
















オーストリアの雪原に現れた「野生のベントレー」
ベントレーモーターズは2026年1月30日、オーストリアのツェル・アム・ゼーで開催された「FATアイスレース」において、新たなコンセプトモデル「ベンテイガ Xコンセプト」を世界初公開した。このモデルは、SUVであるベンテイガのオフロード性能を極限まで高める可能性を探るために開発された実験的な車両である。ベントレーは今回、FATインターナショナルとの長期的なパートナーシップ締結もあわせて発表しており、本コンセプトの公開はその象徴的なスタートとなる。
【画像17枚】ルーフライトに極太タイヤ。機能美で武装した「ベンテイガ Xコンセプト」のディテールをチェック
ラグジュアリーの定義を書き換える。快適と速さの先にある「冒険」への招待状
これまでベントレーは「ベンテイガ」シリーズにおいて、比類なきパフォーマンスとラグジュアリー、そしてオフロード性能という幅広い能力を提示してきた。既存のラインアップにおいて、「ベンテイガ スピード」がダイナミクスと絶対的な速さを追求し、「ベンテイガ エクステンデッド ホイールベース(EWB)」が後席の居住性とウェルビーイングに特化していることはご存知の通り。これに対し、今回登場した「ベンテイガ Xコンセプト」は、ベンテイガが持つポテンシャルの第3の柱である「オフロード体験」に焦点を定め、その能力をさらに引き上げることを目的としている。
このコンセプトモデルは、より強化されたオフロード性能を持つベンテイガに対する市場の反応を喚起し、収集するために開発された。ベース車両にはハイパフォーマンスな「ベンテイガ スピード」が選ばれており、パワートレインには最高出力650psを誇る4.0L V8ツインターボエンジンを搭載し、パーマネント4WDシステムと8速トランスミッションが組み合わされている。
+55mmの車高がもたらす自由。鍛造ホイールと制御技術が織りなす「泥と雪の作法」
「Xコンセプト」の最大の特徴は、劇的に変更されたスタンスとサスペンション設定にある。足元にはスペシャリストであるBrixton社が製造した鍛造1ピースの22インチホイールが装着され、これに扁平率の大きいオフロードタイヤが組み合わされている。
安定性を向上させるためにトレッド幅は120mm拡大され、これに伴いホイールアーチも40mm外側へと張り出したデザインに変更された。さらに、サスペンションのストローク量と最低地上高を確保するため、車高は55mm高められている。これらの変更により、渡河水深は550mm以上、最低地上高は310mm弱に達し、エアサスペンションとベントレーの48V電動アクティブロールコントロールシステム「ベントレーダイナミックライド」の組み合わせによって、悪路でも卓越したコントロール性能を発揮するという。
屋根にはギア、リアにはチタンマフラー。道なき道を往くための「本気の武装」
外観のデザインは機能性を重視して仕上げられている。ルーフには長距離のオフロードアドベンチャーを想定したストレージシステムと4つのスポットライトが装備されており、これらの追加装備を含めた車両の全高は2.49mに達する。今回の展示車両では、その積載能力を示すデモンストレーションとして、ルーフ上に子ども向けの電動ゴーカートが積載された。
リアセクションにはアクラポビッチ製のチタン製スポーツエキゾーストがその存在感を主張し、フロントにはツインの牽引フックが新たに追加されるなど、タフな仕様が随所に見られる。これらは単なる装飾ではなく、本格的なオフロード走行を想定した実用的な装備として機能する。
氷上の熱狂と伝統の融合。自動車文化の守護者「FAT」と共に描く未来図
今回、「ベンテイガ Xコンセプト」が公開されたFATアイスレースは、自動車文化の現在と未来を祝う祭典であり、希少なエキゾチックカーの展示や、スキーヤーを牽引して走行する「スキージョリング」などのユニークなクラスが行われるイベントである。
ベントレーはこのイベントに大規模な出展を行っており、「ベンテイガ Xコンセプト」以外にも、トラビス・パストラーナ仕様のユニークなカラーリングが施された「スーパースポーツ」や、新たに発表された「コンチネンタルGTC S」などが展示された。また、氷上でのダイナミックな走行デビューとして「コンチネンタルGT S」が登場し、フランスのレーシングドライバーであるローラ・ヴィラースがステアリングを握ったほか、ベントレーのヘリテージコレクション責任者であるマイク・セイヤーがドライブする「スピードシックス・コンティニュエーションシリーズ」の「カーゼロ」も走行を披露した。
さらに、スキージョリングイベントでは、自動車文化のアイコンでありブロードキャスターのクリス・ハリスが「ベンテイガ スピード」をドライブし、ノルウェーのフリースタイルスキーヤー、ヘドヴィグ・ヴェッセルを牽引するというパフォーマンスも行われた。
FATインターナショナルは、かつてファッション物流企業としてモータースポーツを支援し、1994年のル・マン24時間レースで総合優勝を果たした歴史を持つブランドである。現在はアパレル展開や、今回のFATアイスレースのようなオフライン体験を通じて人々をつなぐ活動を行っており、F1並みの精度で設計された電動カートを使用する「FATカーティングリーグ」などを通じて、草の根からモータースポーツを変革することを目指している。
ベントレーとFATインターナショナルのパートナーシップは複数年に及ぶものであり、今後は2月末に米国モンタナ州ビッグスカイで開催されるFATアイスレースへの参加や、オーストリアのFATマンケイでの24時間イベントなども予定されている。ベントレーは、この新たなコンセプトモデルとパートナーシップを通じて、ラグジュアリーカーの新たな可能性と、よりプログレッシブなブランド体験を世界中のファンに提供していく構えだ。
【ル・ボラン編集部より】
「ベンテイガEWB」が至高の移動空間を、「スピード」が物理法則への挑戦を担うなら、この「Xコンセプト」はブランドの源流にある“冒険心”の再定義だ。リフトアップされた巨躯にブロックタイヤという出で立ちは、優雅な英国貴族がハンティングジャケットを羽織ったかのような野趣と色気がある。FATアイスレースという遊び心溢れる舞台での発表も、今のベントレーが持つ余裕の表れだろう。電動化前夜の今、V8の鼓動と泥臭さを愛する趣味人に対し、クルーがどのような回答を市販化へ繋げるか、その真価が問われる。
【画像17枚】ルーフライトに極太タイヤ。機能美で武装した「ベンテイガ Xコンセプト」のディテールをチェック




