最新のポルシェ911、タイプ992のバリエーションに定番のタルガが追加された。基本デザインは先代を継承したスタイリッシュなもので、ルーフシステムは改良によりシーズンを問わずに快適なオープンエアが楽しめるという。ドイツ本国で試乗した新型911タルガ4Sの第一報をお届けしよう。
車両重量の増加はクーペに対しわずか+35kg
昨年から市場に投入されているポルシェ911のタイプ992にクーペ、カブリオレに続く3番目のバリエーションとなる「タルガ」が追加された。ワイドで強固なロールバーを持ったオープンモデルは1967年に発売され、そのセーフティコンセプトは、これまでに多くのメーカーに影響を与えている。
ところで「タルガ」とはタルガ・フローリオで開催されたロードレースが由来とされるが、実は「タルガ」はイタリア語で「盾」と言う意味もあったので採用が決まったと言われているのだ。
歴代タルガのルーフ構造には、これまでいくつかの形態があるのだが、現在の電動型ルーフシステムは2014年のデトロイト・ショーで初公開されたものである。
このシステムは重量12.9kgのリアウインドーユニットが後退し、長いアームの付いたキャンバス製トップがZ字型に畳まれる。そしてタルガ・バーの上を通過し、エンジン上部のスペースに収まる。最後にリアユニットは元の位置に収まるわけだが、この動きはバンパーのリアエンドより50cm出っ張るためにパークトロニックセンサーが障害物を監視し、コントロールしているという。こうした複雑なルーフ構造を持つがゆえに気になるのは車両重量の増加だ。しかし、今回試乗したタルガ4Sの重量はクーペ4Sよりもわずか35kg増加の1675kgにとどまっている。
なお、タルガ4Sのパワートレインは最高出力450ps、最大トルク530Nmを発生する3Lフラット6ツインターボエンジンと8速PDKを組み合わせる。カタログ上のデータによると、0→100km/h加速は3.6秒、トップスピードは304km/h(クーペは306km/h)と間違いなくハイエンドスポーツカーのパフォーマンスを持つ。実際にアウトバーンへの進入路でも胸の空くような加速感、そして200km/hプラスでの優れたスタビリティはPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)を搭載する4Sならではだ。ちなみにタルガ4と4Sが搭載する4WDシステムはクラッチとデフユニットが水冷式になったほか、制御の改善が行われ、耐久性も向上している。
一方で、カントリーロードでのオープンドライブは、頭上に遮るルーフがないだけでも十分にフレッシュエアを堪能することができる。特に後方に装備されるウインドーバイザーのおかげでキャビンに走行風が巻き込むことはない。設計上は50km/h~145km/hまで効果的に乱流を防ぐという。不思議なことにサイドウィンドーを下げていた方が静かだった。
新型タルガは、改良された4WDシステムによるダイナミック性能の向上はもちろん、後方警告センサーが加わったルーフシステム、さらにフロントエンドを自動的に引き上げ縁石ダメージからスポイラーを守るスマートリフトの採用など、実用面も進化していた。
ポルシェ911の伝説、言い伝えはこのタルガでも反映されていた。すなわち最新のタルガは最良のタルガだったのである。
日本では、すでに予約がスタートしており、価格はタルガ4が1729万円、タルガ4Sは2060万円と911カレラ4Sカブリオレと同価格なのだ。
古典的なキャンバス・オープンモデルにするか、あるいはカブリオレとクーペの間に位置するハイブリッド・ルーフを選択するか、大いに迷うところではある。