華させた。ドバイで公開された本作の「金箔」や「鮮烈なグラデーション」は、一見すると質実剛健なドイツ流とは対極に映るかもしれない。だが、顧客の夢を物理法則の限界まで追い込む執念こそ、ポルシェの真価だ。単なる装飾ではなく、塗装技術や素材の選定にまでエンジニアリングの哲学が貫かれている。標準のオプションリストに物足りなさを感じる諸兄にとって、この「対話による共創」は、究極の贅沢な時間の使い道となるだろう。
【画像25枚】ヒュミドールから金箔仕上げまで。ポルシェが本気で作った「夢のインテリア」をギャラリーで確認
























