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映画『ハリー・ポッター』で一躍有名になったこの面構え。3代目アングリアの商用モデル、1966年式『フォード・アングリア・バン』

英国車に強いケントスピードがフルレストアを行った1966年式フォード・アングリア・バンは、かつてフォードの正規販売を手がけていたニューエンパイヤモーターが輸入した希少なディーラー車。商用モデルらしく実用性に長けたクルマだが、ステキな内外装にも心惹かれてしまった。

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英国1960年代流、はたらくクルマのススメ

映画『ハリー・ポッター』で一躍有名になったこの面構え。そう1959年に登場した、3代目フォード・アングリアだ。けれどご覧のとおり、顔立ちとともに印象的なクリフカットスタイルの2ドアサルーンボディではない。荷室をたっぷりと確保した、商用バンなのである。

どんなクルマでも、乗用のステーションワゴンを目の前にすると、ついつい豊かな暮らし、みたいなものを想像してしまう。レジャーのためのアイテムをいっぱい詰め込んで、お気に入りの場所へ家族とお出かけ……。元来単純なので、そんなステレオタイプなシチュエーションがアタマのなかでぐるぐるするのだ。ただ、こちらのアングリア・バンの大きな荷室は、お仕事のためにある。より質実剛健。そして、積載効率最優先のつくりだ。

それなのにどこかキュートで、飾り気のなさにグッと惹かれてしまった。リアサイドに窓がないパネルバンがスタンダードな仕様だが、取材車両は2分割のウインドーが左右にレイアウトされているためワゴンっぽさも感じられ、より身近に思えたのかもしれない。ちなみにアングリアには乗用のエステートも用意されていた。じゃあほとんど取材車両と仕様が同じかといえば否。こちらの商用バンボディは、いわゆるハイルーフ仕様で、加えて荷物の出し入れがしやすそうな観音開きのリアゲートを持ったデザインが与えられているのである。つまり、ラクラク積めて、いっぱい積めるという、この手のはたらくクルマの大事なところをきっちり押さえているのだ。エステートが一般的な縦開きのテールゲートを持つことをみても、両者がきちんとすみ分けされているのだなと納得した。

とはいえ、当時先鋭的だったエクステリアデザインをもとにコマーシャルバンに仕立てられたその姿には、実用一辺倒の味気なさは感じられない。『Hotpoint SPARES &SERVICE』という当時の英国家電メーカー仕様のミニカーをもとにカラーリングを再現したボディペイントや、キャビンのボリュームを小さく見せるルーフの塗り分けなど、フルレストアを手がけたケントスピードによる趣味のいい仕立て方も、クルマの愛らしさや類い希な個性を引き立たせ、さらに爽やかさもプラスしている。だから、豊かな生活にフィットするクルマではなく、きっと日常を鮮やかに彩ってくれるパートナーになってくれるに違いない。なんて考えながら、”こんなクルマを生活のなかに取り込めたら……”と夢見てしまうほど、アングリア・バンは魅力的だった。

ケントスピード公式サイト

PHOTO:山本佳吾 SPECIAL THANKS:ケントスピード カー・マガジン488号より転載

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