LE VOLANT モデルカー俱楽部

【オギャー!】ピックアップはそれ子泣き爺の類か?メビウスのチェンジリングたち【アメリカンカープラモ・クロニクル】第56回

1971年型フォードF-250
1961年型フォードF-100
1961年型フォード小型トラックのカタログ
1961年型フォード小型トラックのカタログ
1961年型フォード小型トラックのカタログ
1967年型フォードF-100
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォード・レンジャーXLT」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォード・スポーツカスタム」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1969フォードF-100カスタムキャブ・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1968マーキュリーM-100ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1970フォードF-100カスタム・ショートベッド」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1971フォードF-250カスタム4×4」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1967フォードF-100サービスベッド・ピックアップ」
1965年型フォードFシリーズのカタログ
1965年型フォードFシリーズのカタログ
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォード・カスタムキャブ・スタイルサイド・ピックアップ」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォードF-100サービストラック」
メビウスモデルズ製1/25スケール・プラモデル「1965フォードF-100サービストラック」
amt製1/25スケール・プラモデル「1963フォードF-100ピックアップ・トラック」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
amt製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
AMTアーテル製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
AMTアーテル製1/25スケール・プラモデル「61ファルコン・ランチェロ」
1967年型シボレーC-10
amt製1/25スケール・プラモデル「1967シボレー・フリートサイド・カスタム・スポーツトラック」
SMP製1/25スケール・プラモデル「1960エルカミーノ」
SMP製1/25スケール・プラモデル「1960エルカミーノ」
1959年型シボレー・エルカミーノ
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「’59エルカミーノ」
AMTアーテル製1/25スケール・プラモデル「1959エルカミーノ」
AMTアーテル製1/25スケール・プラモデル「1959エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
amt製1/25スケール・プラモデル「シェベル・エルカミーノ」
1971年型フォードF-250

Roundup:6 背中から声がする

21世紀になってアメリカンカープラモ市場を席巻したメビウスのゴールドマイン(金鉱、日本語でいえばドル箱)は、疑いようもなくフォード・Fシリーズピックアップである。ピリオドは1965年式から1972年式まで、製品数は2025年現在18タイトルに及び、まだまだ増えそうな勢いがある。

この製品群がなぜこれほどまでにユーザーに支持されているのか、それを歴史の観点から掘り下げるのが本連載第56回の目的である。

【画像154枚】「お前がおれにIビームを2本つけたのは、今からちょうど60年前のこんな晩だったね」な画像を見る!

ピックアップに尻尾のようについて回ったもの

かつてピックアップは車ではなかった。

少なくとも、amt/SMPやMPCらデトロイト・プラスチックスはそう考えていた。

1958年、デトロイトの内製アニュアルキットが成立して以来、ピックアップはつねに悩ましい存在だった。デトロイト・アイアンからして——フォードにせよシボレーにせよ、ピックアップを「仕事の道具」と考えて疑うことがなく、その思惑を受け取る広告部門の外郭として曲がりなりにも「車」を売る仕事をしていたプロモーショナルモデル企業は、そのあまりにも純粋な「道具」らしさゆえに、こどもたちの心くすぐる物語をひねり出すことができず、キットに「おまけ」を付けることでしか魅力を表現することができなかった。

1960年に初めてSMPが製品化したシボレー・ピックアップ(アパッチ)は、それ自体がベッド(荷台)を備えているにもかかわらず、わざわざ牽引するためのトレーラーが付属した。絵に描いたような過積載であるが、SMPはこれをピックアップの魅力を訴求するのにどうしても必要な要素と考えた。その働きぶりを極端に強調することで、道具然としたピックアップをわかりやすい「労働のインデックス」にしようと考えたわけだ。

インデックスという記号の概念になじみがない読者のために解説すると、煙は火のインデックス、山のなかで見つかる巨大な足跡は、ひょっとすると危険かもしれない大型動物(あるいは雪男)のインデックスである。デトロイトはつねに、華やかなライフスタイルの象徴として凝ったデザインの車を送り出すことに余念がなかったが、象徴=シンボルはこうしたインデックスとは異なるものだ。

