「スピード」譲りの技術を全投入。限定車スーパースポーツの走りを再現した量産最強モデル
英国のベントレーモーターズは2026年1月29日、同社のグランドツアラーであるコンチネンタルシリーズに、新たなドライバー志向のモデル「コンチネンタルGT S」およびオープントップの「コンチネンタルGTC S」を追加した。限定モデル「スーパースポーツ」から着想を得たという新型Sモデルは、第4世代として史上最速かつ最もパワフルなスペックを誇る。最新のハイブリッドパワートレインと、上位モデルであるGTスピード譲りのシャシー技術を融合させ、徹底してドライバーの走る歓びを追求した一台がついにベールを脱いだ。
【画像16枚】クロームを捨て、闇を纏う。新型「コンチネンタルGT S」の凄みが宿る、漆黒のディテール
W12の残像を消し去る瞬発力。静寂と咆哮が同居する「ウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド」
新型Sモデルのハイライトは、なんといってもその心臓部に搭載されたハイパフォーマンス・ハイブリッド・パワートレインだ。最高出力は680ps、最大トルクは930Nmという驚異的な数値を叩き出し、先代のSモデルと比較して出力で130ps、トルクで160Nmもの大幅な向上を果たした。このスペックは、かつてW12エンジンを搭載していたスピードモデルのパフォーマンス指標さえも、出力、トルク、パフォーマンスのすべてにおいて上回るものである。
その動力性能は「スーパースポーツ」の再来を思わせる鋭さを見せ、0-100km/h加速はわずか3.5秒でこなし、最高速度は306km/hに到達する。アクセルを踏み込めば、4.0L V8クロスプレーンエンジンの鼓動を強調するスポーツエキゾーストが、ドライバーの心を高揚させるサウンドトラックを奏でる。一方で、現代のラグジュアリーカーとして環境性能への配慮も抜かりはない。純電動モードのみでの走行も可能であり、その航続距離は最大80kmにおよぶ。静寂の中での滑るような移動と、内燃機関がもたらす爆発的な加速という二つの顔を、この新型Sモデルは高次元で両立しているのである。
巨体を忘れる魔法のフットワーク。eLSDと48Vシステムが実現した「曲がる快楽」
強大なパワーを路面へ確実に伝達し、意のままのハンドリングを実現するために、シャシーにはこれまで「GTスピード」および「GTマリナー」のみに設定されていた「ベントレー・パフォーマンス・アクティブ・シャシー」が惜しみなく投入された。このシステムには、アクティブ・オールホイール・ドライブ、ツインバルブダンパー、前後左右へのトルクベクタリング、そして48V電源を用いたアクティブ・アンチロールシステム「ベントレー・ダイナミック・ライド」が含まれる。
特筆すべきは、コンチネンタルGT Sとして初めて電子制御リミテッド・スリップ・デフ(eLSD)とオールホイール・ステアリングが採用された点だ。これらを統合制御することで、ベントレー史上最も先進的かつドライバー志向のセッティングが実現した。ESC(横滑り防止装置)の設定も緻密に調整されており、ダイナミックモードではリアアクスルに適度なスリップを許容することで、ドライバーはコーナリング時の車両姿勢を自在にコントロールできる。さらにESCを完全にオフにすれば、スロットル操作のみで挙動を操る、より刺激的なドライビング体験も可能となる。万一リアが流れた際にも確実にコントロールを取り戻せる安心感を備えつつ、ロードからサーキットまで多彩な走行特性を引き出せるのが新型Sモデルの真骨頂である。
闇に溶ける「ブラックライン」。甘さを排し、走りの機能を視覚化したコクピット
視覚的な演出においても、新型Sモデルはそのスポーティな性格を隠そうとはしない。エクステリアには「ブラックライン・スペシフィケーション」が適用され、フロントロワースポイラーやマトリックスグリルがダーク仕上げとなるほか、ベントレーのウイングエンブレムや「BENTLEY」レタリングもブラックで統一され、引き締まった力強い佇まいを演出している。
さらに、ベルーガブラックのドアミラーキャップやサイドシルエクステンション、リアディフューザーが装備され、パフォーマンスの高さを示唆する。ヘッドランプには、従来GTスピード専用であった「プレシジョンデザイン」のディテールが施されたダークティント仕上げのフルLEDマトリックスヘッドランプを採用。リア周りもS仕様としてダークティントのテールランプと、スポーツエキゾースト用のテールパイプフィニッシャーで武装されている。足元には標準でシルバー仕上げの22インチ10スポークホイールが装着されるが、グロスブラックやブライトマシンド加工のオプションも選択可能であり、オーナーの好みに合わせたより力強いスタイルを構築できる。
インテリアもまた、走りを重視するドライバーのための空間として仕立てられている。モデル専用のツートーンカラーの配色に加え、シートにはフルーテッド(縦溝)デザインを採用。ステアリングホイールやギアレバー、シート、ドアインサートといった主要なタッチポイントには、触感に優れるダイナミカテクニカルファブリックを使用し、スポーティかつ洗練された質感を高めた。標準装備のピアノブラック・ヴェニアはエクステリアのブラックテーマと呼応するが、オプションでハイグロス・カーボンファイバーなどを選ぶことも可能である。その他、室内の金属加飾をダークティントクロームで統一する仕様なども用意されており、細部にまで徹底したこだわりが注がれている。
圧倒的なパフォーマンスと最新のテクノロジー、そしてダークで精悍なデザインを纏った新型コンチネンタルGT SおよびGTC S。それは単なるラグジュアリーカーの枠を超え、ドライビングの楽しさを最優先する顧客にとっての決定的な選択肢として、ベントレーのラインアップに新たな彩りを加えることになるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
かつてW12こそがベントレーの象徴であった時代、V8モデルは「鼻先が軽く、最もハンドリングに優れる」という明確な美点を持っていた。W12が去り、ラインアップの電動化が進む今、この新型「S」はその“軽快なドライバーズカー”という系譜を色濃く受け継いでいる。680psという数値は先代のスピードモデルすら凌駕するが、このクルマの真価はスペック競争ではない。兄貴分の新型「スピード」が782psで物理法則をねじ伏せる圧倒的なスタビリティを誇るのに対し、「S」はよりドライバーの感性に寄り添うセッティングだ。静寂のEV走行から一転、アクセルを踏み込めばクロスプレーンV8が奏でる野太い鼓動が五感を刺激する。この「静と動」の劇的なコントラストこそ、現代のグランドツアラーに許された最高の贅沢だろう。サーキットなど行かずとも、いつものワインディングで「巨体が縮む」ような一体感を味わいたい向きには、迷わずこの「S」を推す。
【画像16枚】クロームを捨て、闇を纏う。新型「コンチネンタルGT S」の凄みが宿る、漆黒のディテール


















