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【海外試乗】EVでもAMGの魂は不滅だった。1169psの新型メルセデスAMG「GT 4ドアクーペ」、V8サウンド演出と2.5トンを忘れさせる走りが生む“内燃機関超え”の快感

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ
メルセデスAMG GT 4ドアクーペ

1169psを誇る約2.5トンの巨体がサーキットで舞う。快適なGTから本格レーシングマシンへと豹変する新世代EVの実力

寒空のドイツから約3時間のフライトで、スペイン南部のマラガへと降り立った。メルセデスAMGが放つ最新の電動ハイパフォーマンスモデル「AMG GT 4ドアクーペ」のステアリングを握るためだ。ヨーロッパの自動車文化において、AMGという名前は単なる高性能モデルのブランドではない。日常的な快適性と、ドライバーを高揚させるパフォーマンスを両立させる存在として、長年独自の地位を築いてきた。

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同時に、アメリカ市場におけるプレゼンスも高い。2026年5月20日に同社がメルセデスAMG「GT 4ドアクーペ」のワールドプレミアの舞台に選んだのは、米国ロサンゼルスの6thストリート・ブリッジだった。橋をドイツのアウトバーンに見立てるという、いかにもAMGらしい大胆な演出だった。

果たして、ヨーロッパの自動車文化によって成熟し、アメリカ市場が育んだハイパフォーマンス・モデルの哲学が、電動化によってどう進化したのか。スペインのワインディングロードからアスカリ・サーキットまで走らせ、その実力を確かめることにした。

800Vの新基盤「AMG.EA」と3基の薄型モーターで最高出力1169psを達成

新型「GT 4ドアクーペ」の技術的な基盤となるのは、AMGが独自に開発した800Vアーキテクチャー「AMG.EA」だ。その技術的な先駆けとなったのが、2025年にイタリアのナルド高速周回路で25もの長距離記録を樹立した「コンセプトAMG GT XX」である。同車は7日間と13時間で4万km以上を走破し、電気自動車の持久性能に新たな基準を打ち立てた。

新型「GT 4ドアクーペ」では、その技術が量産モデルへと引き継がれている。パワートレインには、リアに2基、フロントに1基、合計3基のアキシャルフラックスモーター(軸方向磁束モーター)を採用した。

一般的な電気モーターでは磁束が回転軸に対して垂直に流れるのに対し、アキシャルフラックスモーターでは回転軸と平行に流れる。ローターとステーターを薄い円盤状に配置する構造によって、モーターを非常にコンパクトにできるのが特徴だ。限られたスペースのなかで高い出力とトルクを実現できるため、高性能車には理想的な技術といえる。

システム最高出力は「GT 55」が600kW(816ps)、最上級の「GT 63」では860kW(1169ps)に達する。さらに注目したいのは、瞬間的な最高出力だけではない。「GT 63」の連続出力は530kW(721ps)に達し、高負荷が続く状況でも高いパフォーマンスを維持できるよう設計されている。

わずか10分で約460km分の充電が可能。独自の油冷バッテリーと最大600kWの超急速充電

高性能EVにおいて、最高出力の数字だけを競う時代は終わりつつある。重要なのは、そのパワーを何度でも、そしてどれだけ長く引き出せるかだ。AMGが新型モデルで重視したのも、まさにこの点である。

そのために開発されたのが、独自の「AMG High Performance Electric Battery」だ。2660本の円筒形セルを採用し、正極にはニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムを組み合わせたNCMA系材料、負極にはシリコンを含む材料を使用する。セル単体で298Wh/kgを超える高いエネルギー密度を実現している。

さらに興味深いのは冷却方式だ。各セルを電気絶縁性の特殊な冷却オイルで直接冷却することで、バッテリー全体の温度を均一に保つ。高負荷時の発熱を効率よく抑え、連続的な加速や回生によっても性能が低下しにくい仕組みである。

もちろん、いくら走りが楽しいEVでも、充電に長い時間がかかるようでは長距離移動の魅力は半減してしまう。その点、新型GT 4ドアクーペは最大600kWの急速充電に対応する。理想的な条件が整えば、わずか10分間で約460km分(WLTP基準)の航続距離を充電でき、バッテリー残量10%から80%までの充電時間も約11分とされている。使用可能容量は106kWhだ。

600kWという充電能力を実際に引き出せる充電設備は、まだ限られている。とはいえ、欧州でも急速充電インフラの整備が進むなか、こうした性能は今後の長距離移動において大きな意味を持つだろう。

