国内試乗

独3大ブランドのラグジャリースポーツに宿るDNAを鑑定『メルセデスAMG SL43』編【メルセデスベンツ×BMW×アウディ2023】

ここで登場する3台はラグジャリーとスポーティを融合した各ブランドを代表するトップモデル。エンジンもボディタイプも3車3様だが、各ブランドの最先端技術が惜しみなく投入され、あらゆる面で濃度の高いモデルに仕上がっている。早速、3モデルの走りっぷりを比較してみよう。

フルモデルチェンジで若々しくスポーティに

メルセデスAMG SL43

ここ数年インポートカーで俄然勢いを増しているラグジャリースポーツ。その定義は定かではないが、筆者は“超高性能な走り”と“極上の快適性”を高次元で融合させるジャンルだと捉えている。

一昔前までスポーツカーは、そのステイタスを高めるために性能の高さをストイックに追い求めた。しかし現代では911GT3のようなアスリートカーは別にして、そこにコンマ1秒を削り取ることよりも(とはいえニュルのラップタイムはいまだにステイタスのようだが)、快適性を両立することが特に裕福層たちから重要視されてきた。その要求を満たすジャンルが、”ラグスポ”だと言える。

そんなラグスポの潮流において、この度メルセデスは最上級オープンカーである「SL」をおよそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。これまで明らかに年齢層が高めでラグジー寄りだったキャラクターを、若々しくスポーティに変えてきた。

そのキャラ変に大きく影響したのは、メルセデスワークスであるAMGがこれを完全自社開発したことがまずひとつ。ちなみに新型AMG SLは「SLS AMG」「AMG GT」そして「AMG ONE」に次ぐ、4番目の自社開発モデルとなる。

【写真6枚】2+2シートレイアウトが復活、メルセデスAMG SL43の詳細を写真で見る

そして今回試乗したAMG SL43に限って言えば、そのパワーユニットに2L直列4気筒ターボを選んだことが挙げられる。それは当然環境性能を考慮したエンジンのダウンサイジング化が最たる目的だが、その恩恵としてAMG SL43は、1780kgという車重からは想像できないほど、軽快なフットワークを手に入れた。

そのボディはオープンカーであることを意識させないほど剛性感が高く、20インチタイヤのケース剛性をガッチリ抑え込む。その上で直列4気筒ターボを搭載するノーズの軽さが、ステアリングレスポンスに俊敏さを与えている。

さらにAMG SL43はブレーキのタッチが最高で、減衰力を引き上げてもしなやかさを失わない可変ダンパーの制御と共に、ターンインの姿勢作りが抜群に楽しい。

そしてターンミドルからアウトに掛けては、エンジンが全域でレスポンスする。そのアウトプットは381ps/480Nmと、数字だけを追いかければかなりの迫力。しかし実際にはそのパワーが手の内にあり、アクセルを積極的に踏み込んで行くことができる。

その要因としては、まず前述したシャシー剛性の高さが挙げられる。そしてもうひとつは、F1由来の「エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー」が、レスポンシブな加速を披露する。AMGは今回この2Lエンジンにかなり大きなタービンを搭載したようだが、このシステムは48Vの電源システムを用いて、十分な排圧が得られない低回転域でもモーターがコンプレッサーの過給圧を高く保つ。そして高回転域では、その大型タービンが本来の性能を解き放つから、全域にわたってフラットかつ切れの良い加速が得られるのだ。もちろん絶対的な重量が重たいから、怒濤の加速が欲しいなら4L V8ツインターボ

を搭載するSL55もしくはSL63を選ぶべきだろう。しかしSL43には、このパワー&トルクを使い切ってコーナーを攻める醍醐味がある。そしてAMGのマイスターが「One man-One engine」として仕上げたユニットの精度を、等身大で楽しむことが

できるのだ。

トルコンの代わりに湿式多板クラッチを用いるAMGスピードシフトMCTの制御は時折滑らかさに欠けたが、オーナーのクセを学習できる状況下ならそれも慣らされて行くのかもしれない。2+2となったリアシートには素早く荷物を放り込むことができるし、大型タブレットをそのままセンターコンソールに突き刺したような11.9インチのディスプレイが、遮光のために稼働するのも素敵だ。かくしてAMG SL43は、とびきりフレッシュなラグスポへと生まれ変わったというわけである。

【SPECIFICATION】メルセデスAMG SL43
■全長×全幅×全高=4700×1915×1370mm
■ホイールベース=2700mm
■車両重量=1780kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=381ps(280kW)/6750rpm
■最大トルク=480Nm(48.9kg-m)/3250-5000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=マルチリンク:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40R20:295/35R20
■車両本体価格(税込)=16,480,000円

フォト=郡 大二郎 ルボラン2023年2月号より転載

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