
国道162号・周山街道(No.059)
美しき里山を抜け、若狭の海と京の都を結ぶ。
京都から若狭湾をめざして周山街道を走り始めると、30分もたたないうちに都会の喧噪は消え、深い木立に包まれる。都会の間近にありながら、このあたりには驚くほど豊かな自然が残っているのだ。
ただし、ここで言う自然とは手つかずの自然ではない。人の生活とともにあり、人が手を入れてきた里山である。小川、棚田、雑木林や杉の美林。そんなやさしい風景のなかで、ひときわ目を惹くのが美山の茅葺き集落だ。
国道162号から県道38号に入り、見通しの良くないコーナーを3つ4つ抜けると、その集落は突然姿を現わす。「かやぶきの里」とも呼ばれる美山町北山の集落は、ちょっと背伸びをすれば端から端まで見渡せそうなほどこぢんまりとしている。総戸数は50戸。そのうち資料館なども含めると38戸が茅葺きの家屋だ。集落全体があまりにもきれいにまとまっているものだから、映画のセットように見えてしまう。
自治体からの補助金なども出るようになり、今でこそ専門業者に任せるようになったが、かつて屋根の葺き替えは村人総出の作業だった。だから村が共同体としての機能を失えば、茅葺きの家屋はたちまち朽ち果ててしまう。
裏山が冬の北風をさえぎり、南の川沿いには明るい野が広がる。そんな居心地の良さそうな集落だからこそ、茅葺き家屋も人々とともに生き続けてこられたに違いない。
◎正式名称/国道国道162号
◎区間距離/98km(京都市-小浜市)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/5月上旬
鯖街道(No.060)
若狭湾から京の都へ海の幸を運び続けてきた道。
周山街道(国道162号)や敦賀と大津を結ぶ西近江路(国道161号)など、畿内と日本海を結ぶ主要道の大半は、古くから都へと海産物を運んできた道。広い意味での鯖街道である。その代表格が若狭路とも呼ばれる国道367号/303号。琵琶湖西岸のやや内陸寄りを抜けていく道はのどかな雰囲気がたっぷり。若狭国の入口、熊川宿には国道303号の旧道に沿って、古い家並みがたっぷりと残っている。
◎正式名称/国道27/303/367号
◎区間距離/74km(京都市-小浜市)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/5月上旬
メタセコイア並木(No.061)
見事な並木道を生んだのは生きた化石メタセコイア。
琵琶湖西岸、マキノ町郊外にある美しい並木道。道の両側にそびえ立つのはメタセコイアの大木で、琵琶湖側から内陸に向かって約2.4kmのロングストレートがまっすぐに延びていく。ちなみにメタセコイアというのはスギ科の針葉樹で、国内では化石でしか見られなかった植物。その現生種が第二次大戦中に中国奥地で発見され、戦後、苗木が日本各地で植樹された。いわば「生きた 化石」の並木道である。昭和天皇が歌会始で詠まれたアケボノスギ(曙杉)はメタセコイアの和名。
◎正式名称/県道287号/町道牧野線
◎区間距離/2.5km(高島市マキノ町)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/5月上旬
ご当地情報
A:美山かやぶきの里
山里の暮らしが息づく静かな茅葺き集落
国道162号・周山街道から県道38号に入ると、すぐに現れるのが美山かやぶきの里。美山町(現・南丹市)北村には38戸の茅葺き住宅が現存していて、これは白川郷の萩町集落、福島県の大内宿に次ぐ戸数の多さを誇る。県道沿いの食事処では地場産のそばを味わえるほか、集落内に民宿が3軒あり宿泊することもできる。
●見学自由/南丹市美山町北/Tel:0771-77-0660(かやぶきの里保存会)
B:民宿またべ
茅葺きの囲炉裏端で地鶏すきやきをいただく
