「リトレッドタイヤ(再生タイヤ)」をご存じだろうか? いまや乗用車用タイヤではほとんど見られなくなっているが、トラック業界ではすっかり定着していて、高い実用性と経済性、確かな性能が求められるということで商用車タイヤの世界ではポピュラーなのだ。 7月下旬に日本ミシュランタイヤが国内のリトレッド工場とその工程をメディアに公開したので報告したいが、ここではリトレッド工場の詳細の前に、リトレッドタイヤの対象となるトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「MICHELIN X One」について紹介しよう。 まず、トラックの後輪をシングルタイヤ化する利点について。ミシュランが提案する「MICHELIN X One」最大の特徴は、トラックの後輪に装着されるダブルタイヤをシングルにすることで、1車軸あたり約100kgの軽量化が実現できるところにある。この軽量化によって、「積載量の維持と拡大」「メンテナンス費用の半減」「廃棄タイヤ削減による環境負荷削減」「パンク率低減」「運転操作性の向上」「車両設計の可能性が拡大」といった利点が見出せるのだ。 なお、「MICHELIN X One」の455/55R22.5サイズは、日本のマーケットで最も一般的な大型トラック用ダブルタイヤのサイズ11R22.5と外径がほぼ同じで、日本の法律上最大値とされる車軸あたり10トンの耐荷重能力が確保されているから、前述のように大幅な軽量化と積載可能重量の拡大にもつながる。もちろん、トレーラー用としてだけでなく、強大なトルクのかかる駆動軸用として使われることも前提に設計されているのだ。 現在、「MICHELIN X One」のリトレッドには、「MICHELIN X One XDN 2リトレッド」と、主にトレーラーに向けた「MICHELIN X One MULTI ENERGY T リトレッド」の2モデルで、サイズは455/55R22.5(オープン価格)が用意されている。
3つの「R」でタイヤ経費を節減
軽量化や運転のしやすさ、積載可能重量の拡大など、ユーザーが享受できるメリットをまとめると、日本ミシュランタイヤが掲げる「ミシュラン3R」というコンセプトが分かりやすい。 まず、ミシュランタイヤ独自のロングライフ性能により、摩耗を抑えた「Reduce」、リグルーブ(摩耗したトレッドゴムに溝を刻む)により、タイヤの寿命を最大25%伸ばす「Reuse」、そして、リトレッドによりミシュランケーシングを再利用する「Recycle」を掲げている。 ほかにも、「TPMS(空気圧モニター・システム)」を使ったクラウドサービスも展開し、ミシュランレスキューネットワークと連携することで、万一の際のサポートも行っている。後編では、「MICHELIN X ONE リトレッド」工場での工程を報告しよう。