オーストリアの自動車関連大手、AVLの日本法人がブレーキの粉塵を計測する機器を公開
ブレーキダスト(粉塵)でホイールが汚れる。特に欧州車では「当たり前のこと」という認識を持っているユーザーが少なくないだろう。それが大幅に改善される可能性が出てきた。
欧州での次期自動車環境規制「EURO7」に、排ガスに加えてブレーキの粉塵に関する規制が組み込まれるからだ。
当初、EURO7の施行は2025年からとされていたが、各種規制への対応までのリードタイムが短過ぎるといった意見が自動車産業界から少なくなかったため、施行時期が延期された。
現時点では、乗用車と小型商用バンが新車では2026年11月末、また2027年11月末にすべてのくるまに適用。また、大型車ではそれぞれ、2028年5月末と2029年5月末の適用が見込まれている。
そうしたブレーキの粉塵に関する規制では、ブレーキの粉塵をどうやって計測するのだろうか? オーストリアの自動車関連大手、AVLの日本法人がこの度、一部の報道陣向けにブレーキの粉塵を計測する機器を公開した。
神奈川県川崎市内にある同社のテクニカルセンターに入り、各種の計測装置について同社関係者から詳しい説明を受けた。
例えば、動力系の計測装置には日産「サクラ」が設置され、EVに関するドライバビリティ(運転性)についてAVLが自動車メーカー等からの意見を踏まえて独自に開発した専用ソフトウェアを用いた計測を行っていた。
別の部屋に、お目当てのEURO7のブレーキ粉塵規制に対応した計測機器があった。試験方向については、世界技術規則(ゼネラル・テクニカル・レギュレーション:GTR)で規定されており、それに基づいてAVLが独自に開発したシステムだ。
ここでは実車を使うのではなく、ブレーキシステムだけを専用装置に固定し、これをソフトウェアによって制御しながら作動させる仕組みだ。
整流された空気を送り、差動装置の先で粒子状物質(パティキュラー・マター)を検出する。このシステムでは、粒子性物質の質量と数を計測することができる。
ブレーキ作動のサイクルは、WLTP(ワールド・ハーモナイズド・ライトヴィークル・テスト・プロシージャ)を用いる。1回のサイクルが、4.4時間・192kmにわたり、ブレーキの作動回数は303回に及ぶ。
ハイブリッド車やEVの場合、回生ブレーキにより機械ブレーキへの負担を減らしているためブレーキの粉塵は減る傾向にある。
EURO7施行により欧州車のブレーキの粉塵が減ることは確実だ。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。