現代のEクラスへと続く、比類なき「信頼」の原点
メルセデス・ベンツの「W123」シリーズは、2026年1月で50周年を迎えた。1976年1月に南フランスのバンドールでプレス向けに初公開されたこのモデルは、発売前から年間生産分が完売するほどの熱狂で迎えられた歴史を持つ。「Eクラス」の先駆けとして、安全性と信頼性の概念を確立したW123は、タクシーからラリーの覇者まで多才な顔を持ち、今なおドイツ国内で最も愛されるクラシックカーの一つとして君臨している。半世紀を経てなお輝きを増す、この名車の足跡を振り返る。
【画像18枚】最善の機能美。50周年を迎えたメルセデス「W123」の緻密な内装からラリー制覇の勇姿までをすべて見る
アクティブ&パッシブセーフティが示したメルセデスの矜持
W123がデビューした際、ジャーナリストたちが称賛したのは、その冷静かつ調和のとれたデザインの中に込められた、最高レベルのアクティブおよびパッシブセーフティであった。当時のSクラス(W116)のコンセプトやスタイルを色濃く反映しており、高品質な仕上げや卓越したサスペンション設定に加え、新開発の安全ステアリングコラムやシート取り付け型のベルトバックルなどが採用されていた。
さらに、1980年からはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が、1982年からは運転席エアバッグが提供されるなど、安全技術の導入にも積極的であった。専門誌『auto motor und sport』は1976年の試乗記で「オーダーメイドの進化」と題し、メルセデス・ベンツの妥協なき品質への姿勢と計算された進歩を「平均以上」と高く評価した。W123は瞬く間にドイツの自動車文化の象徴となり、道路の風景を一変させたのである。
セダンからTモデルまで、ライフスタイルを再定義した名車たち
W123の成功を物語るのは、1986年の生産終了までに記録された約270万台という総生産台数である。これは当時、メルセデス・ベンツ史上最も成功したモデルとなった。内訳を見ると、セダンが237万5440台を占め、中でも最も多く生産されたのは「240 D」で44万8986台に達する。一方で、最も希少なモデルはクーペの「280 C」であり、その生産台数はわずか3704台であった。
ボディバリエーションの豊富さもW123の魅力の一つだ。1976年のセダン登場から約1年後の1977年春にはクーペ(C123)が、同年9月にはブランド初のステーションワゴンとなるTモデル(S123)が登場した。特にTモデルは、レジャーやスポーツに重点を置き、コンビリムジンというジャンルを根本から再定義した画期的な存在であった。これに加え、ロングホイールベースのリムジン(V123)や、架装用のシャシー(F123)も用意されていた。
3万kmの過酷なラリーを制した、圧倒的なタフネスの証明
W123の堅牢さは、モータースポーツの世界でも証明されている。1977年に行われたロンドン・シドニー・マラソンラリーにおいて、メルセデス・ベンツは「280 E」を投入。欧州、アジア、オーストラリアを横断する3万km、6週間半に及ぶ過酷なレースで、アンドリュー・コーワン率いるチームが見事に勝利を収めた。この勝利は、W123の妥協なきタフネスと信頼性を世界に知らしめるものであり、優勝車両は現在もメルセデス・ベンツ・ミュージアムで見ることができる。
また、W123は駆動技術の実験場としての役割も果たしていた。1982年にはLPGとガソリンの両方を使用できるバイフューエルエンジンを工場出荷時に設定したほか、水素駆動やバッテリー電気駆動の試験車両も存在した。半世紀も前から、すでに将来の駆動技術を見据えた開発が行われていたのである。
世代を超えて愛され続ける、質実剛健なメルセデス・クラシックの真価
製造から長い年月が経過した現在でも、W123は高い再販価値を誇り、多くの車両が愛好家によって大切に維持されている。ドイツ本国のメルセデス・ベンツ・クラシックでは、これらの車両が将来も安全に走行できるよう、包括的な純正部品の供給を行っている。ドアロックのノブといった細かな部品から、ブレーキキャリパー、フロントガラス、フェンダー、さらにはクランクシャフトやカムシャフトといったエンジン部品に至るまで、メーカー仕様に基づいた高品質なパーツが入手可能である。
特筆すべきは、主要部品の多くが世界中のネットワークを通じて通常24時間以内に入手可能であるという点だ。また、M110エンジン用のスパークプラグや、車検証を提示して作製するスペアキーなども再供給されている。
車両販売部門でもW123は人気があり、現在は1984年製の「230 TE」(アイベングリーン、走行距離5万2000km)などの極めてオリジナル度の高い個体が取り扱われている。質実剛健でありながら快適、そして革新的であったW123は、50年が経過した今もなお、メルセデス・ベンツの核となる価値観を体現し続けている。
【ル・ボラン編集部より】
W123の生誕50周年を祝う今、改めてこの「最善か無か」を体現した中核モデルの系譜を想う。現代のEクラスがハイテクの集積体であるのに対し、W123の魅力は機械としての濃密な信頼感に尽きる。刺激こそ少ないが、距離を延ばすほど体に馴染むしなやかな乗り味は、まさにメルセデス哲学の原点だ。この「日常の英雄」が放つ、誠実な設計思想は、効率を優先する現代においてなお、我々が理想とする自動車像の指針であり続けている。
【画像18枚】最善の機能美。50周年を迎えたメルセデス「W123」の緻密な内装からラリー制覇の勇姿までをすべて見る





















