コラム

羊の皮を被った狼。現代AMGの原点となったV8スーパーセダン「300SEL 6.3」はなぜ生まれたのか?【メルセデス名車列伝】《LE VOLANT LAB》

90度バンクを疾走する300SEL 6.3。外観では縦置きの4灯ヘッドライトの中央に黄色いウインカーを挿入し、バンパー上にフォグランプを持つのが特徴。
90度バンクを疾走する300SEL 6.3。
300SEL 6.3のスタイル写真。
スポーツカーの性能を発揮し走行する300SEL 6.3。
300SEL 6.3:トランクリッドの右側に配置された「6.3」エンブレムだけが見分けるポイント。
300SEL 6.3:トランクリッドの右側に配置された「6.3」エンブレムだけが見分けるポイント。
300SEL 6.3:リアの左側に「300SEL」のエンブレム、右側に「6.3」エンブレムを配置。
300SEL 6.3の雨天時の水捌けテスト。うまく両サイドに水捌けし、安定した足回りと操縦性を発揮、視界も広く安全。
300SEL 6.3:コーナリングのテストでは安定した足回りと操縦性を発揮。
300SEL 6.3のベースとなったW109。写真は空港内で標準仕様の300SELとルフトハンザとの2ショット。
300SEL 6.3:排気量6332ccでパワフルなV8エンジンは600/W100のものを移植したもので、250psを発揮する。
300SEL 6.3:排気量6332ccでパワフルなV8エンジンは600/W100のものを移植したもので、250psを発揮する。
300SEL 6.3:排気量6332ccでパワフルなV8エンジンは600/W100のものを移植したもので、250psを発揮する。
300SEL 6.3:室内は優れた快適性とゆったりとした広さを備え、シートは長距離でも疲れないよう配慮されている。
300SEL 6.3:大型化したスピードメーター、回転数カウンターや時計の配置換えにより、「6.3」と通常の300SELとが区別される。
300SEL 6.3:エアサスペンションとオートマチックトランスミッションは、どんな要望も叶えるレベルの乗り心地を生み出し、長距離ドライブでも疲れることなくリフレッシュした気分を満喫できる。
300SEL 6.3:エアサスペンションとオートマチックトランスミッションは、どんな要望も叶えるレベルの乗り心地を生み出し、長距離ドライブでも疲れることなくリフレッシュした気分を満喫できる。
300SEL 6.3:トレーラーを牽引して郊外にキャンプに出かける時など、行楽のシーズンにも最適。
筆者の手元にある300SEL 6.3のカタログ:その表紙は走行写真と下に「300SEL 6.3」の文字のみでシンプル。
筆者の手元にある300SEL 6.3のカタログ:当時のスーパーセダンに見合う見開きのダイナミックな走行テスト写真が目に付く。
筆者の手元にある300SEL 6.3のカタログ:エンジン写真が1ページ全体に掲載。
筆者の手元にある300SEL 6.3のカタログ:メルセデス・ベンツの安全性説明文が2ページにわたり解説されている。
筆者の手元にある300SEL 6.3のカタログ:信頼性の説明文が2ページにわたり展開され、カタログも全体的に他のモデルとは一線を画す特別仕様であった。
当時のAMG社はこの300SEL 6.3をチューンした「300SEL 6.8」で1971年のベルギー、スパ・フランコルシャンでクラス優勝を果たし、総合でも2位に輝いた。
当時のAMG社はこの300SEL 6.3をチューンした「300SEL 6.8」で1971年のベルギー、スパ・フランコルシャンでクラス優勝を果たし、総合でも2位に輝いた。
当時のAMG社はこの300SEL 6.3をチューンした「300SEL 6.8」で1971年のベルギー、スパ・フランコルシャンでクラス優勝を果たし、総合でも2位に輝いた。
当時のAMG社はこの300SEL 6.3をチューンした「300SEL 6.8」で1971年のベルギー、スパ・フランコルシャンでクラス優勝を果たし、総合でも2位に輝いた。
1972年発表の初代Sクラス/W116に6.9Lにまでスケールアップしたエンジンを搭載した450SEL 6.9が1975年5月に発表された。
1972年発表の初代Sクラス/W116に6.9Lにまでスケールアップしたエンジンを搭載した450SEL 6.9が1975年5月に発表された。
450SEL 6.9の巨大なエンジンは最高出力280ps/4250rpmを発揮し、最高速は225km/h。
参考までに、1960年代半ばの日本での販売価格表。
90度バンクを疾走する300SEL 6.3。外観では縦置きの4灯ヘッドライトの中央に黄色いウインカーを挿入し、バンパー上にフォグランプを持つのが特徴。

