背景にあるのは自動運転時代への危機感か
8月31日、アウディは運転中のドライバーの健康状態を把握することで安全性を高めることを目的とした新しい事業分野「オートモーティブヘルス」の開発を進めるため、ベルリンを拠点とする「フライングヘルス インキュベーター」の設立に参画することを発表した。フライングヘルス インキュベーターはヘルスケア分野で革新的デジタル技術を開発するベンチャー企業のサポートを目的としており、アウディはこのセンターを通して、ベンチャー企業やヘルスケア産業と連携し、デジタルヘルス市場において新しいビジネスモデルの策定を目指しているという。
このパートナーシップでは、健康と安全のモニタリングに関する新しいアプローチを発掘し、アウディはそれらを現在進行中の「Audi Fit Driver」プロジェクトに応用する計画だ。すでにテスト車両も製作されており、その車両では、腕時計型のウェアラブルデバイスによってドライバーの心拍数や体温などを、さらに車両側に装着されたセンサーで運転スタイルやブレーキの頻度、天候、交通状況などのさまざまなデータを収集し、それらを分析することによって車両システムがドライバーのストレスや疲労度を診断。その結果に基づき、自動的にエアコンの温度や室内照明を調整したり、シートマッサージ機能を作動させるなど、インフォテインメントシステムと統合制御することを可能にしている。将来的には、ドライバーの危険な状態を発見した場合、自動的に緊急ブレーキを発動することも検討されているそうだ。
自動運転技術が導入されてしまえば意味を失ってしまうものが少なくないことを考えると、Audi Fit Driverプロジェクトによる新技術はかなり早い時期に実用化されるものと考えられる。もしかすると10月1日開催のパリ・モーターショーで、そのうちのいくつかは紹介されるかもしれない。