モータースポーツとオートクチュールの華麗なる融合
フランスで開催されたクルマで美の祭典「シャンティイ アール・エ・エレガンス」で異彩を放ったのが、世界に1台のワンオフモデル「アルピーヌ ラコステ A290 ラリー」だ。過酷なテストを重ねたEVレーシングカーをベースに、フランス伝統のエレガンスと洒脱なユーモアを融合。車内に潜む「290匹のワニ」の仕掛けとは何か。ハイパーカーが居並ぶ会場で高い評価を受けた次世代の美学に迫る。
【画像36枚】鮮烈なレッド内装にプチ・ピケ生地を採用。仏の祭典で輝いた「アルピーヌ ラコステ A290 ラリー」の美しき全貌はこちら
極上のエレガンス空間で放った、ワンオフモデルの強烈な存在感
パリ北郊、歴史遺産シャンティイ城の、ル・ノートルが創り上げた美しき庭園。広大な緑地を「屋外美術館」に見立てる「Chantilly Arts & Elegance Richard Mille(シャンティイ アール・エ・エレガンス リシャール・ミル)」は、世界的な名門コレクターズカーや最先端のコンセプトカー、さらにはオートクチュールと「フレンチ・アール・ド・ヴィーヴル(美しい暮らしの芸術)」を完璧に融合させた、他の自動車展示会とは一線を画す比類なきラグジュアリーの聖地となりつつある。

去る9月13日に開催された今年(2026年)の第8回大会において、強烈な存在感を放ちコンセプトカー部門第2位を獲得したのが、世界に1台のワンオフモデル「Beware of the Crocodile – アルピーヌ ラコステ A290 ラリー」だったことをレポートしよう。最高出力1600psを誇るブガッティなど、ハイパーカー群が居並ぶ極上のエレガンス空間で評価された背景には、リアルなモータースポーツ・エンジニアリングと、フランス伝統のエスプリ(ユーモアとサヴォアフェール)が高次元で結実したストーリーが存在するからだ。
スパルタンな競技車両に注ぎ込まれた、若き才能と洒脱なユーモア
「アルピーヌ ラコステ A290 ラリー」の根幹を支えるのは、単なるショーカーの域を超えた本物の走りだ。ベースとなったのは、アルピーヌがモータースポーツプログラムで実際に過酷な開発テストを重ねていた電動レーシングカー「A290 ラリー」そのもの。一度骨格レベルまでストリップダウンされた車体には、アグレッシブなカスタムボディキットが組み込まれた。
即座に立ち上がる高レスポンスな電動パワートレイン、競技環境に耐えうる専用の電子制御セッティング、強化ブレーキシステム、そしてカーボンファイバー製バンパー。キャビン内も過度な装飾を削ぎ落としたミニマルな表面塗装仕上げとし、ドライバーシートには通気性とホールド性を極限で高める3Dプリント構造のメッシュパッドが採用されている。

アンソニー・ヴィラン氏(右)と、筆者の今井優杏氏(左)
このスパルタンな競技車両にフランス至高のエレガンスと遊び心を注ぎ込んだのが、アルピーヌのデザイン部門を率いるアンソニー・ヴィランである。彼はブランドに未知のフレッシュな感性を注入すべく、あえて若い3名(エクステリア、インテリア、カラー&トリム)のデザイナーに開発の全権を委ねた。