0-100km/h加速2.5秒の衝撃。ポルシェ新型「カイエン・エレクトリック」が正式発表
ポルシェは2025年11月19日、ブランドを象徴するSUV「カイエン」の新たな時代を切り拓く、フル電動モデルの新型「カイエン・エレクトリック」を世界初公開した。ポルシェのスポーツカーDNAと先駆的なテクノロジーを融合させたこの電動SUVは、最大出力1156ps(850kW)、0-100km/h加速わずか2.5秒という驚異的なパフォーマンスを発揮しながら、最大642kmの航続距離を実現している。ポルシェは、この新型BEV(バッテリー電気自動車)を内燃機関モデルやプラグインハイブリッドモデルと共に並行して販売する戦略を打ち出しており、多様なパワートレインの選択肢を提供する姿勢を鮮明にしている。
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スーパーカーを凌駕する圧倒的な動力性能
今回発表されたラインナップは、「カイエン・エレクトリック」と、上位モデルの「カイエン・ターボ・エレクトリック」の2モデルで構成され、いずれも電子制御ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム(ePTM)を備えた全輪駆動(AWD)モデルである。特筆すべきはフラッグシップである「ターボ」の性能であり、新開発の駆動システムはローンチコントロール作動時に最大1156ps(850kW)の出力と最大1500Nmのトルクを発生させる。これにより、大型SUVでありながら0-100km/h加速は2.5秒、0-200km/h加速は7.4秒を記録し、最高速度は260km/hに達するという、まさに異次元の数値を叩き出している。
この高出力を安定して発揮するために、ターボモデルのリアアクスルモーターにはモータースポーツ由来の技術である直接油冷システムが採用され、高い連続出力と効率性を確保した。通常走行時でも857ps(630kW)が利用可能だが、「プッシュ・トゥ・パス」機能を使用すれば、ボタン一つで10秒間、さらに176ps(130kW)の出力を上乗せすることができる。一方、エントリーモデルとなる「カイエン・エレクトリック」であってもその性能は強力で、通常時で408ps(300kW)、ローンチコントロール時には442ps(325kW)と835Nmを発揮し、0-100km/h加速は4.8秒、最高速度は230km/hに達する。
また、回生ブレーキの性能もフォーミュラEレベルに達しており、最大600kWという驚異的な回生能力を誇る。これにより、日常的な減速操作の約97%を電気モーターのみで賄うことが可能となり、機械式ブレーキの介入頻度は極めて低く抑えられている。
革新的な充電技術と長距離性能
新型カイエン・エレクトリックの中核を成すのは、新開発の容量113kWhの高電圧バッテリーである。このバッテリーは最適な熱管理のために両面冷却方式を採用しており、WLTPモードでの航続距離はカイエン・エレクトリックで最大642km、ターボモデルでも最大623kmを実現した。
充電性能においてもポルシェは妥協を許さず、800Vテクノロジーによって最大390kW、特定の条件下では最大400kWというDC急速充電に対応している。これにより、バッテリー残量10%から80%までを16分未満で充電することが可能であり、わずか10分の充電で325km(ターボは315km)走行分のエネルギーを補給できる。さらに、ポルシェ初となる最大11kWの誘導充電(ワイヤレス充電)オプションも導入され、ユーザーはフロアプレートの上に車両を停めるだけで、自動的に充電プロセスを開始できるようになった。
拡大されたボディと最新のエアロダイナミクス
エクステリアデザインは、ポルシェ特有のプロポーションを継承しつつ、明確な進化を遂げている。ボディサイズは従来の内燃機関モデルより55mm長く、全長4985mm×全幅1980mm×全高1674mmとなった。特にホイールベースは13cm近く延長されて3023mmとなり、これにより後席のレッグルームと居住性が大幅に向上している。
空力性能も徹底的に追求され、空気抵抗係数(Cd値)はクラス最高レベルの0.25を達成した。これを支えるのがポルシェ・アクティブ・エアロダイナミクス(PAA)であり、フロントの可動式クーリングエアフラップやアダプティブルーフスポイラーに加え、ターボモデルにはリアに革新的なアクティブ・エアロブレードが装備されている。これらは走行状況に応じて空気の流れを最適化し、高速走行時の航続距離延長とダウンフォースの強化に寄与する。
最先端のデジタル体験と快適性
インテリアでは、デジタル化された「ポルシェ・ドライバー・エクスペリエンス」が新たなレベルへと引き上げられた。センターコンソールには、エレガントに湾曲したOLEDパネル「フローディスプレイ」が採用され、表示エリアと操作エリアがシームレスに融合している。コックピットは14.25インチのフルデジタルメーターと14.9インチの助手席ディスプレイで構成され、ポルシェ史上最大のディスプレイ面積を実現した。さらに、カイエンとして初めてAR(拡張現実)技術を用いたヘッドアップディスプレイが採用され、車両前方10mの位置に87インチ相当の映像を投影することが可能となった。
一方で、エアコンや音量といった使用頻度の高い機能にはあえてアナログの操作系を残し、新開発のハンドレストと組み合わせることで、ダイナミックな走行中でも確実な操作ができるよう配慮されている。室内空間は「ムードモード」によって照明や空調、ディスプレイ表示が連動して変化し、乗員の気分に合わせた演出が可能だ。
シャシー技術と今後の展望
走行性能と快適性の両立を支えるシャシー技術も進化しており、両モデルともにポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)を含むアダプティブエアサスペンションが標準装備される。さらに、フラッグシップモデルには初めて「ポルシェ・アクティブ・ライド」が設定され、車体の動きをほぼ完全に補正することで、卓越した安定性と快適性を提供する。
ポルシェAG取締役会会長のオリバー・ブルーメ氏は、新型カイエン・エレクトリックについて「SUVセグメントにおいて、走行特性と充電性能の両面で新たな基準を打ち立てるモデルだ」と自信を見せている。ポルシェは2030年以降も、市場の需要に応じて完全な電気自動車と内燃機関エンジン搭載車の両方を提供し続ける方針であり、この新型EVの投入は、その柔軟なパワートレイン戦略を象徴するマイルストーンとなるだろう。新型カイエン・エレクトリックは、すでに本国では注文受付が開始されている。
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