ライバルのX1と同じく、2代目となったGLAはSUVらしいディメンションを採用。先代から引き続き、一見すると真っ向勝負の姿勢を崩していない印象がある。しかし、いまやそれぞれに別のキャラクターを持つ派生モデルが追加。その結果、両者の本質には微妙、あるいは絶妙ともいえるズレが生じはじめていた。
クロスオーバー的性格をキープしているGLA
SUVとして見れば、初代はどちらも全高を抑えた“変化球”なディメンションを採用、個性的なスタイリングを売りとしていた。日本では、それが立体駐車場への対応力の高さという副産物も生み出していたわけだが、エンジンを横置きするFFプラットフォームをベースとした現行X1は直球派へと転身。FRベースだった先代と比較すると、外観のアクの強さと引き替えにSUVらしい使い勝手の良さを獲得している。
そんなX1の直接的ライバルとなるGLAも、この新型では全高が1600mmをオーバー。数値だけ見ると、こちらも直球派へ宗旨変えしたように感じられる。
しかし、新しいGLAとX1を直接比較すると、前者はクーペ的なスタイリッシュ路線を捨てていないことが明らかになる。BMWらしさを主張するディテールを除けばSUVの王道的パッケージングとなるX1に対し、新型GLAはグラスエリアをコンパクトにまとめ、ボディ全体でスポーティネスを演出。「ひと味違う選択」という文脈で判断するなら、外観上はGLAの方がわかりやすい。
これにはGLAの場合でGLB、X1にはX2というキャラクター違いの兄弟モデルが存在することが影響している。3列シートを擁し、SUVらしいスクエアなシルエットを持つGLBが新設定されたことからGLAはクーペ風路線を先代から継承。X1はその逆で、クーペ風SUVのX2が用意された結果、王道的コンパクトSUVへの転身が図られたというわけだ。つまり、車名でこそライバル関係が維持されているものの、もはや両者の立ち位置は2代目になって異なるものとなったわけだ。
そんな違いは、室内の空間作りにも顕れている。前後席の広さは足元に限るとおおむね互角。いずれも後席にはロングスライド機構が備わりGLAで135mm、X1では125mmのスライド量が与えられているが(数値は実測値)、実際の広さはX1の方が若干ながら勝る。とはいえ、その差はわずかなものでGLAでも不足はない。だが、ボディ形状から察せられる通り、肩から上の空間はX1の方が格段に広く、後席の頭上についてはサンルーフを装備した試乗車でもGLAより余裕があった。
とはいえ、身長178cmの筆者が試した限りでいえばGLAでも決して不満はない。前席で常識的なドライビングポジションを取る限り、それよりも高い着座位置となる後席の居心地は上々。先代に見られた閉塞感は払拭され、前席でもアップライトな姿勢が許容されたことで車両感覚がつかみやすくなった。つまりクーペの風味は継承しつつ、SUVとしても十分に通用する空間を両立しているわけだ。X1に対して80 〜130L小さい荷室容量は減点対象だが、クロスオーバーモデルだと思えば425〜1420Lの容量に不満を抱く人はいないだろう。
その走りもメルセデスとBMWという、ブランドの違いが明確に顕れている。いまのところGLAは2Lディーゼルのモノグレードということで試乗車はX1もディーゼルで揃えたのだが、プレミアム度はいずれもハイレベル。強固な骨格の存在を意識させるGLA はサイズ以上の高級感を、X1ではそれより良い意味での軽さが満喫できる。設計年次が新しいぶん、パート別に比較していくと絶対値としての乗り心地、静粛性などはGLAがX1を凌いでいる印象だが、デビュー時と比較すれば日常域のライド感を筆頭にX1も進化。SUVだと思うと操縦性はGLA級の安定感が欲しいものの、あえてBMWを選ぶ人なら欠点とは感じない類のはず。同等なグレード同士の比較では、まさにがっぷり四つの状態というのが新型GLAとX1の現状になる。