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ステランティス、既存ディーゼル車でCO2即時削減へ。“追跡可能な”次世代バイオ燃料「HVO Aurora」プロジェクト始動

「ドロップイン燃料」HVOをリアルタイム認証。ステランティス、既存LCVフリートのCO2削減を「HVO Aurora」で支援

ステランティスは2025年11月13日、欧州において、企業のライトコマーシャルビークル(LCV)フリートにおけるCO2排出量削減を支援する革新的なプロジェクト「HVO Aurora(オーロラ)」の開始を発表した。この取り組みは、環境負荷低減が喫緊の課題となる中、電動化への移行期においても既存の車両資産を活用しながら「即時的」に排出量を削減できる実用的なソリューションを提供するものとして注目される。

【画像4枚】これが「HVO Aurora」の実証車両。「シトロエン・ベルランゴ」と「フィアット・デュカト」の姿を見る

食料と競合しない再生可能燃料「HVO」が中核

プロジェクトの中核を成すのは、「HVO(水素化植物油)」と呼ばれる再生可能燃料である。HVOは、従来の燃料と比較していくつかの重要な特性を持つ。ステランティスが今回対象とするHVOは、「使用済み食用油や動物性脂肪などの廃棄物」から製造されるものだ。これは、バイオ燃料の導入においてしばしば指摘される、食料生産との競合やそれに伴う持続可能性への懸念を回避する上で、極めて重要な点である。HVO Auroraは、こうした環境に優しい燃料の利用を促進することを目的としている。

さらに重要なのは、このHVOが既存のインフラや車両と高い互換性を持つという、いわゆる「ドロップイン燃料」としての側面である。ステランティスは、この試みが「既存の車両」で「フリートやインフラに変更を加えることなく」導入可能である点を強調している。この特性により、企業は車両の買い替えや大規模な設備投資を行うことなく、燃料を切り替えるだけで環境負荷の低減に着手できる。

HVOの使用状況をリアルタイムで認証。欧州実証ツアーがスタート

HVO Auroraプロジェクトの最大の革新性は、単にHVO燃料の使用を推奨するだけでなく、その「実世界での使用」を監視、検証、報告する、独自の追跡・認証システムを提供する点にある。これまで多くの企業にとって、低炭素燃料を導入したとしても、その使用実績と環境への貢献度を客観的かつ透明性をもって外部に証明することは困難であった。

HVO Auroraは、燃料の種類、走行距離、消費量を記録する使いやすい追跡・認証システムを導入する。収集されたデータは安全にクラウドへアップロードされ、企業は自社のフリートが実際にどれだけ低炭素燃料を使用したか、その環境上の利点は何かを、透明性の高いリアルタイムの証拠として把握できるようになる。

このシステムの有効性を実証するため、ステランティスは低炭素燃料向けインテリジェントセンサーを専門とするフランス企業SP3Hと協力し、1ヶ月にわたる欧州ロードツアーを開始した。このデモンストレーションでは、SP3H社のコネクテッドセンサー「FluidBox Micro」を搭載したシトロエン・ベルランゴとフィアット・デュカトの2台のバンが使用される。これらの車両がヨーロッパ各国を走行し、実世界での使用データを収集する。このツアーの目的は、HVOという、よりクリーンで「追跡可能」な燃料が、既存の車両で問題なく使用できることを実証することにある。

多くの既存ディーゼル車も改造不要。電動化を「補完する」現実的ソリューション

ステランティスは、このソリューションが一部の最新車両に限定されたものではないことも強調している。現在販売されている全てのステランティス製乗用車および小型商用車のディーゼルモデルは、HVOディーゼル燃料(EN15940燃料規格)とすでに完全な互換性を持っている。さらに、現在路上を走行している多くのユーロ5およびユーロ6搭載ディーゼル車も、改造を一切行うことなくHVOを使用することが可能だという。

このHVO Auroraプロジェクトは、ステランティスの従業員による革新的なアイデアを実用化する社内イントレプレナーシッププログラム「Star*Up」から生まれたもので、同社の商用車事業部門であるステランティス プロ・ワンがサポートしている。

ステランティス プロ・ワンの製品・イノベーション責任者であるルカ・マレンゴ氏は、次のように述べている。
「HVO Auroraは、顧客が既に信頼を寄せている既存の車両で機能するソリューションを用い、ウェル・トゥ・ホイール(燃料採掘から走行まで)での排出量を即座に削減できる方法を示すものです」

ステランティスは、このプロジェクトが、完全電動化のような他のクリーンモビリティへの道筋を否定するものではなく、それらを「補完する」即時性のある選択肢であると位置づけている。企業が求める「今すぐ」の環境負荷低減ニーズに対し、HVO Auroraは既存の資産を活用しながらCO2排出量を削減できる、実用的、信頼的、かつ包括的な方法を提供するものとなるだろう。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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