セーフティカーの導入により目まぐるしく順位が入れ替わる展開に
2025年9月27~28日、富士スピードウェイで、FIA世界耐久選手権(WEC)の第7戦「富士6時間レース」が開催された。WEC屈指の激戦区であるハイパーカークラスには、過去最多となる18台がエントリーし、母国優勝を目指すトヨタを含め、各メーカーの威信をかけた戦いが繰り広げられた。
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予選ではキャデラックが最前列を獲得
土曜に行われた予選では、ハイパーポールでキャデラック・ハーツ・チームJOTAの12号車がポールポジションを獲得。38号車も2位につけるなど、キャデラックが最前列を独占。一方地元のTOYOTA GAZOO Racing勢は、8号車が5番手、7号車が14番手と、ホームレースとしてはやや厳しいグリッドからのスタートとなった。
翌日曜日、午前11時にスタートが切られた決勝レースは、オープニングラップから激しいポジション争いが展開。スタート直後にはTOYOTA GAZOO Racingの8号車(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組)が他車と接触するアクシデントに見舞われ、これにより8号車は大きく順位を落とすこととなり、優勝戦線から一時後退を余儀なくされた。
レースの序盤は、予選で速さを見せたキャデラックやアストンマーティン、そしてポルシェ・ペンスキー・モータースポーツがトップグループを形成。特に今回日本初披露となるアストンマーティン THOR Teamの9号車は安定したペースで周回を重ねていく。
レース中盤ではトヨタ7号車がポジションアップするが……
最初のピットストップウィンドウを終えても、トップグループは数秒差の中にひしめき合う大混戦となった。この状況下で、大きな注目を集めたのがTOYOTA GAZOO Racingの7号車だ。予選14番手という絶望的な位置からスタートした7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組)は、ドライビングと戦略の両面で光るパフォーマンスを見せた。
特に、小林可夢偉がドライブした第2スティント以降は驚異的で、トラフィックを巧みに処理し、アウトラップやインラップでライバルたちを上回るペースを披露。チームのピット戦略も的中し、一時はハイパーカークラスの首位を争う位置まで躍り出る。しかし、この激しい追い上げの過程で、他車との接触や、コース外走行に対するペナルティ(ドライブスルーペナルティなど)が相次いで課された。これにより7号車は、せっかく築いたリードを失い、再びトップ争いから脱落せざるを得なくなった。
一方、プジョー・トタルエナジーズは、アップデートされた『プジョー 9X8』の優位性を確立し始めた。93号車(ポール・ディ・レスタ/ミケル・イェンセン/ジャン-エリック・ベルニュ組)は、安定した燃費とタイヤマネジメントで周回を重ね、中盤以降は事実上のレースリーダーとして走行した。富士の高速区間では他メーカーに比べやや劣勢に見えたが、テクニカルなセクションでの安定性が光った。
アルピーヌがピットストップの賭けに出る!
レースが残り2時間を切ると、ピット戦略が勝敗を大きく左右する展開に。プジョー、ポルシェ、キャデラックの三つ巴の戦いから抜け出し、プジョー93号車がトップを堅守していた。
しかし、
終盤になって、レース序盤では目立たなかったアルピーヌ・エンデュランス・チームの35号車(ポール=ルー・シャタン/フェルディナンド・ハプスブルク/シャルル・ミレッシ組)が、驚異的な追い上げを見せる。アルピーヌは、他車と異なる戦略を採用し、給油量を最小限に抑え、最終スティントで最大限のペースで走行する賭けに出た。
この戦略が、レース終盤の緊迫した状況下で完璧に機能した。最終的なピットストップのタイミングで二輪だけのタイヤを交換する作戦が功を奏し、シャタンがドライブする35号車は、チェッカーまで残りわずかの周回で、トップを走行していたプジョー93号車の前に出る。プジョーを7.682秒差で抑え込み、WECハイパーカークラス参戦以来、チームにとって待望の歴史的な初勝利を飾った。この勝利は、フランスの耐久モータースポーツ界にとっても大きなニュースとなった。
フランス勢の活躍が目立った今年のWEC富士
2位にはプジョー93号車が入り、アルピーヌと共にフランス勢がワンツーフィニッシュを達成。3位にはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車(ケビン・エストル/ローレンス・ファントール組)が入り、表彰台は激戦を制した3メーカーによって分けられた。
地元のTOYOTA GAZOO Racingにとっては、厳しい結果となった。7号車は粘りを見せたものの、最終的に7位に終わった。8号車はアクシデントとペナルティの影響を最後まで引きずり、16位とポイント圏外でのフィニッシュとなった。
LMGT3クラスではコルベットが勝利!
LMGT3クラスでは、TFスポーツの81号車のシボレー・コルベット Z06 LMGT3.R(トム・ファン・ロンパウ/ルイ・アンドラーデ/チャーリー・イーストウッド組)がクラス優勝を飾った。シボレーにとって、WEC参戦100戦目という節目のレースを勝利で飾る、劇的な結末となった。
この富士6時間レースの結果を受け、ハイパーカーのドライバーズランキングは、首位のAFコルセ83号車とポルシェ6号車とのポイント差がさらに縮小。タイトル争いは、11月6日から8日にかけてバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される最終戦「バーレーン8時間レース」での決着に持ち越されることとなった。
イベント広場も盛況
毎回WECの名物なのが、ホームストレート裏のイベント広場で実施されているフランスフェア。こちらは飲食ブースでならではの美味しい食事が楽しめるほか、アクセサリーなども販売されており大盛況だった。また自衛隊の戦車や装甲車は、子供だけでなく大人にも人気の展示だ。
■WEC公式ウェブサイト:https://www.fiawec.com/












































































































































































































































