史上初のナイトセッション。極限のエネルギーマネジメントが勝敗を分けた2日間
真夏の熱帯夜に響き渡った、タイヤのスキール音とモーターの咆哮。2026年7月25日〜26日に開催された「ABB FIAフォーミュラE世界選手権 2026 TDK Tokyo E-Prix」から数週間が経過した現在も、あの初のナイトレースがもたらした視覚的インパクトと、極限のバトルはファンの心に刻まれている。ここでは、フリー走行や予選、そして「極限のエネルギーマネジメント」が勝敗を分けた決勝の深層をさらに深く掘り下げていく。
【画像115枚】暗闇を切り裂くLEDと極限のバトル。初のナイトレースとなった「2026年東京E-Prix」の熱狂を振り返る
東京のストリートコースを明るいLEDライトが照らす
今年で3年目を迎えた東京大会の最大のトピックは、なんといってもフォーミュラE史上初となる「ナイトレース」の実現だった。これは開催時期の東京の日中が猛暑の可能性があること、そして欧州での放映時間のスケジュールなどの要因が関係していたが、カレンダー終盤に位置付けられたこのダブルヘッダーにおいて、四輪駆動へとアップデートされた「GEN3 Evo」マシンが、ライトアップされた夜の公道コースを駆け抜ける幻想的な光景は、現地を訪れたファンだけでなく世界中の視聴者を魅了した。
金曜日の19時~フリー走行のナイトセッションからスタートした今回の東京ラウンドでは、コースの照明がどれだけの明るさがあるのか心配された。しかし走行が始まるとコース上はLED照明が埋め尽くされ、視界も良好。聞けばF1シンガポールGPと同じ機材が持ち込まれたということで、なるほど明るかったわけだ。
高速コーナーのターン9や13ではタイヤがウォールに接触するギリギリのラインを走行したり、タイトコーナーのターン12ではテールスライドをさせながら立ち上がる場面もみられるなど、ドライバーは初のセッションから激しい走りを披露してくれた。
ティクトゥムの執念が実ったレース1の大逆転劇
土曜日の16時過ぎから始まった予選では、グループステージを勝ち抜き、1対1のトーナメント戦「デュエル」に進出した上位陣の走りは圧巻だった。デュエルではAWDのフルパワー使用が許可されるため、タイトなコーナーからの立ち上がり加速が劇的に向上する。
ここで他を圧倒したのがジェイク・デニス(アンドレッティ)だ。デニスはファイナルで驚異的なタイムを叩き出し、マヒンドラのエドアルド・モルタラらを退けてポールポジションを奪取した。一方の日産勢は、トラフィックの影響とタイヤのウォームアップ不足が響き、惜しくもデュエル進出を逃す悔しい結果となった。
20時05分にスタートした決勝レースでは、レースはポールスタートのデニスがコントロールする展開。しかし、ナイトレース特有の低い路面温度により、後続車両はスリップストリームに入ってもバッテリー温度が上がりにくく、エネルギーを温存しやすい状況が生まれていた。
この状況を誰よりも冷静に利用したのが、ダン・ティクトゥム(クプラ・キロ)だ。ティクトゥムはデニスの背後にピタリとつけ、アタックモードの起動タイミングも完璧にカバー。そして迎えたファイナルラップのターン10〜11の複合コーナー。バッテリー残量にわずかなマージンを残していたティクトゥムが、イン側から鋭くノーズをねじ込み、鮮やかなオーバーテイクを成功させる。そのままトップチェッカーを受け、フォーミュラE史上初のナイトレースの勝者に輝いた。
また、3位にはニック・キャシディ(シトロエン・レーシング)が入った。シトロエン・レーシングはチーム代表である故シリル・ブレイズ氏の訃報を受けた直後のレースであり、チーム全体にとって非常に感慨深い、特別な意味を持つ表彰台となった。
天候にも翻弄された今回の東京ラウンド
日曜日は午後にかけて天候が急変した。直前に見舞われたゲリラ豪雨と雷によりフリー走行3回目(FP3)が中止となり、各車は「ぶっつけ本番」で予選に臨むことになった。ウエットパッチが残る非常に難しい路面コンディションのなか、ノーミスのアタックを完遂したエドアルド・モルタラ(マヒンドラ フォーミュラEチーム)が見事に今季4度目のポールポジションを獲得。一方で、前日ポールのデニスは18番手、前日3位のキャシディも13番手スタートと大きく出遅れる波乱のグリッドとなった。
また、ニック・デ・フリース(マヒンドラ フォーミュラEチーム)は5番手という好位置を確保した。迎えた決勝では、5番手からスタートしたデ・フリースが、序盤でしっかりエネルギーを温存。28周目に絶妙なタイミングでアタックモードを発動させると、前を走るドライバーを次々とかわし、終盤までレースをリードしていたオリバー・ローランド(ニッサン フォーミュラEチーム)を抜いて首位に浮上した。
レース終盤には中団でのクラッシュにより赤旗中断。レースは各車タイヤ内圧を調整したのち、残り1周の「超スプリント」として再開された。アタックモードを持たない状況下でデ・フリースがトップを守り切り、今季2勝目を飾った。
今回後方からの凄まじい追い上げを見せたのが、シトロエンのキャシディとアンドレッティのデニスである。キャシディは13番手スタートから前日に続く2位表彰台を獲得。デニスは18番手スタートから猛追し、終盤までアタックモードを遅らせていたローランドのエネルギー切れを突いて3位に食い込んだ。
タイトルを争うパスカル・ヴェアライン(ポルシェ フォーミュラEチーム)とミッチ・エヴァンス(ジャガーTCSレーシング)が揃ってノーポイントに終わったことで、デニスは最終戦を前にドライバーズランキングの首位に躍り出るという劇的な展開となった。
また、8月15日〜16日にイギリス・ロンドンの特設コースにて開催された最終戦では、ポイントリードを死守したヴェアラインが逃げ切り、自身2度目となるドライバーズチャンピオンの座に輝いた。
レースを制したのはテイラー・バーナード(DSペンスキー)。ライバルのアタックモード消費を見計らった冷静な戦略で、フォーミュラE最年少優勝記録を打ち立て、GEN3 Evo最後のレースに華を添えている。
終わってみれば、日産のローランドがランキング4位と健闘を見せ、チーム選手権はジャガーTCSレーシングが制覇して幕を閉じたシーズン12。
東京E-Prixでは、植物由来のHVO燃料を使用することで大幅なCO2排出削減を実現するなど、環境配慮型モータースポーツとしての姿勢も改めて示された。予測不能なレース展開と、市販EVへと直結する技術開発の最前線。来シーズンもフォーミュラEが我々にどのような熱狂をもたらしてくれるのか、今から期待が高まるばかりだ。
【画像115枚】暗闇を切り裂くLEDと極限のバトル。初のナイトレースとなった「2026年東京E-Prix」の熱狂を振り返る


















































































