床下の可動エアロまで統合制御。アファルターバッハが磨き上げた空力とボディ設計

AMGが独自に開発したのは、パワートレインやバッテリーだけではない。ボディもアファルターバッハで新たに設計されたもので、開発においては空力性能とスポーツ性能が重視された。

フロントスプリッターやエアパネル、サイドスカートに加え、リアにはアクティブディフューザーを採用。さらに、床下には空力特性を最適化する可動式のエアロパーツが組み込まれている。これらを統合制御する「AEROKINETICS」によって、走行状況に応じてダウンフォースと空気抵抗のバランスを調整する。

単に最高速度を追求するのではなく、高速走行時の安定性とコーナリング性能まで考慮した設計だ。

まずはスペインのワインディングロードへ。816psの「GT 55」が見せた後輪操舵の魔法

さて、いよいよステアリングを握ってみよう。

運転席に収まると、まずドライビングポジションの良さに感心する。ディスプレイはドライバー側に向けられ、操作系も運転に集中できるよう配置されている。センターコンソール前方にはスマートフォン2台分のワイヤレス充電スペースがあり、その手前には3つのダイヤル式コントローラーが並ぶ。これらは後ほどサーキットで試すことにしよう。

今回、最初に試乗したのは最高出力600kW(816ps)の「GT 55」だ。ホテルからアスカリ・サーキットへ向かう道には、スペイン南部らしい起伏のあるワインディングロードが続いていた。

全長5094mm、車両重量2460kgという数字だけを見れば、俊敏なスポーツカーとは思えないかもしれない。しかし、実際に走り出すと、その大きさや重さをほとんど意識させない。

その理由のひとつが、後輪操舵システムだ。80km/h以下では後輪が前輪と逆方向に最大6度まで操舵されるため、まるでホイールベースが短くなったかのように軽快に向きを変える。一方、80km/hを超えると後輪は前輪と同じ方向に操舵され、高速走行時の安定性を高める。

迫真のV8サウンドと9速仮想シフト!「AMGFORCE S+」がもたらす内燃機関さながらの快感

まずはドライブモードを「Comfort」に設定して走り出した。ここで印象的だったのが、標準装備されるエアサスペンション「AMG ACTIVE RIDE CONTROL」の働きだ。

3段階に調整できるエアスプリングとセミアクティブ式ロールスタビライゼーションを組み合わせることで、快適性とスポーツ性能を高い次元で両立している。各サスペンションを油圧で連結し、ロール剛性を状況に応じて可変制御する仕組みだ。

スペインの一般道には、舗装状態が必ずしも均一ではない区間もある。しかし、そうした路面の凹凸をしなやかに吸収しながら、コーナリングでは車体の傾きを効果的に抑え込む。快適な乗り心地を保ちながら、正確なハンドリングを実現している点が素晴らしい。

ドライブモードを「Sport」に切り替えると、アクセルレスポンスは鋭くなり、ステアリングの反応もよりダイレクトになる。サスペンションも引き締まるが、乗り心地が極端に硬くなるわけではない。四輪駆動システム「AMG Performance 4MATIC+」による優れたトラクションも相まって、コーナーをかなりのペースで駆け抜けても、クルマの挙動は驚くほど自然で扱いやすい。

そして、さらに刺激的な走りを楽しみたいときには「AMGFORCE S+」という選択肢がある。

電気自動車でありながら、ここでは「AMG GT R」をベースにしたV8エンジンのサウンドが再現される。単にスピーカーからエンジン音を流すだけではない。仮想的な変速操作に合わせて駆動力を一瞬途切れさせることで、9速トランスミッションを搭載した高性能エンジン車のような感覚まで演出する。

もちろん、これは実際にV8エンジンを搭載しているわけではない。しかし、AMGが長年培ってきたサウンドとドライビングの一体感を、電動モデルで再現しようという意欲は伝わってくる。

そのほか、路面状況に応じた「Slippery」や、効率を重視する「Eco」、各種設定を個別に調整できる「Individual」なども用意される。Ecoモードでは、走行状況に応じてフロントモーターを切り離し、後輪駆動で走行することで電力消費を抑える。

アスカリ・サーキットまでの一般道を走っただけでも、新型「GT 4ドアクーペ」が日常使用を十分に考慮したモデルであることがよく分かった。乗り心地は非常に快適で、長距離ドライブにも適している。しかも、アクセルを踏み込めば、いつでも圧倒的なパワーを引き出せる余裕がある。追い越し加速のたびに、思わず笑みがこぼれてしまう。

