コラム

新車から41年ワンオーナーの「AE86改」。元メカニックが手塩にかけた、カローラレビンとの幸福な関係【愛車と原体験】

自分で稼いだお金で手に入れた人生初の愛車が、いつしか「アガリのクルマ」に。

原体験がその後のカーライフに大きな影響を及ぼすように思えてなりません。今回取材した“チョコチップ”さんは、かつてちびっ子たちを熱狂させた「スーパーカーブーム」直撃世代の方。当時はカメラ片手に街へ繰り出し、スーパーカーを追い掛ける少年だったそうです。その後もクルマ熱は冷めることなく、クルマ業界の道へと進んだチョコチップさん。その過程で学生時代の友人が手に入れた「ハチロク」に魅力を感じ、いつしか自身も手に入れることに……。

【画像25枚】事故の経験を乗り越え“生涯の相棒”となったチョコチップさんと愛車のAE86

「スーパーカーブーム」や「サーキットの狼」世代だった

――チョコチップさんがクルマ好きになったのは何歳頃でしたか?

小学生の頃だと記憶しています。自宅の裏に首都高速の環状線が走っていて、1日中クルマを眺めているような子どもでしたね。当時の男子が好きだった鉄道や特撮モノなどにも興味を示さず、クルマオンリーでした。それは大人になってからも変わることはなかったです。

――クルマが好きになった「原体験」は何でしたか?

祖父がクルマ好きで、アメ車に乗っていたことも少なからず影響しているかもしれません。

――ちなみに、お祖父様が乗っていたアメ車は……?

フルサイズのキャデラックを所有していた記憶があります。日本が高度成長期のときに事業を起こして成功を収めていたようです。私の父が運転手となって祖父を乗せてあちこち出掛けていました。そこに私も同乗させてもらったりしましたね。

それとやはり、スーパーカーブームや『サーキットの狼』の影響が大きいでしょうね。友だちと電車に乗って、都内や横浜のスーパーカーが展示してあるショールームに通ってはカメラで撮っていました。街中で撮影したこともありましたよ。

実は3Dプリンターで制作されたものだというフロントグリル。

都内にいると、それなりにスーパーカーを見ることができたんです。当時人気があったのはロータス・ヨーロッパやディーノ、ポルシェ930ターボ、ランボルギーニ・カウンタックLP400あたりです。後に、映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』の舞台にもなった駐車場で撮影をしていたらオーナーさんがやってきて隣に乗せてくれたんです。

――それはすごい! 車種は何でしたか?

デ・トマソ・パンテーラでした。助手席に私を座らせて近所をドライブしてくれたんです。たしか、私が10歳くらいの時のことです。信号待ちで隣に止まったバスを見たらタイヤが高い位置にあって、パンテーラの車高の低さに驚かされましたね。

初めての愛車が新車で手に入れたAE86、その後41年ともに歩む

――初めての愛車のこと、覚えていますか?

自分で稼いだお金で手に入れたのはこのハチロク(トヨタ・カローラレビン)が初めてのクルマです。それ以前は、親族から譲り受けたフォルクスワーゲン・ゴルフ1を兄と共同で所有していました。いわゆる「重ステ」で、ハンドルが重く、しかも3速ATだったので高速道路ではエンジンが唸りをあげて大変でした(笑)。あとは、父の会社で使っていたトヨタ・カリーナバンを借りて乗っていましたね。

――そうなると、ハチロクの所有歴は……?

今年で41年です。走行距離は12万kmを少し超えたあたり。このハチロクとトヨタ・アクアG’sの2台体制です。

――ハチロクの存在を知ったきっかけを教えてください

自動車整備の専門学校に通っていたとき、AE86の初期型の新車を友人が手に入れたんです。乗せてもらったらこれがすごく速い!感動しましたね。学校を卒業したあと、メカニックとしてトヨタのディーラー(トヨペット店)に就職したこともあり、カリーナ(3代目)を手に入れようと思ったらすでに生産終了していまして。それならば、同じエンジンを搭載しているハチロクを手に入れようと思ったんですね。レビンとトレノ、どちらにしようか迷ったんですが、固定式ヘッドライトのレビンにしました。ボディタイプはレースのイメージが強い3ドアを選び、手に入れたのが現在の愛車です。

外装だけでなく、内装のコンディションもご覧のとおり。ペダル類にも汚れが見当たらない。

――現在の愛車が納車された日のことを覚えていますか?

