メルセデス・ベンツ特集 2019

【比較試乗】 「メルセデス・ベンツ Cクラス」「BMW3シリーズ」ライバルを超えた絶妙な距離感

スポーツ性を維持しながら快適性も磨いた3シリーズ

一方の3シリーズは、単に楽しい走りを提供するだけでなく、実用的なスポーツセダンとして開発された。エクステリアは、精悍さが増した立体的なキドニーグリルとLEDヘッドランプが特徴的だ。先代と比べると、そのスケールは現行の5シリーズに近づき、スーパー3シリーズともいえるボディサイズを有する。
全長で+76mm、全幅で+16mm、ホイールベースで+41mmも拡大され、後席の居住性は3シリーズがCクラスを圧倒している。走りに影響を及ぼす前後トレッドは43mm/21mmもワイド化、重心点も10mm低く設定。クルマを正面から見て、左右輪と重心点を結んでつくる三角形は、底辺が長い平べったい形となり、ロール剛性がより高まっている。つまりバネやスタビライザーを強化せずとも、同じロール安定性が得られる。この基本シャシーの諸元性能こそ、3シリーズの真なる魅力なのである。

重量に関しては、プラットフォームが最大で55kgも軽量化されている。低重心化の理由は軽量素材の配置転換によるものであり、車体のねじり剛性は50%も向上しているという。とくに効果的だったのは、タイヤからの力を受けるサブフレームとボディの結合部分と、ストラットのトップとボディの結合部分の剛性を徹底的に高めたこと。その結果、新型3シリーズは驚くほど静粛性が高い。開発エンジニアも音と振動にはこだわり抜いたようで、走行音をキャビンに侵入させないために、フロントウインドーにはアコースティック・ガラスを標準採用する。
取材車両の330iは258㎰を絞り出す2L直4ターボを搭載しており、静かでスムーズな上級グレードのクルマに乗っているような上質感。乗り心地はサスの伸び側を規制する新開発のダンパーにより、ボディの上下動が減少し、荒れた路面でも快適性を損なうことがない。

02.BMW 330i M SPORT

3シリーズはオールデジタルメーターパネルを採用。視認性が高いのが特徴だ。AI音声会話システムのインテリジェント・パーソナル・アシスタントを搭載し、ドライビングだけでなく、ライフスタイルのサポートもしてくれる。2L 直4ターボのパワーは、想像以上に強烈でスポーツ性が際立つ。取材車がスポーツサスを装備するMスポーツ仕様であったことに加え、ランフラットタイヤのため、ややライドフィールは硬い印象だった。前席ではあまり感じないが、後席は3シリーズの方が、空間的に余裕(特にヘッドクリアランス)があり、居住性は高い。1300km走行での平均燃費は12.3km/L。

ADASについては、レーダークルーズのACCと車線維持LKASが使いやすい。さらに歩行者と自転車を検知する自動ブレーキなども標準装備する。高速道路でLKASを試したが、車線から逸脱しそうになると、ステアリングの反力がズッシリと重くなり、車線の中に大きなワダチがあるような感覚だ。メルセデスはステアリングの反力は極力弱められた、真逆の思想となる。自動化技術ではメルセデスとの協業が進むなかで、ブランドの掟を守りながらどんな支援(あるいは自動化)が望ましいのか。BMWは今後も独自の答えを導き出していくのだろう。

リポート:清水和夫/K.Shimizu フォト:篠原晃一/K.Shinohara ル・ボラン6月号より転載

注目の記事
注目の記事

RANKING