ドイツのアウトバーンを長距離移動するような使い方を想像しても、このクルマの快適性と動力性能は大きな魅力になるだろう。

舞台はアスカリ・サーキットへ。1169psの「GT 63」を自在に手懐ける3つのダイヤル

ひとしきり一般道での実用性を確かめた後は、いよいよ、お楽しみのアスカリ・サーキットでの走行に移る。

ここでは最上級モデルの「GT 63」に乗り換え、サーキット走行を体験した。「GT 55」でも十分すぎるほどのパワーを備えているが、「GT 63」は最高出力860kW(1169ps)という別次元の性能を持つ。

ここで積極的に試すよう勧められたのが、センターコンソールに配置された3つのダイヤルからなる「AMG RACE ENGINEER Control Unit」だ。

最上部の「Response Control」は、アクセル操作に対する電気モーターの応答特性を調整する。中央の「Agility Control」は、車両の垂直軸まわりの挙動、つまりコーナリング時の旋回特性を変化させるものだ。軽いアンダーステアからニュートラルなハンドリング、さらにはコントロールされたオーバーステアまで、走りの性格を細かく調整できる。

そして、3つ目の「Traction Control」は、トラクションコントロールの介入度を9段階で調整するためのものだ。

まずはコースを覚えるため、慎重にペースを上げていく。ところが、コーナーを立ち上がり、長いストレートに向けてアクセルを踏み込んだ瞬間、その凄まじい加速力を思い知らされる。

基本的なスポーツ系の設定でも、「GT 63」は驚くほど速い。それでいて、車体の動きは非常に安定しており、ドライバーが不安を感じる場面は少ない。

そこでResponseとAgilityの設定を高めてみると、クルマのキャラクターはさらに変化する。コーナリングではリアがわずかに動き始め、より積極的にクルマを操る楽しさが増してくる。

最後に試したのが「RACE」モードだ。ESPをオフにすると、いよいよドライバー自身の技量が問われる。しかし、9段階の調整が可能なトラクションコントロールをはじめ、各種制御を自分の好みに合わせて設定できるため、挙動を細かくコントロールすることが可能だ。

こうした調整機能は、単なる高性能の誇示ではない。ドライバーの技量や好みに合わせて、クルマとの対話を深めるためのものだと感じた。

走行を重ねるほどに楽しさが増し、気がつけばサーキットでの時間はあっという間に過ぎていた。

さらに長いストレートでは、ブースト機能も試した。「GT 63」では最大110kWの追加出力を63秒間引き出すことができる。「GT 55」でも最大50kWの追加出力を55秒間利用できる。モデル名とブースト時間を連動させた設定も、AMGらしい遊び心といえるだろう。

約2.5トンの重量を感じさせない俊敏性。電動化時代も揺るがないAMGの技術力と情熱

それにしても、新型メルセデスAMG「GT 4ドアクーペ」が持つ走行性能の幅広さには驚かされた。

一般道では極めて快適なグランドツアラーとして振る舞いながら、サーキットに持ち込めば本格的なスポーツマシンへと一変する。その振る舞いの幅は、従来の高性能エンジン車と比較しても非常に興味深い。

そして、私が最も感銘を受けたのは、最高出力1169psという圧倒的なパワーそのものではない。

全長5mを超え、車両重量が約2.5トンにも達するクルマが、これほど俊敏かつ正確にサーキットを駆け抜けられるという事実だ。限界領域に近づいても挙動は驚くほど予測しやすく、ドライバーに大きな安心感を与えてくれる。

電動化によって、クルマの高性能化は新たな段階に入った。しかし、出力や加速性能の数字を追い求めるだけでは、本当に優れたスポーツカーにはならない。重要なのは、そのパワーをどれだけ自然に、そして意のままに操れるかということだ。

長年にわたり数え切れないほどのクルマを試乗してきた私でさえ、今回の体験には思わず感嘆せずにはいられなかった。アファルターバッハのエンジニアたちは、電動化という大きな変革のなかで、AMGらしいドライビングの楽しさを新しい形で実現してみせた。

新型メルセデスAMG「GT 4ドアクーペ」は、電動化の時代になっても、AMGが追い求めるパフォーマンスと情熱が失われていないことを証明する一台である。

【画像28枚】サーキットを舞う大迫力の姿から専用コクピットまで。1169psの新型メルセデスAMG「GT 4ドアクーペ」の全貌を見る」

Photo: Mercedes-Benz AG

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