モデルカーズ

実車と同じくあの方の元に納車された逸品!アオシマ製プラモ「初代シーマ」を目力アップで美しく【モデルカーズ】

新時代の到来を告げたビッグカー

アメリカ車の全盛期として1950年代がいつまでも懐かしく語られるのと似たように、日本車が輝いていた時代として、1980年代後半~1990年代初頭、いわゆるバブル経済期が振り返られる機会は少なくない。当時無敵を誇った車種と言えばトヨタのソアラやマークⅡ三兄弟だが、今採り上げられるのは日産の初代シーマであることが多いように見受けられる。

【画像36枚】ほんの少しの改修で完成度がさらに増したシーマと、その制作中画像を見る!

これはもちろん、あの伊藤かずえさんのシーマや、そのレストアの話題があってのことと思われるが、と言っても、時を経て評価が逆転したというわけではなく、当時シーマが圧倒的な人気を誇ったことは、「シーマ現象」という言葉とともに、多くの人が記憶しているはずである。逆に言えば、トヨタの独り勝ち状況の中で日産が放った会心の一撃がシーマであり、それがいかにインパクトのある出来事だったか、ということであろう。

初代シーマは1987年10月の東京モーターショーにて発表され、翌1988年1月に発売された。初代の車名はセドリック・シーマ/グロリア・シーマであり、このことが示すように、Y31型系セドリック/グロリアの派生車種である。セドリック/グロリアの3L車に専用のボディを載せたもので、プラットフォーム(この場合はサスペンションなども含む)は共通であった。

シーマ独自のものとなるボディスタイルは、3ナンバー専用車として豊かさを強調したもの。押し出しの強さより、張りのある曲面の美しさをアピールしたもので、ともすれば複雑なものとなりがちな国産高級車のスタイリングとしては異例のシンプルさが特徴である。インテリアは「くつろぎ」「心地よさ」をテーマにまとめられており、シートなどは専用の形状であったが、ダッシュボードはセドリック/グロリアのそれを一部(具体的にはメータークラスターのひさし部分)改めたものであった。

前述の通り、ドライブトレインは基本的にはセドリック/グロリアと共通だが、大きく異なるのは専用のエンジンとして、V6 3LツインカムターボのVG30DETが搭載されていたことである。当時の日本車では最強となる255psのパワーは圧倒的なものであり、多くのユーザーを魅了した。リアを沈み込ませて加速する姿は語り草で、これはターボ特有のものと思われがちだが、ノンターボのVG30DE(200㎰、こちらはセドリック/グロリアと共通)搭載車でも同様の挙動を見せるとのことだ。

オーナー向けの国産乗用車としては初めてとなる500万円オーバーの車両価格(ターボ車のみ)が話題を呼んだが、3ナンバー車としては異例のヒット車種となったのはご存じのとおりである。発売後の変更は小規模なもので、マイナーチェンジで細部のデザインや装備の変更、グレード追加などがあったのみ。登場から4年に満たない1991年8月には、二代目へとモデルチェンジを行っている。

プラモから実感する、日産ハイソカーの到達点
そんな初代シーマは、ベースとなったY31セドリック/グロリアに続いて、アオシマから1/24スケールでプラモ化された。ここでご覧いただいているのは、そのアオシマ製シーマ(エンジン付き)を、細部に手を入れて制作した作品である。この作例は、自動車模型専門誌「モデルカーズ」246号(2016年)のために作られたものだが、以下、そのとき掲載された解説(作者・吉田氏による)をお読みいただこう。

「さて、プラモデルにおける初代シーマは実車の現役当時にアオシマよりキット化され、その後、エンジン付やエアロ付などの様々なバリエーションに展開され、現在も流通している。そのため比較的よく店頭で見かける印象があるが、考えてみると私は、実際に組むのは今回が初めてである。そのため慎重に仮組みを行ってみたが、キットの構成、部品精度などは現代のキットとさほど変わらず、とても組み易い。

思い起こせば、この初代シーマのキットが発売された当時はモーターライズからディスプレイモデルへの変換期で、各社共に再現度が向上し、今の製品に通じる名キットが誕生した時期だった。中でもタミヤ、フジミ、アオシマのR32 GT-Rのキット化合戦などは、子供心に模型屋で各社のキットを見比べてワクワクした記憶がある。言わば模型界においてもバブル期であったのだ。

話が少々それてしまったが、このアオシマの初代シーマ、ボディ単体で見るとプロポーションは抜群でシーマらしさを上手に表現しているのだが、ヘッドライトリフレクターの再現が省略されており、ヘッドライトを取り付けた途端、生気の失せた雰囲気になってしまう。これでは せっかくの良好なプロポーションもスポイルされてしまう。そこで今回の作例では、ヘッドライトリフレクターを自作し追加した。ヘッドライトの輝き具合ひとつで、見違えるほど全体の雰囲気が変わってくるので模型作りは実に奥深い。

かつて、日本のバブル前後に誕生したこの手の高級車を総称して、「ハイソカー」と呼んでいたが、まさにこの初代シーマは、日産自動車のハイソカー決定版だと私は思う。そして 今思えば、ハイソカーこそが、車がステイタスだった時代の最後の世代だったのではないだろうか? などと、妙に当時に思いを馳せながらの制作も楽しいものである。なお本作例は、初代シーマを今でも、大事に乗ってらっしゃる某女優さんの車両をモチーフに制作したので、ご本人様が欲しい場合は差し上げます。御連絡はモデルカーズ編集部まで(笑)」

※この作例はその後、ご縁があり実際に伊藤かずえさんのもとへ納められた。

作例制作=吉田 優/フォト=服部佳洋 modelcars vol.246より再構成のうえ転載

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