海外試乗

【海外試乗】「NISSAN GT-R NISMO」確実に走りの進化を遂げたハイパフォーマー!

最先端のレーステクノロジーを投入

「GT-R」シリーズの頂点に位置するハイパフォーマンスモデルが「GT-Rニスモ」だ。2020年モデルでは、モータースポーツから得られた最新ノウハウを導入し、さらなる性能アップを目指している。ドイツのベルリンで海外試乗会が開催されたので、その鮮烈なパフォーマンスのすべてをお伝えしよう。

2020年型で驚くのは乗り心地のよさ

間もなく登場から12年の時が経つR35GT-R。同時に今年は初代スカイラインGT-R登場から数えて50周年ということもあり、アニバーサリーモデルの登場と併せて、標準車そしてニスモの双方にマイナーチェンジが施された。
2020年型と称されるその詳細は、標準車側がタービンの吸気側にあプレーダブルシール加工を施し充填効率を向上、エンジン及びミッション制御の見直しによるレスポンスアップを果たしている。また、ダンパーやブレーキブースターのチューニングも改められ、常速域での扱いやすさが向上しているという。日本での公道試乗ではその控えめな口上よりもずっと乗り心地面での洗練が果たされており、ちょっと驚かされた。

2020年型はGT-RのGT3レースカーに使用されている新しいターボを、匠の手によって高精度に手組みされるVR38DETTエンジンに搭載。トランスミッションは6速DCTを組み合わせる。

が、実はその標準車と同等といっても過言ではないほどの乗り心地をみせてくれたのが2020年型のニスモだ。にわかに信じがたいその詳細をみてみると、あらゆる面で最も大きな影響を及ぼしていそうなのが410/390mm径のブレンボ製カーボンセラミックブレーキシステムの採用で、これによりバネ下の重量は従来比で16.3kgの大幅な軽量化を果たしている。このブレーキはパッドの摩材にメタル成分を多く含むものを採り入れ、冷間時や低速時のコントロール性や制動力を高めているのが特徴となる。

ボディ色は、バイブラントレッド、メテオフレークブラックパールなど全4色で、他のGT-Rモデルとは一線を画している。

2020年型GT-Rは求める価値のある1台だ

軽量化はバネ下のみならず上屋の側も顕著だ。ボンネットやトランクリッドに加えてルーフパネルやフロントフェンダーもカーボン材を使用、新骨格を使用したレカロ製シートなども加わり、13kg以上の減量を達成。前述のバネ下と合わせると前型=2017年型ニスモ比で30kg車重が軽くなったかたちだ。これに合わせてサスセットは大きく変更され、ダンパーレートを柔らかくしながらリアスプリングレートを固めるなど、車体前後の減衰特性を同調させながらクルマの動きをよりリニアなものとしたという。

ビルシュタイン製のダンパーは、車体が30kg軽量化されたことを受け、伸び側を20%、縮み側を5%それぞれソフトにチューニング。

他にもタービンブレードを最新解析により形状を高効率化して慣性質量を14.5%低減、タイヤのコンパウンドや設置面形状やパターンにも細かく手を加えコーナリングフォースを5%高めるなど、小変更は車体の隅々に及んでいる。ちなみに出力関係のスペックは標準車、ニスモ共に変わらない。
ニスモには、そのルックスから身構えるような手強さは一切ない。地上高関係に少しだけ注意していれば後は標準車同様に扱える。タービンイナーシャの改善もあってかトルクのピックアップは2017年型ニスモよりも若干向上しており、低回転域のフレキシビリティさえ標準車にほど近い印象だ。

新開発のレカロシートは、ホールド性が高められ、クルマとドライバーの一体感が増している。また、シートバック全体のねじれ剛性は20%向上し、左右計約2.8kgの軽量化も実現。

そして驚くのが乗り心地だ。鋭利な凹凸に出くわさない限り、連続的なギャップ由来のピッチングや轍絡みのワンダリングなど、従来のGT-Rが苦手としていた場面でも見事に滑らかなライド感を示してくれる。もちろんバネ下の軽量化効果は劇的だが、軸ものの精度が高まったかのような印象は標準車でも感じていたことだ。

フロントフェンダー(-4.5kg)、エンジンフード(-2kg)、ルーフ(-4kg)を新たにカーボン製とし、さらに各コンポーネントを軽量化することで計約30kgの軽量化を実現。

クローズドコースでの振る舞いでもやはり感じられるのは操作に対する応答精度が確実に向上したこと、加えてノーズの入りの軽さやブレーキのタッチや制動力の安定化も目に見える進化点として挙げられるだろう。パワーを確実に推進力に変えるトラクション能力や、スロットルコントロールと完全にシンクロしたパワーオーバーステアなど、GT-Rの美点はさらに磨きがかかり、もはや進化は頂点という納得感さえを抱いてしまうほどだ。12年に渡り一線級でい続けたこのアーキテクチャーの集大成として、2020年型GT-Rは求める価値のある1台だと思う。

【SPECIFICATIONS】ニッサンGT-Rニスモ
■全長/全幅/全高=4690/1895/1370mm
■ホイールベース=2780mm
■トレッド=前1600/後1600
■車両重量=1703kg
■エンジン型式/種類=VR38DETT/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=95.5×88.4mm
■総排気量=3799cc
■圧縮比=9.0:1
■最高出力=600ps(441kw)/6800rpm
■最大トルク=652Nm(66.5kg-m)/3600-5600rpm
■燃料タンク容量=74L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=6速DCT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/40ZR20(10.0J)、後285/35ZR20(10.5J)

■車両本体価格=24,200,000円(消費税10%込み)

(※スペックは欧州参考値)

ニッサンGT-Rニスモ専用のレイズ製20インチ鍛造アルミホイールを装備。

問い合わせ先=日産自動車 0120-315-232

リポート=渡辺敏史/T.Watanabe フォト=日産自動車/NISSAN ル・ボラン2019年9月号より転載
LE VOLANT web編集部

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