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【試乗】ロータス・エミーラ 420スポーツ|421psの過激さを包み込む、マルチマチック製ダンパーがもたらす「極上の滑らかさ」《LE VOLANT LAB》

ロータス・エミーラ 420スポーツ
ロータス・エミーラ 420スポーツと大谷達也氏
ロータス・エミーラ 420スポーツ
ロータス・エミーラ 420スポーツ

驚異のシャシー性能に瞠目! ロータス・エミーラ最新モデル試乗

ロータス・エミーラの中で史上最強・最軽量を誇る「420スポーツ」が2026年5月に発表された。2.0Lターボから421psを絞り出し、専用パックで25kgの軽量化と25kgのダウンフォース増強を実現。着脱式ガラスルーフも新設定された。妥協なきエンジニアリングが公道とサーキットでの一体感を生むこの最新モデルを、モータージャーナリストの大谷達也氏が英国ヘセルで試乗した。

【画像21枚】25kgの軽量化を実現! ロータス史上最強の4気筒モデル「エミーラ420スポーツ」のディテールを写真で見る

421psへ増強されたAMG製2.0Lターボと、走りを極める専用パッケージ

ロータスのミドシップスポーツカーであるエミーラに新たなグレードが追加された。その名を420スポーツという。

エミーラに搭載されるエンジンには、メルセデスAMG製4気筒2.0Lターボとトヨタ製V6 3.5Lスーパーチャージャーの2種類があるが、420スポーツに搭載されるのはメルセデスAMG版のほう。パワートレインのハードウェアは既存の4気筒仕様と変わらないものの、「ソフトウェアの最適化」により最高出力を従来の365psもしくは405psから421psへと増強。最大トルクも430Nmもしくは480Nmから500Nmへと強化された(365ps/430Nmはターボ、405ps/480NmはターボSEのスペック)。ギアボックスはターボやターボSEと同じ8段DCTだが、エンジンのパワーアップにより最高速度は300km/hをマーク。0-100km/h加速は3.9秒、0-200km/h加速は12.47秒でクリアする。

エンジン出力の向上に伴って冷却系が強化され、ラジエターに導かれるエアフローは15%も増加。また、フロントブレーキ冷却用ダクトには取り外し可能なパネルが設けられており、これを外すと冷却気の量が10%増えてサーキット走行でのハードなブレーキングにも対応できるようになるという。

また、新たにライトウェイト・ハンドリング・パックが設定されたのもニュースのひとつ。これはチタニウム製エグゾースト(-9kg)、カーボンファイバー・ルーバード・テールゲート(-4.9kg)、鍛造ホイール(-5kg)などを装備することで合計25kgの軽量化を実現。さらに、フロントのチンスポイラーやサイドステップを変更したほか、テールエンドには控えめなリップを追加することで空気抵抗を増やすことなくダウンフォースの量を25kg増やすことに成功した模様。なお、今回の試乗車はいずれもこのライトウェイト・ハンドリング・パック装着車で、タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2(サイズはF:245/35ZR20、R:295/30ZR20)を履いていた。

予想を裏切る完成度。ウルトラハイチューンド・エンジンがもたらす刺激と余裕

ここまでの説明を受けて、私はこんな印象を抱いていた。「つまり、エンジンをちょっとパワーアップして、エアロダイナミクスをいじっただけね。サスペンションも見直されて全高が5mm下がったそうだけれど、乗り心地が悪くなってなければいいんだがなあ」

しかし、420スポーツの実力は、私のそんな予想をはるかに凌ぐものだった。

正直、エンジンのパフォーマンス向上を実感できるのは現行モデルのオーナーくらいではないか。リッターあたり210ps以上を発揮するウルトラハイチューンド・エンジンは過給圧が十分に高まっていない低回転域では反応がやや鈍く、スロットルペダルを踏み込んでからワンテンポ待たないと有効なパワーを発揮してくれない。もっとも、ワインディングロードやサーキットを走っているときであれば、基本的に高負荷な状態が維持されるので、改めてスロットルペダルを踏み直しても素早いレスポンスが得られる。

また、公道を軽く流しているときのような軽負荷の状態でも、車重が1430kg(ライトウェイト・ハンドリング・パック装着車の場合)と軽量なため、一般的な交通の流れを楽々とリードできることはいうまでもなかろう。

過給圧が高まっている状態では、ヒュー、ヒューというタービンのノイズが頻繁に聞こえたが、不思議なことに、これはほとんど気にならなかった。むしろ過給圧の高まりを確認するのに好都合と思えたほど。いっぽう、エンジン自体のサウンドはやや控えめ。率直にいって、特に魅力的な音色ではないけれど、音量がさほど大きくないこともあってこちらもドライバーのやる気を削ぐようなことはない。

シャシーの感触を激変させた「スプールバルブ・ダンパー」の圧倒的ポテンシャル

420スポーツの本当の驚きは、そのサスペンションにある。

これまで私はエミーラ・ターボとエミーラV6 SE(実際にはそれらに相当するファーストエディション)に試乗したことがあるが、どちらも乗り心地はスポーツカーらしく硬めで、ゴツゴツとした印象がなきにしもあらずだった。しかし、420スポーツはまったく違う。サスペンションの動き方がしっとりとしていて、実に滑らか。しかもクルマの動きは常にドッシリと落ち着いているのに、ハンドリングは機敏で正確そのもの。同じエミーラで、ここまでシャシーの感触が大きく異なっていることが不思議に思えたほどだった。

その最大の秘密は、420スポーツに装着されたマルチマチック製スプールバルブ・ダンパーにある。

通常のダンパーは薄い金属板のシムと呼ばれる部品を複数組み合わせて減衰力を発生させるが、安定した性能を発揮させるのが難しいほか、高い周波数域では期待した減衰力を得るのが困難な傾向にある。いっぽう、マルチマチックのスプールバルブ・ダンパーはシムの代わりにオイルを通過させるためのオリフィスとコイルスプリングによって減衰力を生み出す構造を採用。安定した性能を生み出しやすいだけでなく、高い周波数域でも確実に減衰力を発生できるという。私が体験したのも、まさにこれで、マルチマチックのダンパーがエミーラの乗り味を一新したといって間違いない。

エミーラ420スポーツのイギリス国内での価格は、ターボよりも33%ほど高い10万5900ポンドから。日本国内におけるターボの価格は1761万5400円(税込)なので、その33%増しとなると2300万円ほどになる。それでも、その価値は十分にあるように思う。

【SPECIFICATION】LOTUS EMIRA 420 SPORTS
 ロータス・エミーラ 420スポーツ(欧州仕様)

■車両本体価格(英国)=105,900ポンド
■全長×全幅×全高=4413×1895×1230mm
■ホイールベース=2570mm
■トレッド=前:1624mm、後:1610mm
■車両重量=1455kg(ライトウェイト・ハンドリング・パック装着車1430kg)
■エンジン型式/種類=M139/直列4気筒DOHC 16バルブ ターボ
■総排気量=1991cc
■最高出力=421ps(310kW)/6500rpm
■最大トルク=500Nm(50.1kg-m)/5000rpm
■燃料タンク容量=58L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン、後:ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/35ZR20、後:295/30ZR20
■0-100km/h加速=3.9秒
■最高速度=300km/h

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Photo: Lotus Cars, Tatsuya Otani
大谷達也

AUTHOR

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。

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