清水和夫のDST

シビック・タイプR vs VWゴルフGTE、性格が正反対な2台の真っ向勝負!【清水和夫のDST】#68-1

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 68:フォルクスワーゲン・ゴルフGTE vs ホンダ・シビック・タイプR

体躯は似ていても性格は正反対な2台が真っ向勝負!

「ニュルFF最速!」と謳われるシビック・タイプR。FFと4WDの違いは、雪道ならまだしも、サーキットでの速さとなればそれほど影響しないため、多少の違和感はあるものの、古典的な高性能エンジンにより肉食系のクルマ好きに支持されているのは事実。 一方のゴルフGTEは対照的なPHEVで、草食系な走りが魅力のクルマ。今回はこれら対局にある2台のパフォーマンスを比較してみる。

 

 

キャラクターは正反対だが同得点のフシギな2台!

「よく頑張って作りましたね」と褒めたいところだが、実際の乗り味は価格に見合っているとは思えなかったシビック・タイプR。ターボの大トルクを受け止めるには駆動系全体の剛性が足りておらず、40.8kg-mのトルクを扱うにはクラッチ容量も不足している。ベースはフィットなので、リアサスペンションはベーシックなトーションビームだし、ドライビングポジションも高めだ。さらに、先代のシビック・タイプRのエンジンがターボ化されただけで、シャシーやボディが時代の要求に合わせてアップデートされていない。それでも、ニュルで速く走れるのだから、目的は達したのだろう。

そもそも、このクルマが人気なのはホンダが愛されているブランドだから。ダメンズが女性にモテる心理と同じかもしれないが、他のメーカーではやらないようなヤンチャな企画を実行してしまうところに、ホンダの面白さがある。そういう意味では、ここ最近で最もホンダらしいクルマがシビック・タイプRといえるだろう。

また、ホンダは3モーターの9速DCTを持つNSXを2000万円ほどで市販化する予定もある。「思いついたら作っちゃえ」的ないまのホンダは、戦略やマネージメントとは無縁なメーカーとも思えてしまうが、だからこそ愛されるし個性が際立つのかもしれない。

一方で、優等生を絵に描いたようなフォルクスワーゲン(VW)だったが、ディーゼルスキャンダルで化けの皮が剥がされた。ただこれは、VWというよりも、調子に乗りすぎたドイツメーカー全体に神様の怒りが舞い降りてきたのかもしれない。各社がディーゼルでガンガン攻めていた時代も、VWはEVに力を入れていた。だが、ハイブリット化には消極的だった。

今回のスキャンダルで更迭されたウルリッヒ・ハッケンベルグ博士がVWの開発責任者だった当時、ハイブリッド化に消極的な理由を聞いてみたところ、「EVを含めた様々なパワートレインに対応する柔軟なプラットフォームが必要。そのためにMQBを開発した」と語っていた。そのとおりに7代目ゴルフで登場したMQBプラットフォームは、天然ガス、PHEV、ディーゼル、ガソリンと、どんなパワートレインも搭載できる汎用性の高いモジュールを実用化していた。ひとつゴルフに苦言を呈したいのは、ゴルフVIの時代はオルガン式だったアクセルペダルが、MQBを採用したゴルフVIIから吊り下げ式になってしまったことで、これは残念でならない。

ただ今回ゴルフGTEの走りが予想以上に良かったのは、やはりMQBが要因だろう。前後重量配分は最適化されボディ剛性も高い。

どちらを選ぶかでその人の性格が分かって面白い

突然変異か思いつきで生まれた未完成なシビック・タイプRと、頭脳的な戦略で作られた完璧なゴルフGTE。そのキャラクターは 前者が古典的な肉食系で、後者が前衛的な草食系。価格は近いが、あまりにもキャラクターがかけ離れている。シビック・タイプRは今回だけで終わってしまうのか、第2章があるのかが気になるところだが、6速MTをDCTにしたり、FFを4WDにしたりと発展の余地はまだまだある。

総合的な点数は引き分けとなったが、シビック・タイプRとゴルフGTE、どちらを選ぶかでその人の性格が分かって面白いかもし れない。私なら? 迷わずダメンズの前者を選ぶだろう。

RESULT

個性は違うが同評価。選択はユーザー次第だ
●フォルクスワーゲン ゴルフGTE:16.0/20点
●ホンダ シビック・タイプR:16.0/20点

ル・ボラン 2016年4月号より転載
LE VOLANT web編集部

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