納車される日がハッキリと分からなくて、仕事を終えて帰宅するたびに「今日は届いていなかったな」と思う日々が1ヶ月くらい続きました。それだけに、納車された日はとても嬉しかったですね。

――当時の勤務先に納車されるわけではなかったんですね

当時、私が勤務していたのはトヨペット店で、レビンはカローラ店の扱いでした。現在のようにどのトヨタディーラーでも同じクルマが買える時代ではなかったので、職場ではなく自宅に納車されたんです(苦笑)。

ヘリテージパーツとして純正部品を再生産してくれるのはありがたい

――愛車を手に入れてからご自身のカーライフにどのような変化がありましたか?

ついに自分だけの愛車を手に入れたということもあって、やっぱり大切に乗りたいじゃないですか。本当はダメだったんですけど、勤務先のディーラーの整備工場までハチロクで通勤して、仕事が終わったあとに洗車をしたり、オイル交換をやったりしていました(笑)。

――トヨタ車でもクルマ通勤はNGだったんですか?

私の勤務先では、メカニックのクルマ通勤はNGでしたし、別チャンネルで販売されているモデルでしたからね。でも、私を含めて先輩たちもこっそりクルマ通勤していましたね。私の先輩なんて「鉄仮面」と呼ばれていた日産スカイライン(DR30型)で通勤していました(笑)。

――それって上司の方に見つかったら大変じゃないですか!

工場長は知っていたと思いますが、黙認してくれていました。今じゃ考えられないですよね。幸い(?)、営業所と整備工場が離れていたこともあり、所長は知らなかったんじゃないかと思いますね。

「当時モノ」のAE86関連のカタログ。若き日の郷ひろみが表紙を飾ったカタログも存在する。

――愛車とのカーライフで困ったこと、大変だったエピソードを教えてください

最近、純正部品が高騰していることでしょうか。トヨタがヘリテージパーツとしてハチロクの純正部品を再生産してくれるのは本当にありがたいことだと思っています。私自身、後期モデル用のドライブシャフトを購入しましたし。なかなか大変だと思いますが、もう少し価格を抑えてくれたらありがたいなと……。

街乗りとスポーツ走行を楽しめる仕様に

――今後、愛車に対して手を加えてあげたいポイントを教えてください

実は、5年ほど前にガソリンが漏れたことをきっかけに、お世話になっているショップにフルレストアといえるくらいの修理をお願いしました。このときは足掛け2年以上をかけて、スポット増しなどボディ補強からエンジン製作に至るまで、徹底したリフレッシュを行っています。今はこの状態をできるだけ維持していきたいなとは思ってますね。

――チョコチップさんのハチロクはどのような仕様なのですか?

街乗りとスポーツ走行を楽しめる仕様を目指しています。ピークパワーを追求するよりもバランスを重視したセッティングですね。

エンジンはAE92後期型に搭載されていた「4A-GE型」をベースに、戸田レーシング製のハイコンプピストンを組み込み、シリンダーヘッドとブロックは面研し、ダミーヘッドボーリングも行っています。カムシャフトも戸田レーシング製のインテークが272度、エキゾーストは264度のものを組み込んでいます。タペットカバーもオリジナルの風合いを再現して塗り直してもらいました。8500回転がレブリミットで、最高出力は150ps+αだと思います。

搭載されるエンジンは、街乗りとスポーツ走行を楽しめる仕様を目指して作られたという。

駆動系は、タカタテクノサービス製のクロスミッションに、エクセディ製のクロモリフライホイールおよび強化クラッチをセット。足まわりはエナペタル製の車高調、スプリングはフロントはSwift製(8kg)、リアがTRD製(6kg)です。吸排気系は、コシミズモータースポーツ製のエキマニに、サード製のスポーツキャタライザー。マフラーはKakimoto.Rからテックアート製のステンレスマフラーに交換しました。

