輸入車の販売台数は年々伸び続けているが、中でも元気なのがコンパクトクラス。さらに新型Aクラスと1シリーズが投入されたことにより、ドイツプレミアム御三家のコンパクト市場はさらに活気づきそうな気配である。ここでは3台のキャラクターを明らかにしつつ、ベストな1台を探ってみよう。
“非”Mスポーツは絶妙によかった
ひと昔ほど前のお話。メルセデス、BMW、アウディのドイツ御三家が作るこのクラスのクルマに乗ると、それぞれ“確かにいいクルマだなぁ……”と感じながら、同時に“でもなぁ……”という手放しになれない何かを覚えたことが多かった。ちっともダメなわけじゃない。ただ何となくどことなく“らしさ”不足であるように思えたのだ。どこがどうとはっきり指摘できるものでもなかったのだが、全体的に姉達と較べるとそのブランド特有のテイストが軽口というか薄味。立ち位置も目指してるところも微妙に違うことを承知でいうなら、優れたクルマを作っているのにいつまで御三家と同じに扱ってもらえないフォルクスワーゲンのゴルフに乗ったときの方が、明らかにブランド独自のテイストの濃さ、“らしさ”を感じられたものだ。気にならない人には何それ? な話だし、エンブレムに大金を注ぎ込むタイプにとってはどうでもいいところだろうが、性根の座ったクルマ好きにはどうにも見過ごせないところだと思う。
時が流れて今。自動車の世界は日進月歩だから、このクラスのクルマ達もあらゆる部分が進化を遂げている。けれど、いつしか最も進化していたのは、そこなんじゃないか? と感じたりしている。
最初に気づかせてくれたのは、BMWの1シリーズだった。新しい1シリーズは貴重だったFRをやめてFFに転身。2シリーズのツアラー系でそれなりの“駆けぬける歓び”を見せてくれたが、ドライビングエンターテインメントともいうべき持ち味よりも実用性と快適性を重んじたのだな、と思っていた。おまけにメイン機種の118iは1.5Lの3気筒ターボ、試乗車は“非”Mスポーツの標準シャシー。期待感は薄かった。が、何と愚かな先入観。118i“非”Mスポ、絶妙によかったのだ。街中ではしなやかさを感じられる穏やかな乗り心地。ところが、峠道に入ったら気持ちよく曲がる曲がる。動きに鈍さや重さはなく、鼻先は気持ちよくインを向き、姿勢の変化は解りやすく、思ったラインの上に容易く載ってくれる。FFのネガティブはほぼ感じられず、意地悪く突いてきたスポーツカーのドライバーに軽く恥をかいてもらえたぐらいコーナリングスピードも速かった。ぶっちゃけ、走らせることがかなり楽しかったのだ。これぞ紛うかたなきBMW、じゃないか。