油にまみれて真っ黒になった手は労働のインデックスだが、きらびやかにそそり立つテールフィンは豊かさの社会的シンボルではあってもインデックスではない。デトロイト・アイアンがわざわざ模型というイメージを駆使してまで売ろうとした「車」はあくまでシンボルであり、その対極にあってどうしても労働と分かちがたいピックアップは「模型を使ってまで売るものではない」とごく自然に考えられた。

クーペユーティリティが隠したもの

ここにひとつの折衷としてあらわれ、積極的にキット化されたテーマがあった。フォードでいうランチェロ、シボレーでいうエルカミーノ——「日曜には教会へ出かけ、月曜には市場へ荷を運べる車」としてわかりやすく定式化される、パッセンジャーカーの顔とトラックの体を持つモデルである。

シボレーと縁が深かったSMPは1960年、このエルカミーノを巧みにキット化し、当時のこどもたちの興味をそそった。製品化にあたっては車それ自体の魅力が肯定的に見積もられたようで、最初からトレーラーのようなおまけが付属することはなかった。

SMPからアニュアルキットとして登場した’60エルカミーノ(品番7660-140)を見てみよう。トップにカスタムされた仕様をもってくる時代性以上に注目したいのは、トノーカバーによってベッドが閉ざされているところである。ここではエルカミーノの道具性がいきなり封じられている。ベッドを隠してしまえば、エルカミーノは「車であること」が前景化する。

しかし、エルカミーノは1960年式を最後にいきなり(いったん)途絶してしまう。SMPもまた1961年、amtに吸収されるかたちで「シボレーとの縁を取り持つ」という設立当初の役割を終え、amtはエルカミーノに代わって、amtが本来親しく付き合っていたフォードのランチェロをアニュアルキットとして送り出すことになる。

毎年わずかなりとも差異が折り込まれるものこそがデトロイトにとっての「車」であるならば、「道具」でしかないピックアップよりも「半分は車」であるランチェロが優先されるのはごく当然のなりゆきであった。

amtがランチェロしか製品化しなかったかといえばそんなことはなく、フォード・Fシリーズピックアップのもっとも軽量級であるF-100は1961年からしばらくアニュアルキット扱いの製品化が続けられた。

しかしながらこれにはおまけの付属が常態化しており、トレーラー、ゴーカート、モーターサイクルといった小物から果てはベッドに覆いかぶさるキャンパーといった手の込んだものまでが都度用意され、ピックアップが依然として荷役や大掛かりなレジャーのインデックス/道具であるという認識は揺るぎもしなかった。

キットの売れ行きにおいてもF-100はこれといって目立った人気を博すこともなく、amtにとってはプラスチックの嵩増しによる価格の調整試験に供する恰好の題材にとどまった。依然としてピックアップは、こどもたちの好む物語をどうしても運ぶことができずにいた。

バンプサイドが手に入れたもの

その後もピックアップは、膨大なアメリカンカープラモのラインナップにときおり末席として加わりながら、いてもいなくても大勢に影響がない「道具」として便利に使役され続けた。

amtからジョージ・トテフとともにスピンアウトするかたちで設立されたMPCが、金型コスト(リスク)分散策の一環として古巣amtから製作を課されたテーマに、1967年式シボレー・ピックアップの姿があった。ベッドいっぱいにクレーンを積んだその姿は、他にあまたある「主役たち」を舞台からそっと運び去る黒子でしかなかった。

amtアニュアルキットとして1967年に登場しながら、翌年にはラインナップに居残ることすらできなかったこの不遇のキットには、「ピックアップにホビーの舞台など場違いである」と突きつける扱いの冷たさがあった。デトロイト・プラスチックスがこの冷たい態度をあらためるには、まずデトロイト・アイアンが考えをあらためる必要があった。

