ゼロシリーズは「サルーン」と「SUV」がラインアップ
やっぱり、結構するな。
ソニー・ホンダが米西海岸現地時間の1月7日、世界最大級のIT/家電の国際見本市「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」で「アフィーラ」シリーズ第一弾「アフィーラ 1」の価格を公表した。8万9900ドル(1ドル158円換算で、1420万円)で2026年から日本も含めて販売を始める。
その翌日、同じくCESでホンダ「ゼロシリーズ」量産プロトタイプが世に出た。「ゼロ サルーン」と「ゼロ SUV」の2モデルでこちらも2026年にアメリカを起点に日本・欧州でも発売。さらに、各種サイズのSUV4モデルとセダンが2030年までに発売される予定だ。今回、価格は未公開だが、これまでホンダ各方面と意見交換すると「ゼロ サルーンはかなり高額」という声が聞こえてきている。
つまり、「アフィーラ 1」を超えないまでも、それに近い値付けが考えられる。果たして、ゼロシリーズはホンダの目論見通りグローバルで順調に売れるのか? 筆者は直近のホンダ関連の各種イベント及び会見を現地取材している。
2024年10月に栃木県内のホンダ事業所で開催された「ホンダ ゼロミーティング」、12月に実施された「e:HEV ビズ&テックワークショップ」、そして年末のホンダ・日産・三菱による経営統合に関する共同記者会見だ。こうした各所での「肌感覚」から、ゼロシリーズの行方を占ってみたい。
一般的にEVの購入動機は、ユーザー個人における「価格の妥当性」と「充電インフラの状況」及び「満充電での航続距離」の兼ね合いにある。さらに、重要なのが「デザインを含むブランド感」だ。
こうした観点で、ホンダ「ゼロ シリーズを見ると、最も気になるのはソニー・ホンダとのカニバリ(カニバリゼーション:共食い)だ。「アフィーラ 1」と「ゼロ サルーン」は、デザインは大きく違うが、ユーザー体験としては近しいものがある。
今後、アフィーラシリーズのラインアップが、「アフィーラ 1」より高い価格帯になるか、またはソニー・ホンダでしか実現できないユーザー体験が明確にならない限り、「ゼロシリーズ」とのカニバリは起こり得ると感じる。
そこにアキュラが絡むとなると、アキュラ未導入の日本などの国や地域はさておき、ホンダの主要市場であるアメリカのユーザーが戸惑い兼ねない。今後、ホンダからはEVブランドの戦略全体像に関する詳しい説明がなされることを期待したい。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。