期せずして到来した、高級サルーンの当たり年
マセラティの個性はとても分かりやすい。ギラギラするエンジンは官能的で、その存在感は地中海に光り輝く太陽と同じだ。ハンドリングもスポーツカーと間違えてしまうほどレーシーで個性的。一度味わってしまうと、その味が忘れられない。走り好きならメルセデスAMGよりもクアトロポルテの方が楽しめるかもしれない。
キャデラックCT6はどうか。同ブランドのフラッグシップとはいえ、自然吸気のV6エンジンとFRベースのAWDだけでは華がない。ダイナミクステスト主体のDSTでは、CT6は大敗するかもしれないと思っていたが、予想は外れた。スペックの背後に潜む、ドライバーに寄り添ってくれるオーガニックな性能が存在していた。機械と人間が、ここまで仲良くなれるという良い例だろう。
テストを終えて思ったことは、CT6はやはり名実ともにキャデラックのフラッグシップであり、トランプ大統領にもステアリングを握って欲しい、伝統的な高級サルーンだということであった。
期せずして2017年は高級サルーンブームに沸いている。アウディA8やレクサスLSがフルモデルチェンジを果たし、Sクラスもフェイスリフト、BMW7シリーズベースで開発されたロールス・ロイスも世を賑わせている。世界の5m級フルサイズサルーンの競争が激化し、ブランドのプライドや個性が競合する縮図となり、日独英米伊の高級車バトルが面白い展開になってきた。この先は自動運転のレベル3やプラグインハイブリッドの戦いにも注目だ。だが、私はあえてこのキャデラックCT6の存在が孤高すぎて眩しく思う。