1960~1966年型のシャシーをほぼ流用しつつ、1967年型としてデビューした“アクションライン”シボレー・ピックアップ。シボレーのピックアップは先代からC/Kシリーズを名乗り始めたので、これが2代目C/Kとなる。初代の二段重ねのフロント周りに比べると一気にスマートになった2代目だが、1971年型でのリデザイン以降のフロントマスクの方が馴染み深く、この最初期モデルには見慣れた印象が薄い、という人は少なくないかもしれない。

1967年は、1/1ピックアップの大いなる変革の年であった。

シボレー・ピックアップが根本的な再設計によって「アクションライン」と自称するモダナイズをおこない、フォードもまた「バンプサイド」と俗称されることとなる更新をFシリーズピックアップに対しておこなった。

フォードのバンプサイドとは、Fシリーズピックアップの積載量や仕事の能率に強く影響するフレアサイド/スタイルサイド(後輪のフェンダーがベッド側壁の外にあるか内にあるか)の区別とはなんの関係もない、側面を走る凸型のトリムを指す装飾用語だった。遠く1950年代にパッセンジャーカーの多くが競い合っていた装飾的トリムとはまるで無縁だったピックアップが、ついに加飾を受け容れはじめた。

これより2年早く、フォードは「仕事の質にかかわる」重要な改良として、ツインIビームと称する乗り心地をたいへん柔らかくするサスペンションをFシリーズピックアップに採用していた。苛烈な労働をこなすストレングスとタフネスがあれば事足れりとされてきたピックアップに、地に足のついた箇所から「快適装備」が導入されはじめたわけである。

ピックアップはこのとき「スムース」と表現しうる走行性能を手に入れたが、それまでスムース&スマートばかりをもっぱら口にしてきたパッセンジャーカー側においては逆に「ハスキーなパフォーマンス」——なめらかに洗練されてはいないが逞しい、というニュアンスが広告の語彙に躍りはじめた。

溶け合わない車と道具の境界が徐々に混和しようとしており、ピックアップは柔らかく、パッセンジャーカーは固く引き締まろうとしていたが、それでもなおピックアップにおいて柔らかさはいまだ「より良い労働のため」、パッセンジャーカーにとって固さは引き続き「より強い快楽のため」の変化であった。

ライフスタイルギアが漂白したもの

迎えた1973年のオイルショックは、適者生存の審判をデトロイトに突きつけ、ピックアップは「適者」となった。フォード・Fシリーズには、それまでのバンプサイド・トリムを根こそぎ抉り取ったかのような凹状の「デントサイド」シートメタルが採用されて、トリムレベルのさらなる階層化と加飾の洗練がすすんだ。ピックアップは実直な仕事道具にとどまらなくなり、オーナーのレジャーのみならず、気安い街乗りにまで付き合うようになっていった。

年を追うごとにトノーカバーをかけられたままのベッドは増え、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストにみるように、傷ひとつないピカピカのピックアップがむしろ自慢の種になった。純粋な仕事のための道具がいつしか「ライフスタイルギア」と呼ばれるようになり、ラギッド(荒削り)という形容は「かっこいい」「クールだ」と同義になっていった。

新しいピックアップの広告は相変わらず悪路の走破や重運搬のイメージを引き継いだが、そうしたイメージはピックアップを「未然のインデックス」へと変えていった。

未然のインデックス——かつて記号としてのインデックスには「接触」が前提としてあった。働き者の真っ黒な手は油にまみれる仕事があってこそのものだったが、それがもはや「やろうと思えばできる」白く柔らかい手、ただの可能性になった。100万マイルの故障知らずは、健康的な日焼けが炎天下の労働を示すものではなくなったように、過酷な時間の堆積を必ずしも意味しなくなった。

メビウスが執拗に展開するもの、燃料タンクが語ること

2015年、メビウスはまだ自己紹介の最中にあった。新興模型メーカーとして、今度フォードのFシリーズピックアップをやります。第一弾は1971年式の最高級グレード・レンジャーXLT、ロングベッドです(品番1208)。フォードの広告から転用されたボックスアートには休日の家族団欒が描かれて、ここには労働の影がない。市場は歓び、そして油断する。メビウスがやろうとしているのは「古き良きアメリカ」なのかな、この前は1950年代(ハドソン・ホーネット)だったものな——

