清水和夫のDST

アウディA7スポーツバック 1stエディション vs メルセデス・ベンツCLS450 4マチック・スポーツ、4ドアクーペの世界を切り拓いたCLSと追随する強力なライバル、A7が対決!!【清水和夫のDST】#99-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)

Number 99(SEASON.11):4ドアクーペの世界を切り拓いたCLSと追随する強力なライバル、A7が対決!!

アウディA7スポーツバック 1stエディション vs メルセデス・ベンツCLS450 4マチック・スポーツ

2005年に4ドアクーペとして登場したメルセデス・ベンツCLSは、スポーティとラグジャリーを見事に調和したジャガーXJをベンチマークとして開発された。CLSは信頼性を武器にクオリティが最大のネックだったXJを猛追し、一大ブームを巻き起こした。そして、CLSに食らいつこうとするのがアウディA7。セダン冬の時代に奮闘するこの2台をコースに連れ出しテストした。

電子デバイスの熟成はハードウェアの進化が必至

世界一安全な乗り物と言われる飛行機だが、2機のボーイング737-MAX8が立て続けに墜落した。すでに同型機は飛行禁止となったが、ハードウェアの性能不足をソフトウェアで補おうと、付け焼き刃的な対策が原因だったと言われている。
同じような事例が自動運転車で起きないとも限らない。ハイテクに対するソフトウェアとハードウェアの関係をしっかりと見直す必要があると、あらためて考えさせられた。

今回はそんな目線込みで2台を分析してみたいと思うが、まずアウディA7で気になったのは、パワートレインと車体を繋ぐマウント系の剛性が不足しているのではないかと点だ。というのは急ブレーキを踏むと、エンジンとギアボックスが振動。ジャダーが発生した。さらに270kPaという高い空気圧も影響してか、荒れた路面の乗り心地は改善の余地あり、である。しかし、フラットな路面では安定性が高く、良好なハンドリングを示した。

アウディのパワートレイン戦略の特徴は、デュアルクラッチ(DCT)を積極的に採用することだ。ライバルのメルセデスやBMWはほとんどがトルコンATである。DCTはポルシェを含めたフォルクスワーゲン・グループの基本戦略だが、A7では発進時に一瞬だが、ギクシャク感が出る。同じようなトルクを発生するポルシェのPDKは完成度が高く、それはソフトウェアの問題かもしれない。もっと走り込んでリファインして欲しいところだ。その反面、ウェットの旋回ブレーキは見事だった。低μ路で安心できるタイヤと洗練されたABSの制御が功を奏している。このテストではハードウェアとソフトウェアの両方が良い仕事をし、優れた結果をもたらした。

電子制御に関してはCLSは違和感ある挙動は一切なし

メルセデスはどうか。クルマのハードウェアは完璧に近いが、唯一タイヤのウェット性能が不足していた。ウェットの制動距離がA7と比べて大きく差がついてしまった。CLS450は硬めの乗り心地ではあるが、ダンピングが良いので、高速周回路での乗り心地は引き締まっており、スポーツセダンに似合っている。

電子制御に関しては、メルセデスは入念にテストされているのだろう。違和感がある挙動は一切なかった。今回テスト車両、CLS450にはISGというモーターが9速トルコンATに内蔵され、スターター&モーターアシスト、発電機、回生ブレーキの三役をこなす。これらソフトウェアがクルマと調和していないと、ユーザーは乗りやすいとは感じないはずだが、ソフトウェアの方は課題を見い出すことができなかった。一方でドアミラーまわりの風切り音が少し気になった。
これからのクルマには、半自動運転システムが搭載されるので、ハードウェアとソフトウェアの調和はますます大切になってくるだろう。DSTでは、その視点を忘れずに評価していきたい。

電子デバイスの制御向上と基本性能の見直しがカギ

セダン冬の時代を生き抜くには、スタイリッシュなデザイン、スポーティなハンドリングに加え、高度な電子制御デバイスをいかにスムーズに制御させるか、それが重要になってくる。A7は48Vのサブ電源という新しいパワートレインに挑戦し、シャシー面では4WDと4WSを装備している。ソフトウェアが配する新デバイスは、反面で膨大な数の実車テストが必要となってくるはずだが、それをクリアし、熟成に期待したい。
いっぽうでメルセデスのように、タイヤという基本性能も忘れてはいけない。ハイテクばかりに目を向けがちだが、あらためて基本性能の向上に立ち返るべきだと思う。

RESULT

パイオニアであるCLSに迫ったA7の飛躍に期待!!

●メルセデス・ベンツCLS450 4マティック・スポーツ:17/20点

●アウディA7スポーツバック 1stエディション:16/20点

※通信簿は絶対評価なので比較した点数ではない

 

 

リポート:清水和夫/K.Shimizu フォト:篠原晃一/K.Shinohara ル・ボラン 2019年5月号より転載
LE VOLANT web編集部

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