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イタリアのピアジオ(Piaggio)社といえば、映画『ローマの休日』で有名なスクーター「ベスパ」や、愛らしいデザインで日本でも根強い人気を誇る3輪商用車「アペ」を生み出したメーカーとして知られる。そのピアジオの商用車部門が2025年11月、満を持して市場に投入したのが、100%電動の新型トラック「ポーターNPE(Porter NPE)」だ。都市部での運用に特化した「シティトラック」として開発されたこのモデルは、コンパクトな車体に高性能な電動パワートレインを搭載し、欧州の販売店ですでにオーダーが可能となっている。
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イタリアの名門が提案する都市型物流の新たな回答
ピアジオ・コマーシャルが送り出すポーターNPEは、都市の交通渋滞や厳格化する環境規制に対応するために生まれたモデルである。2025年11月26日ミラノにおいて、車両価格は3万7300ユーロ(約680万円)からとアナウンスされた。さらに特筆すべきは、内燃機関車からの乗り換えを促進する政府のインセンティブを活用することで、定価から30%ものコストを抑えて購入可能という点である。

この新型車は、単なる環境対応車ではない。ポーターシリーズが長年培ってきた「扱いやすさ」「快適性」「静粛性」に加え、クラス最高レベルの積載能力を兼ね備えている。今回の市場投入にあたり、架装の自由度が高い「シャシー」モデルだけでなく、すぐに業務に投入できる完成車シリーズもラインナップされた。具体的には「固定荷台(Pianale)」「ダンプ(Pianale Ribaltabile)」、そして「高アオリ付きダンプ(Pianale Ribaltabile con sovra sponde)」の3種類が用意され、多様なプロフェッショナルのニーズに応える体制が整っている。
クラスを超えたパワートレインと実用的な航続距離
ポーターNPEの心臓部には、「エレクトリック・ドライブ・ユニット(EDU)」と呼ばれるシステムが採用された。これは電気モーター、インバーター、トランスミッションを一体化したコンパクトなユニットで、重量とサイズを最小限に抑えつつ、高い効率を実現している。最高出力はピーク時で150kW(204ps)、最大トルクは342Nmを発揮する。この強力なトルク特性と後輪駆動の組み合わせにより、積載時や急な坂道発進でも力強い走りを保証する。

最高速度は90km/hに設定されており、都市間移動やバイパス走行にも十分対応する。気になる航続距離は、市街地で250kmを確保しており、都市内配送のニーズを十分に満たすスペックだ。搭載されるバッテリーは容量42kWhのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)タイプで、安全性と長寿命が特徴である。このバッテリーは8年間または16万kmの保証が付帯しており、急速充電(DC)を利用すれば、わずか30分で容量の20%から70%まで回復させることができる。
驚異的な積載能力と即戦力となる架装バリエーション
「シティトラック」の名の通り、ポーターNPEの最大の武器はそのサイズ感と積載能力のバランスにある。キャビン幅はわずか1640mmで、これは一般的な小型商用車の平均よりも500mm以上スリムな設計だ。しかし、そのコンパクトな見た目とは裏腹に、頑丈なシャシーのおかげで最大1050kg(シャシーモデル)という驚異的な積載能力を実現している。

今回販売店に並ぶ架装済みモデルのスペックも具体的だ。固定荷台モデルの最大積載量は880kg、ダンプモデルは790kg、高アオリ付きダンプでも730kgを確保している。荷台の長さは最大2800mm、内部幅は1620mmあり、高張力鋼の構造と3方開きのアルミニウム製アオリを備えるなど、実用性は極めて高い。ダンプモデルには電動油圧式の昇降システムと可動式リモコンが装備され、現場での作業効率を高めている。
最新の安全基準と快適性を凝縮
現代の商用車として、安全性への配慮も抜かりがない。ポーターNPEは、欧州の最新規制(GSR)やサイバーセキュリティ基準に適合しており、高度な運転支援システム(ADAS)を標準装備している。歩行者や自転車を検知可能な自動緊急ブレーキ(AEB)、車線逸脱を防ぐレーンキーピングアシスト(ELKS)、制限速度を認識するインテリジェントスピードアシスト(ISA)、ドライバーの眠気を検知するシステムなどが網羅されており、乗用車顔負けの安全性能を誇る。

また、ドライバーの労働環境改善にも力が入れられている。インテリアは刷新され、デジタルメータークラスターやタッチスクリーンラジオ、電動格納ミラーなどの快適装備が充実している。特に注目すべきは電動エアコンとヒーターで、これらはエンジン(モーター)が停止している状態でも稼働可能であり、配送の待機時間などでも快適な室内環境を維持できる。
ボディカラーは、プロフェッショナルな現場に馴染む「マーブルホワイト」をはじめ、鮮やかな「アンバーオレンジ」「ジェイドグリーン」、そしてイタリアンブランドらしさを感じさせるエレガントな「オパールブルー」の全4色が用意されている。ベスパやアペで世界中の街角を彩ってきたピアジオが、今度は静かで力強い「ポーターNPE」で、物流の現場に新たな風景を作り出そうとしている。
【ル・ボラン編集部より】
「ベスパ」のピアジオが手掛ける商用車と聞けば、あの愛くるしい「アペ」を想起する読者も多いはずだ。だが、このポーターNPEは、その愛嬌を残しつつも、欧州の厳しい環境規制と石畳の路地が育てた本格派の「仕事師」である。全幅1640mmという日本の軽トラ+αのサイズ感で1トン積載を実現するパッケージングには、都市物流に対するイタリア流の明快な回答がある。単なる道具に留まらず、オパールブルーのような色気あるボディカラーを用意するあたり、商用車にも美学を求めるピアジオの矜持を感じずにはいられない。
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