仁田峠循環道路(No.089)
大自然のパワーが目の前にそそり立つワインディング。
仁田峠循環道路は全国でも珍しい一方通行の峠道である。もともとこの道は有料の観光道路だったため、ルート上に民家が一軒もなく、一方通行でも特に不便はなかったのだ。
峠への登り口は雲仙・普賢岳の南麓にあり、道幅が狭く、勾配のきついタイトターンが続く。対向車がないとはいえ、山道に慣れないドライバーはちょっと苦労するかもしれない。
起点から3kmほど走ると、雲仙の南斜面に出て、視界が大きく開ける。右手に見えるのは島原湾で、天気が良ければ対岸の熊本市や阿蘇の山並みが手に取るように見える。そこからさらに1kmほど走ったところが第二展望所。そして、この駐車場の前の左コーナーを抜けると、噴火跡も生々しい巨大な山塊がいきなり姿を現す。
雲仙が活発な火山活動を再開したのは1990年(平成2年)のこと。当初「溶岩ドーム」と呼ばれていた隆起は、多くの被害をもたらしながら主峰・普賢岳を超える高さにまで成長した。標高1483mの平成新山である。
このルートのハイライトは第二展望所から仁田峠までの2km弱。できたてほやほやの火山が迫力たっぷりの姿で目の前にそびえる。そして、峠を過ぎると道は再び谷筋へと下っていき、あっけなく終点となってしまう。
ルートの全長は8.2km。入口と出口は3kmしか離れていないから、つい「もう一周!」したくなる。
◎正式名称/市道仁田峠循環線
◎区間距離/8.2km(県道57号交点-国道389号交点)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/10月下旬
島原まゆやまロード(No.090)
大火砕流の跡を間近に島原の裏山を抜けていく快走路。
仁田峠循環道路とは平成新山を挟んで反対側、雲仙の東麓を抜けていく。一見、平成新山の山裾をゆく気持ちのいい道だが、道路のすぐ脇に続くのは1991年に南島原を襲った大火砕流や土石流の跡。大自然の脅威と美しさが紙一重だということを実感させられる。
道路名の由来になっている眉山は、寛政4年(1792年)の大災害、『島原大変肥後迷惑』で島原城下を埋め尽くす土砂崩れや島原湾の大津波を引き起こした山。これが平成の噴火時には島原の中心街を守る防波堤の役割を果たしたのである。
◎正式名称/県道207号千本木島原港線
◎区間距離/8km(島原市門内町-県道58号交点)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/10月下旬
ご当地情報
A:姫松屋
名物・具雑煮の起源は島原の乱における兵糧食
島原半島で正月や祝い事の席に出される具雑煮は、寛永14年(1637年)の島原の乱における兵糧食が起源とされる。天草四郎を総大将とする反乱軍は、蓄えのあった餅とともに、海や山のさまざまな食材を集めて雑煮を炊き、約3か月もの籠城戦を戦ったという。島原城大手門前の姫松屋では、地元食材を使った現代版・具雑煮が味わえる。
●10:00-20:00 /第2火曜など定休/島原市城内一丁目1208/Tel:0957-63-7272
B:熊本フェリー
島原湾を30分で渡る高速フェリー
島原外港と熊本港の間には高速フェリー“オーシャンアロー”が就航していて、わずか30分で対岸に渡ることができる。ちなみに島原から陸路で熊本に向かうと165km、一般道だと5時間コース。島原-熊本間はオーシャンアローが1日6-7往復しているほか、九商フェリー(所要時間60分)も1日8-10往復の便を運航している。
●3,700円(乗用車4-5m+運転者1名)/Tel:096-311-4100(熊本港)/Tel:0957- 65- 0701(島原港)
ご当地情報
C:富貴屋
雲仙地獄の間近にある湯が自慢の老舗宿
岩間からもうもうと水蒸気を吹き上げる雲仙地獄。その真正面に建つのが創業100年を越える老舗宿・富貴屋だ。地獄の源泉から直接引いてくる温泉は、うっすらと青みを帯びた濁り湯で、もちろん正真正銘の掛け流し。夕食も旬の食材を贅沢に使った会席料理で、極上の一夜をすごすことができる。時間により日帰り入浴も可能。
●1泊2食付10,800円-/日帰り入浴1,000円(11:00-20:00)/雲仙市小浜町雲仙320 /Tel:0957-73-3211
D:雲仙地獄
地獄の正体はマグマ溜りの高温高圧ガス
火山ガスが吹き出す場所を地獄と呼ぶが、雲仙地獄のエネルギー源と考えられているのは海底のマグマ溜り。ここで発生した高温高圧のガスが、岩盤の裂目を通って上昇し、温泉や噴気となって地表に吹き出しているのだ。まさに地球の息吹を感じる場所。ここの熱水はキリシタン拷問にも使われ、それが乱の一因になったとも伝わる。
●雲仙市小浜町雲仙320/Tel:0957-73-3434(雲仙温泉観光協会)
ご当地情報
E:土石流被災家屋保存公園
道の駅に併設される大災害を記憶する公園
道の駅・みずなし本陣ふかえに併設された公園で、普賢岳の噴火によって被害を受けた家屋を保存・展示している。大型テント内に3棟、屋外に8棟ある家屋は、すべて平成4年(1992年)8月に発生した土石流による被害を受けた住居。平均2.8mの土砂で覆い尽くされた無惨な姿に、あらためて自然の猛威を思い知らされる。
●入場無料/9:00-17:00 /無休/南島原市深江町丁6077/Tel:0957-72-7222
F:伊勢屋旅館
眺めのいい露天風呂と海産物料理が自慢
島原半島の西海岸に位置する小浜は、温泉と夕陽のすばらしさで知られる町。この伊勢屋旅館では、その両方を一度に楽しむことができる。展望露天風呂“茂吉の湯”からは橘湾や天草灘が一望。温泉の湯で蒸し上げた特産の雲仙豚、獲れたての伊勢エビやアワビ、サザエの浜焼きなど、地場の海山の幸をたっぷりと使った夕食も魅力。
●1泊2食付10,950円-/日帰り入浴800円(12:30-20:00)/雲仙市小浜町北本町905/Tel:0957-74-2121
G:諫早湾干拓堤防道路
巨大堤防の上に延びるロングストレート
諫早湾の干拓事業にともなって潮受堤防上に建設された広域農道。海の上を雲仙岳に向かって真っ直ぐに伸びる道は実に気持ちいいもので、九州北部から島原半島を目指す時は、諫早市街の混雑をパスするのに便利なショートカット路にもなっている。ただし、堤防の内と外では海の色が違い、内側のヘドロ化した水を見ると気分は複雑に。
●区間距離8.5km(諫早市高来町金崎-雲仙市吾妻町平江名)Tel:0957-27-7045(長崎県諫早湾干拓堤防管理事務所)
アクセスガイド
島原半島に最も近いのは長崎道・諫早ICで、九州道・福岡ICから130km、大分道・大分ICからは230km。諫早を起点にして島原半島の海岸沿いをぐるっと一回りすると約120km、島原市街から仁田峠を抜け小浜温泉まで、島原半島を横断すると43km。熊本方面からはやはりフェリーが便利で、高速船の熊本フェリーは所要時間が短いものの、料金はやや高めの設定だ。
観光情報
しまばら観光おもてなし課 Tel:0957-62-8019
島原温泉観光協会 Tel:0957-62-3986
雲仙温泉観光協会 Tel:0957-73-3434
文:佐々木 節/写真:平島 格