メルセデス史上最高峰の安全性と快適性を獲得したモデルとして、歴史に名を刻むW/V222 Sクラス。既報の通り、新型が出るとわかっていながらもこのSクラスを推すのには、それだけの価値があるということだ。熟成を極めたシャシーとともに、極上のドライビングを体験するならいましかない。
どれを選ぼうと揺らぐことのない魅力
「底しれぬ包容力。」
メルセデス・ベンツのSクラスの魅力をひと言で表現するとすれば、そんな言葉に尽きると思う。ハンドルを握って走り出せば、大柄なサルーンは抜群の安定性とともにドライバーの意思に忠実に操縦していけるし、路面のうねりから受けるはずの外乱は、何事もなかったかのようにいなされて、乗員に不安な要素を与えることはない。もちろん、後席に大切なゲストを乗せるショーファーカーとして、居心地の良さも抜群だ。グローブボックスには調香師がプロデュースした香水を忍ばせて、時おり香しいアロマを漂わせたりする高級車に相応しい空間演出も現行型のSクラスが最初だった。
中でも、Sクラスの凄さを思い知らされたのは、「S400d」と呼ばれるディーゼルモデルに試乗した時のこと。ディーゼル特有のブルつきや雑味など、ネガな要素を一切排除しただけでなく、タイヤが分厚いトルクをどこまでも滑らかに、そして濃密に、路面に伝えて走っていく。搭載されるパワーユニットがガソリンエンジンでも、ハイブリッドでも、SクラスはSクラス以上でもそれ以下でもない。過度な主張は無意味と言わんばかりに、どれを選ぼうがSクラスならではの懐の深い走りと包容力は揺らぐことを知らない。
藤島知子/T.Fujishima