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VWはコスト削減技術を手がけ、トヨタは鉄道コラボで水素モビリティ普及を図る

燃料電池車、今後の見通しは!?

ジャガーIペイスやポルシェ・タイカンが登場し、フォルクスワーゲン(VW)が専用プラットフォームを発表するなどピュアEV(電気自動車)が注目を集めている。一方で究極の環境対応車といわれる燃料電池車は、構造がシンプルなEVに対し、化学反応で電気を生み出すFCスタックと呼ばれる装置が必要なためコストを抑えるのが難しく、なかなか実用化は進んでいない。航続距離ではEVに優るものの、水素供給インフラ(水素スタンド)が増えないとなかなか普及は難しい面もある。

だが、そんな燃料電池車の弱点をなんとか克服しようという動きが、ここにきてあちこちで起きている。EV専用プラットフォームの投入が注目されるVWではあるが、燃料電池車に関しても最も重要な「コストダウン」に挑戦。米国のスタンフォード大学と共同で、貴金属であるプラチナの使用を大幅に削減する技術の開発に成功した。プラチナ元素の配置を見直したFCスタックにより、プラチナの使用量を減らしながら電力発生の効率を高めることを可能としている。

VWは実用化の時期などは明言していないものの、コストダウンにより燃料電池車の普及に貢献できると断言しており期待が持てる。ちなみにこの新技術は燃料電池車だけでなく次世代のリチウムイオン電池に活用できる可能性もあり、幅広く活用することで電動パワートレイン全体のコストダウン効果も見込めそうだ。

一方でトヨタ自動車は水素エネルギーの幅広い活用を目指し、JR東日本(東日本旅客鉄道)との連携に合意。東京・品川でJR東日本が進める開発プロジェクトにおいて水素ステーションの整備を進め、JR東日本が各地に所有する社有地での水素ステーション拡充に協力していく考えだ。JRの所有する土地は鉄道路線周辺を中心に数多く存在するが、必ずしも利便性のいい場所ばかりとは限らない。だが、それを水素ステーションとして活用できれば、インフラを拡充したいトヨタにとっても、遊休地を活用したいJRにとっても双方にメリットがある。

さらに両社は鉄道に接続する形での燃料電池バスなどの活用や、水素を大量に搭載する移動体の安全性などを研究し、燃料電池を搭載する鉄道車両の開発や導入に向けての課題なども洗い出していくことになる。燃料電池の活用範囲をクルマだけでなく、鉄道にも広げていこうというもので、駅を拠点とした水素のサプライチェーンなども含め、水素社会構築のベースを築いていく考えだ。

すでに燃料電池乗用車のMIRAIを国内で2500台以上販売しているトヨタとしては、水素ステーションを主体とした水素インフラの整備を進めたい思いは強いはず。鉄道を含めて燃料電池の普及が進めば水素の需要も高まり、水素インフラの整備が進む可能性は高い。

ここまでガソリン価格の高止まりが続くと、1回の水素補給で長距離をこなせる燃料電池車の価値が浮上してくる。VWも燃料電池車はまだ「ニッチ商品」と位置づけているが、その将来性には着目しており、商品化ではEVを先行させながらも実用化に向けての研究は着々と進められている。

コストダウンと水素インフラの整備。このふたつの課題をクリアするのは容易ではないが、EVの欠点を補うことのできる燃料電池車の可能性についてもしっかり考えていきたいところだ。

LE VOLANT 2018年12月号 Gakken Plus
田畑修

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