毎年「最新」の意味が上書きされるアニュアルキット制度がとうに崩壊して久しい21世紀、メビウスはまるでキットのなかった1965年から1972年のフォード・Fシリーズピックアップを次々にキット化した。市場はこれを「巨大な空白を埋めた」と評したが、メビウスが取りかかった仕事はそれで片付くような思いつきの産物ではなかった。それはあまりにも真剣に練り上げられていたがゆえに、多くの人が容易には気づけない凝った性格をキットにもたらした。

筆者にとっても忘れがたいパーツが、メビウス・ピックアップには必ず付属している。ベンチシートの背後、完全に隠れてしまうところに施された燃料タンクの彫刻である。カットモデルでも企てない限り、完成させればその存在の一切が見えなくなるこの燃料タンクは、一度でもこのピリオドのフォード・ピックアップを運転したことのある者には、忘れられない記憶と結びついた「感触」の再現だった。

引退して久しいあるルートドライバーは「俺はこいつが腹を空かしていたらすぐにわかるんだ」と言った。残りわずかなガソリンが、背中越しに響かせるスロッシング——容器に収まった液体がチャプチャプいう音。

ツインIビームが柔らかく揺らすキャブのなかにドライバーと背中合わせ、今日はよく働いたな、俺は腹が減ったよ、と伝える声——1973年には配置が変わり、ドライバーの背中から遠ざかってしまった「相棒」の幽けき声を、メビウスはビルダーに体験せよ、想像し、存在を確かめ、アルミニウム色に塗り、完全に見えなくなるように組み立てよと命じてくる。

これは最後のリアル・ピックアップなんだ、ピックアップが労働のインデックスであった最後の痕跡なんだよ、と暗に告げてくる。ビルダーはこの隠れてしまう彫刻をメビウスの声として、背中越しにその意味を聞き取ってしまう。

ベンチシートの背後にすっかり隠れてしまうこの燃料タンクが「見えないところも完全再現!」なる広告的ふるまいでないことを軽く証明しておくと、1970年〜1972年のタンクになって増えた上部のフランジボルト数(3個→5個)や、斜めに走る補強ビードや面取りの変化は一切再現されていない。メビウスはあくまで「ここにこのようなタンクがある」ことだけを重視している。完全再現など、やりたいビルダーが選択的にやるべきことだ——「でも見えなくなるよね」「そうだよ。やるの?」

メビウスによる「リアル・ピックアップ」の復権は、そのまま「いつか必ず作る」「やろうと思えばできる」と言い続けてキットを積み上げてしまう「未然のモデラー」に、ビルダーへと回帰せよと告げるキット群でもある。

メビウスのフォード・Fシリーズがこれほどまでに支持されている理由が、これで読者にもおわかりになっただろうか。

【画像154枚】「お前がおれにIビームを2本つけたのは、今からちょうど60年前のこんな晩だったね」な画像を見る!

※今回、amt製1/25「61ファルコン・ランチェロ」、同「’59エルカミーノ」(初版)、同「シェベル・エルカミーノ」の画像は、アメリカ車模型専門店FLEETWOOD(Tel.0774-32-1953)のご協力をいただき撮影しました。
※また、メビウスモデルズ製1/25「1970フォードF-100カスタム」、同「1972フォード・スポーツカスタム」、同「1968マーキュリーM-100」の画像は、読者のミカンセーキさんのご協力により撮影しました。
※メビウスモデルズ製1/25「1971フォードF-250カスタム4×4」、同「1972フォードF-350 4×4トー・トラック」の画像は、読者のKagh15(かーふぃふてぃーん)さんのご協力により撮影しました。
ありがとうございました。

■「アメリカンカープラモ・クロニクル」連載記事一覧はこちら

写真:羽田 洋、秦 正史、畔蒜幸雄、山田剛久
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AUTHOR

1972年生まれ。日曜著述家。Bluesky SNSを中心に、stand.fmでラジオ形式のホビー番組「バントウスペース」をホスト中。造語「アメリカンカープラモ」の言い出しっぺにして、その探求がライフワーク。

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