冷却系は、セトラブ製のオイルクーラーや強化オイルポンプギアを導入しています。点火系はダイレクトイグニッションに変更しました。制御は、LINK製のECUにより、シーケンシャル噴射方式となっています。そのほか、オルタネーターの容量アップやサード製の大容量燃料ポンプも装着しました。燃料タンクやウェザーストリップなどの純正部品で購入できるパーツは交換し、かなり細かい部分までリフレッシュしています。現時点での完成度は80%くらいでしょうか。残りの20%は15インチホイールや細かいリフレッシュなど、いろいろ構想があります。

事故を経験後、一生モノにしようと決意

――ご自身の愛車に関することで、自慢できるポイントをぜひ聞かせてください

パッと見ではノーマルっぽいハチロクでありながら、中身はかなり作り込まれている仕様に仕上げている点ですね。実は「AE86改」なんです。

――当時から一生モノと考えていたのですか?

いやいや。当時はずっと乗り続けようなんて思っていなかったんです。手に入れてから数年後に事故を起こしてしまったんですね。割と大掛かりな修理が必要だと診断され、フレームナンバーの打刻を打ち直すレベルだっていわれたんです。結局、そこまで大掛かりな修理にはならなかったんですが、きれいに直ってきていろいろな思い出がよみがえってきたんです。妻とデートしたのもこのクルマでしたし。

実は一度、買いたいという方が現れて、売却寸前までいったんですが、やっぱり踏み切れなくて最後はお断りしたんです。そのときから「ずっと乗ろう」と決心しましたね。この気持ちは数十年経った今でも変わっていません。

事故を起こしたハチロクの写真を見せていただいた。

――あえて伺いますが、なぜ今日まで所有できたと思いますか?

やはり自分自身でメンテナンスできる点が大きいと思いますね。ディーラーに勤務したあとはレース関係の世界にも足を踏み入れましたが、自身のレビンのエンジンをバラして組みましたから。あと、自宅のガレージで作業できるのも大きいと思いますね。

――「オーナー兼主治医」ならではの強みですよね。ハチロクはどのような場面で乗っていますか?

イベントに参加したり、仕事が休みのときのドライブが主です。普段はアクアの方が出番が多いですね。基本的に雨の日にハチロクは乗らないようにしています。

ハチロクは「なくてはならない相棒」

――愛車とのカーライフで一番の思い出をぜひ聞かせてください

一番の思い出は、先述した事故のときのことです。職場の仲間と箱根まで走りに行ったとき、コーナーに突っ込んでしまったんです。自走できない状態だったので、JAFを呼んで近くの工場に運んでもらったんです。自分の勤務先で修理することを工場の人に伝えると「それなら今日中に移動して欲しい」といわれてしまい…。あちこち連絡してようやくキャリアカーの手配ができて、ひとまず勤務先にハチロクを持って行ったんです。キャリアカーを返却したころには夜が明けていました。私も同乗者の友人も怪我がなかったのは不幸中の幸いでした。

――愛車を維持するうえで気をつけていること、意識していることを聞かせてください

とにかく事故は避けたいです。私自身はもちろんのこと、相手が突っ込んでくる可能性もありますし……。

パッと見はマフラーとホイールを交換したハチロクに映るが、タダ者ではないオーラを発している。

――この先「このクルマだけは手に入れたい」というモデルはありますか?

ハチロクを乗り換えて……までは正直ないんですが、しいて言うならNSX(初代)ですね。

――チョコチップさんが愛車に「伝えたいメッセージ」をぜひ聞かせてください

これからも大事に乗っていくので、ちゃんと自分の要望に応えたような走りをしてもらえればと思いますよね。ゆくゆくは息子が受け継いでくれるみたいですが、そのときはよろしく。

ただ、肝心の息子のの方はというと、私と一緒に出掛けるときは運転しますが、ハチロクを借りてどこかに乗っていくということは今のところありません。親父の想い入れが強過ぎるんでしょうね(苦笑)。

――チョコチップさんにとって「愛車」はどのような存在ですか?

「なくてはならない相棒」みたいな感じですね。息子が赤ちゃんの頃から乗ってきたクルマですし、41年分の思い出がいっぱい詰まっていますから。私にとって、もはやこのハチロクの存在そのものが1冊のアルバムみたいなものですね。

■オーナープロフィール

・HN:チョコチップさん
・年齢:60歳
・職業:会社員
・愛車:トヨタ カローラレビン GT APEX(AE86型改)
・年式:1985年式
・トランスミッション:5速MT

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