美山かやぶきの里の集落で営業している民宿の1軒。夕食は地元の名物料理、地鶏のすき焼き(季節により別メニューもあり)で、ブロイラーとはまるで違う鶏肉本来の美味しさや珍しい肝を味わうことができる。このほか米や野菜なども地場のものを使用。のどかな囲炉裏端で里山の食を堪能できる。
●1泊2食付8,700円-/南丹市美山町北下牧25/Tel:0771-77-0258
C:伊勢屋
日本の心を和菓子に託す創業180年の老舗
江戸時代から続く小浜の和菓子専門店。イチ押しは貴重な天然の葛を用い、地下30mから店内に湧く名水で作る元祖くずまんじゅう(4月中旬から10月初旬までの限定販売で1個115円)。上品な甘さの餡が葛とともに口の中でとろけてゆき、ついつい「もうひとつ」と注文してしまうことになる。小浜名物・丁稚ようかんなども人気。
●8:00-18:00/水曜定休/小浜市一番町1-6/Tel:0770-52-0766
ご当地情報
D:くつきそば永昌庵
伝統の田舎そばを鯖街道で味わう
鯖街道を行き来する人でにぎわった湖西の朽木村(現・高島町)。手打ちそばの店、永昌庵はかつての宿場町があった中心街から3kmほど南へ下ったところにある。ほんのり甘い太めの麺はしっかりした味のつゆと相性が抜群で、素朴な田舎そばの味わいを堪能することができる。濃厚な鴨肉の風味を楽しめる「かもざる(1350円)」などが人気。
●11:00-17:00(売り切れ次第終了)/水曜&第1第3木曜定休/高島市朽木大野178-5/Tel:0740-38-3233
E:瓜割の滝
水汲みの人で賑わう若狭の名水
山から湧き出す水が滝となって流れ出す瓜割の滝。ご飯やコーヒーが格段においしくなることから、近くの水汲み場はいつも賑わっている。ちなみに『お水取り』で知られる東大寺二月堂の若狭井の源流とされる遠敷川は、この瓜割の滝の流れと合流して若狭湾へと注いでいく。都と若狭国の結びつきを示す伝説のひとつである。
●若狭町天徳寺/Tel:0770-62-0186(若狭うりわり名水公園管理組合)
F:旧逸見勘兵衛家
見事に宿場風景をよみがえらせた熊川宿
江戸時代の宿場風景が色濃く残る福井県若狭町の熊川宿。この旧逸見勘兵衛家は、朽ちかけていた造り酒屋を町が譲り受け、修復・改装を施したもの。喫茶や買い物が楽しめるほか、さまざまな企画展も行なわれる。通りの並びには熊川宿資料館もあり、往時の鯖街道の様子や宿場町復元の過程を分かりやすく展示している。
●入館料100円/10:00-16:00/火-金曜休館(祝日は開館)/若狭町熊川30-3-1 /Tel:0770-62-0800
G:若狭おばま食文化館
多彩で長い歴史をもつ小浜の食文化に触れる
伊勢、志摩、淡路とともに、若狭は古くから朝廷に食料を納める御食国(みけつくに)だった。そんな若狭の中心地、小浜の食文化についてさまざまな角度からアプローチするのが食文化館だ。歴史や・文化を学ぶ展示が豊富で、鯖街道の紹介コーナーも設置。地元の食材を使った料理教室(要予約)なども開催される。
●入館無料/9:00-18:00(冬季は17:00まで)/水曜休館/小浜市川崎3-4/Tel:0770-53-1000
アクセスガイド
国道162号・周山街道をゆくと、京都-小浜間は90kmあまり。交通量も信号も少ないので、のんびりと走り続けることができる。一方、鯖街道の終点、京都河原町から国道367号/303号/27号で北上していくと、若狭湾に面した小浜までは73km。国道367号の区間はかつての街道風景をあちこちに残すのどかな道だが、国道303号/27号はトラックが盛んに行き交う騒々しい道。琵琶湖西岸から花背峠、佐々里峠を越えて「かやぶきの里」へ続く県道38号はかなり険しい山道。距離の割に時間がかかるので要注意。
観光情報
若狭おばま観光案内所 Tel:0770-52-2082
びわ湖高島観光協会 Tel:0740-22-6108
びわ湖大津観光協会 Tel:077-528-2772
南丹市商工観光課 Tel:0771-68-0050
京都市観光協会 Tel:075-752-0227
文:佐々木 節/写真:平島 格