コラム

ドイツより広い日本? メルカトル図法が僕らにかけた「面積の錯覚」と走って感じるニュルのスケール感【木下隆之コラム】

16世紀の大航海時代から続く「メルカトル図法」の弱点

国連総会が、国や地域の大きさをより正確に示す地図の普及を目指す決議案を採択したという。これまで世界地図といえば「メルカトル図法」が定番だった。16世紀、大航海時代の船乗りたちのために考案されたこの図法は、経線と緯線が直角に交わるおかげで方位を正しく保てる。羅針盤を頼りに大海原を渡る者にとっては、なくてはならない道具だったのだ。
だが、この図法には弱点がある。高緯度になるほど、陸地が実際より大きく描かれてしまうのだ。
【画像10枚】アフリカはグリーンランドの14倍? 新しい地図が書き換える世界認識
グリーンランドとアフリカ大陸が地図上ではほぼ同じ大きさに見える。だが、実際のアフリカはグリーンランドの14倍もの面積を持つという。500年近くこの地図を見続けてきた僕らの頭の中には、知らぬ間に歪んだ世界の縮尺が、当たり前のように刷り込まれていたことになる。

面積の歪みを正す新提案「イコールアース図法」

新しく提案された「イコールアース図法」は、そうした歪みを正し、各地域の実際の面積比をそのまま映し出す図法だ。見た目の自然さを保ちながら、面積の正確さも両立させているという。地図が変われば、僕らの世界認識も、案外あっさり書き換わっていくのかもしれない。法的な拘束力はないというが、それでもニュースになるくらいには、僕らの地図に対する思い込みは根深いということなのだろう。

「極東の小さな島国」という長年の思い込みと実際の国土

そういえば、僕自身にも似たような思い込みがあった。「日本は極東の小さな島国」――そう教わって育ってきたし、疑ったこともなかった。こんな小さな国なのに、世界と伍して戦ってきた。経済的にも政治的にも先進国のひとつに名を連ねてこられたのは、「極東の小さな島国」の反骨精神がベースにあるからだと思い込んできたのだ。だが、実際にはそれほど狭くはない。世界197カ国のなかでは、61番目の国土の広さだという。ちなみに、人口も世界で11番目だ。なかなかどうして、大きな国だったのだ。

ニュルブルクリンクを擁するドイツと日本のスケール感の違い

日本の国土面積は約37万8000平方km。あのニュルブルクリンクを擁するドイツは約35万7000平方kmだ。数字だけ見れば、日本の方が確かに広い。ただ、道幅も直線の長さも、体感としてはドイツの方がずっとスケールが大きく感じられる。火山列島である日本は起伏が多いから、生活圏は狭い。だが、ドイツは平坦な土地が多いこともあり、広々としているからだ。
それは、走った距離やコーナーの数がそう錯覚させていただけで、国そのものの広さとは、また別の話だったらしい。だが、メルカトル図法がその錯覚を正しいと思い込ませていた。
今度ニュルブルクリンクを走るときは、その北コース20.8kmという長さだけでなく、それを擁する国そのものの広さも含めて、あらためて味わってみたいと思う。
【画像10枚】アフリカはグリーンランドの14倍? 新しい地図が書き換える世界認識

photo=木下隆之/T.Kinoshita
木下隆之

AUTHOR

1982年に全日本学生自動車王者に輝いた。出版社で編集部所属、独立してレーシングドライバーとして活動を開始してから40年となる。日産、ホンダ、三菱、トヨタとレーシングドライバー契約。レーシングカーはもちろんのこと、スカイラインGT-R、ホンダ・レジェンド、三菱ランサーエボリューション、レクサスLFAなどの開発に従事。国内外のトップカテゴリーで数多くのチャンピオンを獲得。スーパー耐久シリーズでは最多勝記録を更新中。ニュルブルクリンク日本人最多出場、日本人最高位記録保持。GTアジア選手権2連覇等、海外に活動の場を広げて活躍中。2023年からはトーヨータイヤと「プロクセスアンバサター」契約し、Team TOYOTIRESのドライバーとしてニュルブルクリンクに参戦を開始している。一方で、執筆活動も旺盛で、11本のコラムを連載中。「豊田章男の人間力」「ジェイズや奴ら」等を上梓。トヨタガズーレーシングアドバイザー、レクサスブランドアドバイザー、BMWスタディ・スポーティングディレクターを経験。数々の企業案件に参画してきた。サントメ・プリンシペ民主共和国・補佐官/トウキョウファーム経営戦略アドバイザー/日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/日本自動車ジャーナリスト協会会員/株式会社木下隆之事務所・代表

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