スーパーセダンの始祖:メルセデス・ベンツ300SEL 6.3W10919681972

1968年のジュネーブ・モーターショー。華やかなスポーツカーに沸く会場で、メルセデス・ベンツは控えめな外観のセダンを発表した。しかし、その正体は最高級リムジン用の巨大なV8エンジンを飲み込んだ、ポルシェに匹敵する俊足のモンスターだった。「羊の皮を被った狼」として恐れられ、現代AMGの原点となった300SEL 6.3。この歴史的スーパーセダンはいかにして生まれたのか。その軌跡を紐解く。

【画像31枚】最高速221km/hを叩き出した4ドアセダン! メルセデス・ベンツ 300SEL 6.3の圧倒的スペックを紐解く
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スポーツカーを震撼させた1台の控えめな高級セダン

1968年3月のジュネーブ・モーターショーの会場ではフェラーリ365 GT 2+2やランボルギーニ・イスレロ、ポルシェ911など、高性能GTやスポーツカーが来場者の視線を集めていた。そんな華やかな舞台で、メルセデス・ベンツは1台の控えめなセダンを発表した。「300SEL 6.3」である。

一見すると1965年に発表された通常の300SEL/W109と変わらない。その特徴は、縦置きのツインハロゲン4灯ヘッドライトを上品なクロームモールで囲み、その中央に黄色いウインカーを挿入し、バンパー上にフォグランプを装備している点にあった。そしてトランクリッドに控えめに添えられた「6.3」の数字だけが、特別な存在であることを示していた。

300SEL 6.3のスタイル写真。

300SEL 6.3のスタイル写真。

しかし、そのボンネットの下には当時の最高級車600/W100リムジン用のM100型6.3L V型8気筒エンジンが搭載されていた。最高速度220km/h、0-100km/h加速約6.5秒、発進から1kmまでは27.1秒! 1968年当時としては、フェラーリやポルシェに匹敵する性能である。しかも5人乗りの高級セダンでありながら、優れた快適性と静粛性まで備えていた。世界中はこの瞬間、新しいジャンルの誕生を目撃した。後に「スーパーセダン」と呼ばれるカテゴリーの原点である。

半ば独断の試作車。テストエンジニアの情熱

300SEL 6.3誕生の物語は、1人の技術者の情熱から始まった。テストエンジニアのエーリッヒ・ヴァクセンベルガーである。彼は1960年代に、600/W100リムジンのM100型V8エンジンに大きな可能性を感じていた。
「このエンジンをより軽量な車体に搭載したらどうなるのか!」

その発想は大胆だった。なぜなら、当時のメルセデス・ベンツでは、「高級車」と「高性能車」は別の存在だったからである。ヴァクセンベルガーは半ば独断で試作車を製作した。その完成車は想像を超える性能を示した。

300SEL 6.3:リアの左側に「300SEL」のエンブレム、右側に「6.3」エンブレムを配置。

300SEL 6.3:リアの左側に「300SEL」のエンブレム、右側に「6.3」エンブレムを配置。

やがて試作車は技術開発責任者ルドルフ・ウーレンハウトの目に留まる。試乗したウーレンハウトはその完成度に驚き、量産化を決断したと伝えられている。1人の技術者の情熱が企業を動かし、新たな市場を創造した。300SEL 6.3は、まさにその象徴だった。

妥協なき耐久性とパワー。最高峰V8エンジンが生む別次元の走り

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フォト=メルセデス・ベンツAG、妻谷コレクション

AUTHOR

1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。

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