ここに登場するのは、かつて多くの人々を魅了したフレンチスポーツカーの元祖アルピーヌA110を、現代の技術で復活させた新生A110。そして、RRを採用し小回りを利かせてキビキビ走るフレンチコンパクトのトゥインゴ。生まれや育ちは両極端な2台だが、いずれも走りが楽しいという点だけは共通している!
一番高いA110と、一番安いトゥインゴ
よほどの低血圧持ちでもなければ、ドライビングのマジックアワーは気力も体力も充実した朝だろう。アルピーヌA110も、朝がサイコーだ。サーキットランも得意なピュアスポーツカーなのに、この車は起き抜けに乗っても心地よい。レーシングライクに肩を怒らせたところはまったくない。乗り心地はもちろん固めだが、ボディの軽さを実感する〝軽い固さ〟だ。96%アルミ製のボディにより、車重は試乗車のピュアで1110kg。718ケイマンPDKより280kg軽い。サスペンションはよく動き、突き上げのカドも丸いから、乗り心地に不愉快さはない。ピュアスポーツカーなのに、メガーヌ・ルノースポールよりコンフォート系だ。
ルノー/日産アライアンスの1.8L 4気筒ターボは252ps。これに電光石火シフトのゲトラグ製7段DCTが加勢して、速いのは言うまでもない。ハンドル右奥のドライブモードボタンを押すと”スポーツ”と”トラック”が選べる。スポーツ以上では、車内外でバックファイアサウンドが高まる。さらにトラックモードに上げると、バーチャルメーターの景色が一変し、エンジンと変速機が最速モードになる。フル加速すれば、目からウロコである。
だが、A110で印象深いのは中間加速だ。デフォルトのノーマルモードでゆっくり流していても、ちょっとした加速が俊敏で、目覚ましい。軽さを武器にした速さが楽しく、気持ちいいのである。
もうひとつA110で特筆したいのは、直進安定性のすばらしさだ。ボトムカットした小径ハンドルに軽く手を添えて高速巡航していると、いわゆるスタビリティのよさに感心する。これほどリラックスしてクルージングできるクルマも珍しい。手放し自動運転機構なんて、いらないよ。昔、中嶋悟が言っていた。「直進がイイ車は、曲がりもイイんだよ。直進てのはさ、細かく曲がることの連続だからね」。後半は禅問答みたいで、ちょっとなに言ってるかわからなかったが、そういうことらしい。